《・・・・まぁ、そうでしたの? ・・・確かに・・・私達の陣営には不必要な方ですわね。
アスランは彼女と出会う以前からキラのみを愛しておりますわ?
それなのに・・・・
一時期アスランが彼女を優しくしただけで己を愛していると勘違いをするなどと・・・・
身の程知らずみたいですわね》




あのお2人の幸せを壊そうとなされる方は、どなたであろうと容赦はいたしませんわ。
お2人は、2年前の大戦時に一番深い傷を負われましたもの・・・。

運命だったとはいえ、想いの人を自らの手で討たねばならないという脅迫にもにた考えによって、一度は引き離されてしまいましたわ。
ですが、そんな悲しい運命も乗り越えて、漸く幸せになれると思った矢先にあのようなこと・・・。


一度は許しましたが、二度も許すほど私の心は寛大ではありませんわ。








制  裁
    ― 騎士の集合 ―











2年前からAAとエターナルでは彼らが付き合っていたということは公認であった。
そのため、彼らが一緒にいる時は何が何でも離してはならないと暗黙の了解となっていたのだ。
コレはもちろんクサナギでも同じことであったが、
カガリはそのことに対して不満に思い、ことあるごとにアスランをクサナギに呼びつけていた。
最初はしぶしぶ行っていたアスランだったが、
頻繁になってキラが不安に思うことにアスランが心を痛め、
彼らが所属している艦の艦長を勤めているラクスに頼み込み、
アスランがクサナギに行かなくてすむようにした。
このことにエターナルとAAのクルー達も総出で支援した。
クサナギにあるMSのOS改良はなにもアスランが行く必要はないのだ。
彼と同じ隊に所属していたディアッカもクサナギで手伝っていたため、彼でもよかったのだ。
だが、それでもアスランが行かなければならなかった理由はカガリにあった。
彼女はアスランとキラを引き離すためにわざとクサナギに呼び出していたのだ。



「では、今からアスラン君達に艦内放送で格納庫へ行ってもらいます。 
・・・そうねぇ、2時間後にはそちらへついているはずだから。
・・・・彼、2年前よりもひどい状態よ? まぁ、原因ははっきりしているのだけど・・・」



《分かりました。 では、またのちほど》




マリューはラクスとの通信を切るとチャンドラに艦内放送をかけるように頼んだ。




『アスラン=ザラ、キラ=ヤマトの両名は至急、格納庫へ。 もう一度繰り返す。
アスラン=ザラ、キラ=ヤマトの両名は至急、格納庫へ』



「・・・・ようやく、移動か。 キラ、心配は要らないよ?俺達が本来いる艦へ移動するだけだからね?
・・・それに、俺も一緒だからキラは何も心配することはないから・・・・・」



この放送を聞いていたアスランはキラを優しくお姫様抱っこしながら格納庫へと向かった。
彼にはこの呼び出しがエターナルへの移動だということがわかっていたため、慌てずに済んだのである。
しかし、この放送を聞いていたのは彼だけではない。
ミリアリアに行く手を阻まれたカガリも聞いていたのである。



「なぜ、アスランとキラが格納庫へ呼び出されるんだ? ミリアリア、そこをどけ! 私も行く!!」


「・・・・ソレはできないわ? 艦長にも頼まれたことだし。
・・・・まったく、あなたはここで大人しくしていたらいいのよ」



カガリが半分本気で物に当たったりしていたがミリアリアには効かないらしく、
彼女の後ろにある扉はカガリに対しての放送が流れるまで開くことがなかった。





アスラン達が格納庫へ着いた頃、そこでは彼らをエターナルに届けるためのシャトルを準備していた。


「お嬢ちゃんの様子はどうなんだい?」


「マードックさん。 ・・・海底にいた頃よりはだいぶよくなりましたよ。
・・・一応、医学のライセンスは取得しておきましたので俺が見れたんですが・・・・
あの頃の俺でしたら少しやばかったですね・・・・」



格納庫には2年前にキラたちパイロットが一番世話になったマードックが
シャトルの最終チェックを行っていた。
彼は精神的に危なかったキラを影ながら支えてきた一人でもあり、
キラを自身として『コーディネーター』と括らなかった人物でもある。



「そうかい。 ・・・ほら、コレで大丈夫だ。
・・・・坊主、あんまり無茶するなよ? お嬢ちゃんが心配するからな?」


「・・・・はい。 俺も、キラを心配させるのは本望ではないですからね」



アスランはマードックの指摘に苦笑いを浮かべながらシャトルへ乗り込んだ。
暫く経つとAAのハッチが開き、シャトルがエターナルに向かって発射された。





AAでアスラン達がエターナルに向かってシャトルに乗り込んでいる頃、
エターナルには
2人のザフトの軍服を身に纏った者達が格納庫へ降り立った。



「・・・ジュール隊隊長、イザーク=ジュールだ。
こっちは俺の副官であるディアッカ=エルスマン。 ・・・ラクス嬢に呼ばれてこちらへ来た」


「ラクス様から聞いております。 ラクス様方はブリッジにおられますよ」


「そうか」



イザークは整備士に聞くなり自分の乗ってきた機体を適当な場所へ降ろして頑丈にロックをかけると
慣れた様子でブリッジへとうまく慣性を利用して進んでいった。
その後を追うように緑の軍服を着た人物がイザークの後についた。



「・・・これって、2年前にジュール隊長が乗っていた機体だよな?
確か、あの大戦時に破壊されたはずなんだが・・・。 修復されたのか?」


「こっちはディアッカさんの機体だ。 これも破壊されたって聞いたぞ?」



 整備士達の疑問をよそに、イザーク達は目的地であるプリッジに着き、
目的の人物に一直線で向かった。





イザークら2人がラクスのいるブリッジへ向かっている頃、
AAからシャトルを使って移動をしてきたアスランとアスランに大切そうに抱かれているキラが到着した。
ラクスから連絡を受けていたエターナルの整備士たちは2年ぶりの再会に喜びの表情を隠しきれないまま、
2人の登場を今か今かとまった。



「・・・シャトルの片付け、頼む。 ・・・この機体・・・、イザークたちは既に来ているのか」


「はっ!先ほど、ラクス様がおられますブリッジへと向かわれました。
・・・片付けの方は我々にお任せください。 ・・・ラクス様より伝言です。
『お2人のお部屋は2年前と同じところですわ』とのことです。
後ほど、AAより送られます荷物等は我々がお持ちいたしますから」



アスランが意識のないキラを抱えてくるということは既に知っていたため、
取り乱すことのなくラクスの伝言をアスランに伝えた。
その間、アスランから発せられる暗黒ともいえるくらい黒いオーラに飲まれそうになるが、
どうにか立つことに成功した。



「・・・そうか。 ありがとう」



アスランは小さくだが知らせた整備士に礼を言うと何事もなかったかのように格納庫を後にした。
アスランが自ら礼を言うことは少ない。
それを言うようになったのは2年前にキラたち・・・第3勢力についてからである。
第3勢力について以来、アスランは常にキラの傍にいた。
そのため、整備士たちに礼を言わないアスランにキラは少々不機嫌になってしまい、
AAとエターナルに所属する整備士たちには礼を言うようになった。





アスランがキラを抱きかかえてブリッジへ飛んでいった頃、
AAではちょっとした騒動が起こっていた。
ミリアリアに部屋で閉じ込められていたカガリが実力行使に出てきたのである。



「私もエターナルに移る! そこをどけ!! ・・・私は、アスランの彼女なんだぞ!?
なぜ、その私がキラなんかのせいでこのような扱いを受けなければならない!!」


「・・・・あなたも仕方のない人ねぇ。 あなたをエターナルへ移させるわけにはいかないわ?
・・あなたは何かを勘違いをしているみたいだし。 この艦の最高責任者は艦長である私です。
・・いくら、元オーブ連合首長国の代表(・・・・・・・・・・・・)といえどここではそれは通用しないわ。
大体、アスラン君はあなたの恋人ではないでしょう? ・・・何を勘違いしているの?
・・・彼らは2年前よりも以前から付き合っていたそうよ・・・。
・・私たちが一時期、離してしまったけど・・・」



マリューは一瞬の間だけつらそうな表情を見せたが、その顔もすぐに元に戻り、
2年前に一時期の間だが同盟を結んでいたかつての戦友に視線を向けた。



「!! ・・だが、アスランはあの時、私を守ると言った! 私がアスランの彼女だ!!」



カガリはそう叫び、整備士を押しのけようとした。



「・・・ですって。 アスラン君、その真実はどうなの?」



 マリューはため息をつきながら普段ブリッジに繋げる時に使っているモニター付の通信機に声をかけた。




「!!?」



 カガリはそのマリューの様子を見て驚いたが、
モニターに出た人物に再び驚きを隠しきれない様子を見せた。




《・・・・何を勘違いしてる? この艦にお前などが来ることを俺は・・いや、
この艦に所属している者たちは望んではいない。 かえって迷惑だ》




モニターに移ったのはエターナルに移ったアスランであった。
アスランとキラがブリッジに着いた頃、
ラクスとマリューの考えでAAの格納庫とAAのブリッジ経由での
エターナルのブリッジにあるメイン画面へ通信回線を開いていた。
つまり、今までの会話は筒抜けであったのだ。
当然、先にエターナルについていたイザークたちもブリッジにいた。
AAのブリッジクルーはもちろん、エターナルのブリッジクルー、
カガリとはあまり面識のないイザークでさえ、カガリの言い分に顔をしかめていた。



「・・・ディアッカ、あの女か?」


「あ? あぁ。 そうだ。 姫の姉だと公言しているくせに肝心なところではいつも姫に守られていて、
自ら行動しようとしない。
オーブの情勢だってそうさ。
本来、姫たちと一緒にマルキオ導師の元で姫の傍にいようとしたアスランを
やつは勝手に自分のSPにしちまった。
・・・姫、悲しんでいたぜ? あの頃、情緒不安定だったからな」



イザークが必死に拳を握り締めて怒りを我慢しているのを隣で苦笑いを浮かべながらも
いつものように宥めていたディアッカは先の大戦直後のことを思い出した。
キラとラクスがマリューたちと一緒にオーブ近海へ移るまでの間、
ディアッカはアスランたちのすぐ傍にいた。
そのため、彼らの事情をよく知る人物でもあった。




《!!・・だが、あの時、『お前を守る』と言っただろう!? あの時の約束は!?》




 カガリはディアッカたちの会話が聞こえていたらしく、
悔しそうに顔をしかめたが、すぐ視線をモニターの中心にいるアスランに移した。






―――――――ディアッカたちは故意的に、小声で話していなかったのだが、そのことにカガリは気付かない―――――――






「? あぁ・・・あのことか? 俺は、その約束を守っただろう?」



《!?》




 アスランは驚いて自分を見るカガリを哀れむようにモニター越しに見た。



「あの大戦で、お前は無傷だっただろう? むしろ、傷ついたのはキラだ。
嫌だったが、優しくもしてやったさ。 そのことで、自分が俺の彼女と勘違いをしてもらっては困る。
俺が、愛するのは今までも・・この先もずっと、キラだけだ。
お前は、ただ俺のキラと似た遺伝子を持っているとしか認識をしたことはない。
・・・今では、キラを害する‘敵’と認識しているが・・・。
次、同じようなことをしてみろ? 今度こそ、容赦はしない。
お前のSPをしたのだって、キラが頼んできたからに過ぎない。
・・・キラは優しいからな。 しかし、俺はもう限界を超えている。
お前に好意を寄せられてもそれはただの迷惑に過ぎない」



アスランは、容赦のない言葉をカガリにぶつけた。
キラを傷つけている事実に既に怒りはたまっていたが、
先ほどのカガリの言葉に今までたまっていたものが一気に爆発したようだった。



「・・・そのような顔をなさっても、自業自得ですものね。
・・・マリューさん予定では少し早まりましたけど・・この際、仕方ありませんもの。
今から、オーブへ強制送還をなされては?
このまま、AAにいらしてもこのような騒動を起こしてしまわれるだけですもの。
・・私たちには一刻の時間も惜しいと考えておりますし・・・・」



口では困ったように話すラクスだが、本人の表情も声も固いものであった。
彼女と密に婚約をしているイザークは、彼女の怖さを十分熟知しており、
政略で婚約をさせられていたアスランも気付いていた。
・・・それ以外にはこのようなことに敏感に察知できるマリューとディアッカも気付いていたが・・・・・・・。


ラクスは十分、怒っていた。
今までキラにしてきた行為に対して。
・・本来、AAはカガリの結婚を邪魔する必要はなかったのだ。
キラ自身、姉(カガリが勝手に公言しているため)を助けたいとは思っていたが、
回りが反対していたためこのまま情勢を見守る形をとっていた・・・。
しかし、
カガリは自分を助けさせるためにわざとアスランから送られたと言い張る指輪をキラに届けさせた。
それを見たキラは自分を助けに来ると分かっていたためであった。
助け出されてからは、常に指輪を左薬指にはめ、キラに見せつけていた。
・・そのことはラクスたちも見ており、静かに怒りを溜めていた。
そのため、カガリを自分達の陣営・・つまり
2年前と同じ仲間と認めなかったのである。








2005/11/26

加筆・修正
2005/11/30



















4話目更新です。
本来、5話目も入れて4話の予定でしたが、・・・枚数が多くて断念しました;
【制裁】でのメインは『ミネルバ』クルー+αですので、某姫の扱いはそれほど酷くはないかと・・・。
(管理人自身、一番酷いのは【INVKE】だと認識・・;)
ここで捕捉ですが、アスランは本来キラ・ラクスと一緒にマルキオ導師の元で暮らすことを望んでいました。
しかし、某姫の妨害により、某姫のSPをせざる終えない状態に・・・・。