《あぁ。 俺も今回ばかりは後悔しているからな。 今度からキラも一緒に行こう。
今から出てくるから・・・・ちょっとの間待っていてくれ》




本当に、後悔した。
彼女を守りたい一心で、彼女の傍を離れたのに。
そのことで、彼女を不安にさせて・・・そればかりではなく、彼女の身に危険が迫っていたのに。
俺はもう、見失なわない。
何を守りたいのかを。
何を、望んでいるのかを・・・・。





月の姫をその胸に抱き締め、自身が何を望むのかをはっきりとさせた月の騎士。
月の姫を守るべく、漆黒の闇をその身に纏った。
イブの娘は、月の騎士の中に眠る獅子を呼び起こした。
その獅子を止める者は、誰もいない・・・・・・。









Reason
    ― 反撃の狼煙 ―









『ミネルバ』のクルーたちが一丸となってアスランによって書き換えられたプログラムの復旧作業に追われている頃、
ザクを連れてAAに帰還したキラはコックピットから高さがあるにも拘らず、
飛び降りると隣に固定されたザクに向かって走った。



「アスラン!!」

「・・キィ〜ラ? あんな高いところから飛び降りて・・・危ないだろう?
君の運動神経がいいのは分かっているけど・・・・もっと注意しようね?」

「・・・ごめんなさい。 でも、一刻も早くアスランに生身で会いたかったの」

「それは、俺もだよ。 ・・・でもねキラ、俺は君が怪我するのはいやだからね?」

「うん」



キラは自分の頭を撫でるアスランに甘えるようにアスランの胸に擦り寄ると小さく「ごめんなさい」と呟いた。



安心するように抱きついているキラに、『ミネルバ』では決して見せることのなかった微笑をキラに見せると自らも最近不安定だった精神を宥めるため、キラをさらに抱き締めた。





その様子を遠巻きで見ていたマードックを始めとする整備士たちは、
目の前で繰り広げられているラブラブオーラに微笑ましそうに見守っていた。



「アスランッ!! やっと、私をこんな場所から連れ出してくれるために迎えに来てくれたんだな!!」



微笑ましかったアスランとキラを取り巻く空気を見事に破壊したのは、
ミリィから受けていた拘束を逃れてきたカガリであった。
カガリの言葉にキラにはきづかれない程度に機嫌を降下させ、カガリを視界に入れることはなかった。




そんなアスランに気付くことなくどこまでも我が道を行く自己中心的考えの持ち主であるカガリは、
自分のモノだと思い込んでいるアスランに抱きついているキラに対し、
憎悪の視線を向けると力の限り突き飛ばした。





――――― キラが抱きついているのではなく、アスランが抱き締めているのだが・・・・・・。







「キラッ!!」

「弟の分際で、よくも私のアスランに手を出せるな? アスランは私のだ。
お前のじゃないんだ。 軽々しく、私のアスランに触れるな。
私に近づいてくること自体、本来ならばできないことなんだからな」



咄嗟のことに対処しきれなかったキラは見事に工具道具のある場所に飛ばされ、
頭を強く打ち付けるとそのまま意識を失った。
そんなキラを嘲笑うと目の前にいるアスランに抱きつこうとした。








――― バシッ!!!








あたり一面に叩きつけるような音が響いた。



「汚らわしい手で俺に触れるな。 俺に触れていいのは、キラだけだ。
・・・・キラを傷つけた罪、後でゆっくりと償ってもらおう。 ・・・その代価、大きいからな?」



キラが気を失ったことによってそれまで保っていた感情が一気に表に出ると、
押さえ込まれていた冷気を全身に纏い、感情の篭っていない冷たい視線をカガリに向け、
すぐさまキラに視線を戻すとそれ以降カガリに意識を向けることはなかった。
気を失っているキラを大切に抱き起こすと、お姫様抱っこをしたまま医務室に向かった・・・・・。






医務室に連れて行ったアスランはそのまま医務室に留まることなく、キラの使用している部屋へ向かった。



彼もまた、2年前にエターナルに移るまでの間AAを所属艦としていたためかキラの部屋の場所を覚えており、
誰かに聞くこともなくそのまま部屋に向かった。
部屋はロックされていたがパスワードが2年前と変わっていないため、
アスランはすんなり入ることができ、空いているベッドにキラを寝かせた。



「・・・・ストレスによる睡眠不足と食欲低下・・・・。 原因は分かりきっているが・・・・な。
・・・キラの場合、ストレスが溜まるとまず安眠ができないからな・・・・・」



アスランは抱き上げた時に感じたキラの軽さや医務室で聞かされた最近のキラの様子などを聞き、
今までキラの傍を離れていたことに後悔の念を隠しきれなかった。




一時は起きないという軍医の診断により、僅かでも離れたくはないアスランだったが、
自分が軍を抜けることを決意した重要な計画を阻止するべく、
主なクルーたちの集まるブリッジへと向かった。



「お帰りなさい、アスラン君。 ・・・先ほど、格納庫から連絡があったわ。
カガリさんは、ミリアリアさんに頼んで部屋の中に拘束しています。
・・・明日にでも、強制的に【オーブ】へ引き渡すわ」

「そうしてください。 ・・・これから行うことにおいても、邪魔にしかならないでしょうし」

「これからのこと?」



ブリッジに入ってきたアスランに対して艦長席に座っていたマリューは、
先ほどの騒動をマードックから聞いたのか申し訳なさそうな表情を見せた。


そんなマリューに対し、キラが傍にいないためでもあるが
かつて“鉄仮面”と呼ばれていた過去を持つアスランは表情を動かすことなく淡々と話を進めた。




アスランの言葉に対して疑問を感じたマリューはその疑問を聞くため、アスランに問いかけた。



「そうです。 ・・・・キラと連絡を取るまで、本国のマザーにハッキングしていろいろと情報を集めていました。
・・・・議長の演説はお聞きになられましたか?」

「えぇ。 リアルタイムで流れていたから・・・・。
そこには、【オーブ】の実権を握っているセイラン家の顔もあったみたいだけど」

「・・・俺は、その演説に裏があると思い、調べていたんです。
・・・そこには、とんでもない計画が立てられていましたよ」



アスランからの問いかけにマリューは、先日【プラント】から流れた演説を思い出した。



「とんでもない計画? 彼はロゴズを撃つと宣言していたけど」

「確かに、あの狸の目的はロゴズです。 ・・・俺の見た計画名は『エンジェル・ダウン』」



―――― 『エンジェル・ダウン』とは、そのままの意味。『天使討伐』である。




ここで示されている『エンジェル』とは、AA・・・・アークエンジェルこと大天使であろう・・・・・。


つまり、デュランダルはザフト全軍に『大天使討伐』を命令する計画を立てているのだ。
・・・・実際に、既にその命令は発令されており、
最も近いであろうミネルバの滞在する郊外へとザフトが集結していった。



「何ですって!?」

「そのことを突き止めた俺は、彼らよりも先にキラに・・・・この艦と合流することを選んだ。
あの狸の思惑によって、俺が大切にしているキラを傷つけられるなど、見たくないですからね」



アスランの言葉を聞いたクルーたちは息を呑み、マリューは絶叫した。
そんな彼らの反応は予想のうちだったのか動揺することなく、
それ以上に中に眠る怒りによって若干だかアスランの瞳の色が変化した。
それと同時にアスランの視線も鋭くなり、背後には冷たい冷気を纏っていた。



「貴重な情報を提供してくれてありがとう。 ・・・その計画、実行される時期は特定できるかしら?」

「はい。 俺がミネルバを出る時、
ブリッジに評議会から直接の通信が来たみたいですから・・・・猶予は4日ほど・・・ってところですか。
この間に、地上にあるザフト基地から大半の応援が来ると思われます。
俺としては、逃げるよりも先制攻撃を与えて黙らせるほうをおススメしますけどね?
・・・今回、逃げたところで追いかけてくるでしょうし」



アスランの僅かな変化に気付かないほどキラの隣にいた彼を見てきたのは伊達じゃないようで、
僅かの変化に気づいたマリューは彼の地雷に触れることなく、話を進めた。




そんなマリューを知っているアスランは、その問いかけに答え尚且つ自分の提案を提示した。



「確かに、4日間で逃げても追いかけてくるでしょうね・・・。 分かりました。
当艦は直ちに戦闘体制を整えます。 キラ君はまだ目覚めていないのね?」

「えぇ。 ・・・精神的ダメージと疲労が溜まっていたみたいですね。
・・・今は寝かせておきたいのですが?」

「そのことに依存はないわ。 では、キラ君が目覚めてから、MSの整備に回ってください。
最終チェックをしていたほうがいいでしょう?」

「了解」



アスランの提案に異論は無いのかマリューは頷き、艦内放送を流した。
また、アスランの性格を全てではないがキラに関してならば先の大戦の時に熟知しているのか
キラが目覚めるまでの間はキラの部屋にて待機するよう伝えた。





アスランはそれだけ言い残すと情報は全て提示したとばかりにブリッジから退出し、
彼の唯一の者の眠る部屋へと戻っていった・・・・。



「・・・・彼、本当にギリギリだったみたいね・・・・精神状態は。
チャンドラ、すぐにでも宇宙へ行っているラクスさんと通信できる?」

「はい。 ・・・・艦長、エターナル補足しました」



彼らの会話を聞きながら既にエターナルへ通信回線を開いていたチャンドラは、
モニターを前にある大きなメインスクリーンに移し、
映像が出た時には今は宇宙にいるもう1人の指揮官の姿が映った。




《こちら、ラクス=クラインですわ。 ・・・状況が進みましたのね》


「えぇ。 ・・・アスラン君がこちらに還ってきたのは、知っているわね?」


《存じておりますわ。 ・・・では、彼に新しい剣として例のモノをお渡ししたほうがよろしいのでしょうか》



ラクスはマリューが何を言いたいのかを正確に理解し、ニッコリと微笑みながら問いかけた。



「いいえ。 ・・・今の状況だと、キラ君が何を言っても彼が戦場に出さないでしょうね・・・・。
きっと、そのために『FREEDOM』に乗ると思うわ」


《そうですわね。 ・・・では、そちらのほうはこちらへ参られました時にお渡しいたしますわ》




そんなラクスに苦笑いを浮かべながら、
先ほどまで会話を交わしていたもう1人のエースパイロットの様子を思い出したマリューは
言外にキラは戦場に出さないと宣言した。
もちろん、キラの精神状態を正確に把握したブリッジクルーたちはその決定に依存はなく、艦長たちの会話に口を挟むことなく聞いていた。



「お願いします。 ・・・貴女が言っていた議長・・・狸さん、とんでもない計画を練っていたみたいね」


《まぁ。 ・・・・それで、アスランはご自分が何を望んでいるのかを漸く、見つけることが出来たのですわね?》


「そうみたいね。 2年前よりも明確な目標が出来たみたいで・・・・完全に吹っ切れた様子よ」



マリューは苦笑いを浮かべながら、先ほどアスランから渡された計画内容の保存されたデータをエターナルに転送させた。
そのデータを受け取ったラクスは口元に両手を当て、「あらあら」と呟いた。





2年前、自らの手で最愛の者を殺してしまったと思っていたアスランの精神は崩壊寸前であった。
それでも、自殺をしなかったのはキラの望んだ平和な世界にすることがキラへの想いだと思ったからだ。
そして、ラクスからキラが生きていると伝えられ、自ら確かめるために新しい剣と共に地上へ舞い降りた。
そこで見て、感じて・・・本当は何を望んだのかを見つけるため、
そして・・・再びキラと殺し合わない為にAAと共に宇宙へ上がり、
第3勢力としてコーディネイターとナチュラルの共存を実現させた。



平和に戻っても、自分が何を望んでいたのかを見つけることが出来なかったアスランは、
偽りの平和が崩壊し、
再び戦争が起ころうとした時に祖国である【プラント】を心配して情勢を確かめるために単身で【プラント】へ向かった。
そこで待ち受けていたのは言葉巧みにアスランをザフトへ戻す議長の姿があったのだが・・・・。




議長の言葉通りにザフトに戻ったアスランだが、それでも尚自分が何を望むのかを見つけようとした彼の目の前に、
2年前の最終戦の折に封印されたはずの8枚の翼を持つ天使が再び目覚めていた。





そのことにより、元々不安定だった彼の精神状態もだが、目覚めさせることとなった少女もまた、
危うい精神を保つこととなったのだ。



そんな彼に追い討ちをかけるかのように今回の計画を発見してしまったのだ。
そのデータを見たアスランは、自分が本当は何を望んで再び力を手にしたのかを悟り、ザフトを脱走してきたのだ。








――― 俺が望んだのは、キラの心が休まる場所。
二度と、あんな儚い微笑や泣き顔などで笑顔を曇らせないように ―――









《解りましたわ。 こちらにおいでになられるのを心待ちにしておりますわね。
整備のほうは、万全を尽くしておきますわ》




ラクスはニッコリと微笑を浮かべるとエターナルとの通信は途絶え、
瞳を一度閉じたマリューの表情は、再びその瞳にブリッジ内を映した時には既に艦長としての威厳を纏っていた。



「当艦は、これよりベルリン郊外に駐留するミネルバを叩く。
その近くに、地上に駐留するザフトの艦隊が待ち受けているだろうけど・・・。
それもこの際、追ってこないように叩いておきましょう。 総員、第二戦闘配備」



マリューはクルーたちに微笑むと格納庫に連絡を取り、『FREEDOM』の最終チェックを要請した。






その頃、アスランはマリューに言われたとおりキラの眠っている部屋へ向かおうとしたが、
整備を終えてからのほうが存分にキラの傍にいられると思い立ち、格納庫へ進路を変えた。



「お疲れ様です。 ? なぜ、『ROUGE』まで最終チェックを?」

「おお! ザフトの坊主か。 あぁ・・・・あのじゃじゃ馬のバカ姫さんを【オーブ】へ強制送還するんだろう?
その時、この機体を使うと艦長が言っていてね。 他の【オーブ】軍の方たちは別のシャトルに乗せる。
すまないが・・・・OSを見てくれないか」



カタパルトに近い位置で整備されている機体に少々驚きを隠せないまま
ナチュラルの中では整備士としての腕が高いコジロー=マードックは
苦笑いを浮かべながらアスランにソフト面を頼んだ。



「いいですよ。 ・・・・『FREEDOM』が終われば、すぐにしますね」

「頼んだぞ。 ・・・・お前さんがOSを弄っても誰も何も言わないさ」



マードックの言葉に苦笑いを浮かべたアスランは、少しだけ身にまとう冷気を弱め、小さく頷いた。







――― 整備士としてどうかと思うが、それほどまでカガリの存在はAAにおいて歓迎されてはいなかった。







アスランはキラの愛機である『FREEDOM』の最終チェックが終わると『ROUGE』に移り、起動させてOSを見た。


その際、一見わからないように・・・それでいてカガリの実力では到底書き換えが出来ないよう、細工された。



全ての作業を終えたアスランは、マードックに後のことを任せキラの待つ部屋へと戻っていった・・・・・。





アスランがキラの部屋に入ったと同時に、今までミリアリアによって監禁されていたカガリが
複数のクルーによって格納庫へと連れて行かれるのを他の者たちは関心を寄せることなく
黙々と自分に与えられた任務をこなしていた。
その後ろから、何も知らされていない【オーブ】の軍人たちもぞろぞろと格納庫へと向かった。



「お前たち! 私を何処へ連れて行く!! 私はアスランに会いに行くんだ!」

「・・・黙って付いてきてください。 これは、艦長命令ですので・・・従ってもらいますよ?
この艦にいる以上・・・ね」



カガリの怒鳴り声に心底嫌そうな顔を露骨に見せたクルーに怒りを燃やしていたカガリだが、
クルーたちはカガリの声を無視したまま格納庫に連れて行き、
半ば押し込むように『ROUGE』のコックピットの扉をロックした。




この扉は、自動で開け閉めできるのだが先ほどアスランがプログラムを弄った際に
一定時間が過ぎないと扉が開かないように、細工が施されていた。
もちろん、緊急脱出装置も起動されないように厳重にロックされているのだが、
プログラミングがそれほど優秀ではないカガリがそのことに気付くことはなかった・・・・・。







一緒に連れてこられた【オーブ】の軍人たちもまた、隣にスタンバイされている民間シャトルに詰め込まれ、
マードックはブリッジに直接繋がる回線を開いた。



「艦長、こちらの準備は整いました。 後は、射出するだけですよ」


《解りました。 ノイマン、よろしくね?》

《了解。 目標、【オーブ連合首長国】。 誤差、確認中・・・・・。 ・・・・ヒットしました。
マードックさん、設定が終わりましたから、『ROUGE』と民間シャトル、射出してください》


「了解」



マードックはブリッジにいるノイマンのカウントに合わせるようにカタパルトを開け、
『ROUGE』と民間シャトルを強制射出した。



「・・・漸く、五月蝿い奴らがいなくなったな・・・・。
【オーブ】を心配するのならば、自分の機体がある。その機体で、自分だけ戻れば早い話しだ。
なにも、キラたちを巻き込むことはなかった」



マリューからの通信でカガリを含めた【オーブ】の軍人たちが
強制的にAAからオーブへ向けて射出されたと知ると、
未だ眠り続けるキラに優しくニッコリと微笑みながら再会した時よりも顔色の良くなった頬を撫でた。







一方、強制的に射出されたカガリは、自力で再びAAに戻ろうと試みたが自動操縦に設定されているためか方向転換すら出来ない状態であった。



「ッ! 私はアスランの元に帰るんだ。 漸く、アスランが私を迎えに来てくれたんだ。
なのに、なぜ私がこのような目に遭わなければならない?
アスランがあの艦にいるのならば、私を連れて【オーブ】に戻ることが当然だろう?
なにせ、私はキラによって【オーブ】からあの艦に連れて行かれたんだ。
キラが私を守るのが当然だろう。 それに、私があの艦にいたからこそ、アスランはAAに来たんだ。
私がいなければ、AAなんかに来るものか。 キラさえ、私の邪魔をしなければアスランは私の元に来るのに。
化け物のくせに、私のアスランを誑かすなんて・・・絶対に、許してなるものかッ!!」



カガリはお得意の妄想によって、自分こそがアスランに愛されている存在だと思い込んだ。
この場にもしも彼がいたとしたら、
彼女の言葉は即答で「天地がひっくり返ったとしてもそれはありえない」と答えるであろう・・・・。









カガリが自動操縦によって【オーブ】に向かっている頃、
AAもまた彼らの討伐を本国から命令されたミネルバを含めるザフト軍の軍艦を
先制攻撃によって黙らせるため、彼らが現在修復作業をしている拠点であるベルリン郊外へ進路を向けた。



「・・・そろそろ、目標に到達するわね。 総員、第一戦闘配備!」

「了解。 総員、第一戦闘配備。 もう一度繰り返す、総員、第一戦闘配備!
アスラン=ザラ、直ちに格納庫へ!!」



ブリッジから聞こえてきた警報に、それまで静かに眠るキラを見守っていたアスランは、
艦内放送によってキラの眠りが妨げられないように注意しながら繋いでいた手を優しく解いた。



「・・・キラが目覚める前に、終わらせてくるね?
この戦闘が終わり次第、多分上に行くことになるだろうから・・・・」



アスランは安らかな表情で眠るキラに微笑みかけ、
無防備になっている額と彼のみが触れることの許される唇に誓いのキスを落とすと、
彼女の傍にいる『トリィ』の頭を優しく撫で、小さな声で「行ってきます」と呟いた。





キラの部屋から出たアスランの瞳には、
先ほどまでとまったく正反対の冷たい色をその美しいエメラルドの瞳に宿し、
彼の纏うオーラもまた、2年前と比べられないほどの真っ黒なものであった・・・・・・・。




《搭乗者確認。 カタパルト開放。 『FREEDOM』、発進スタンバイ完了!》


「アスラン=ザラ、『FREEDOM』、出るッ!」



ミリアリアのアナウンスを聞いたアスランは、『FREEDOM』を起動させ、
開放されたカタパルトから空へと飛び立った・・・・。












――― 天使は、右翼を乗せ大空を舞う。彼者の思いを乗せて・・・・・。








2007/01/28















某、これにて出番はありませんv
自動操縦のため、勝手に【オーブ】に行きますのでvv
アスラン・・・・少しはザラ様ご降臨ですか?(まだ?)
残り、一話で完結いたしますv
『ミネルバ』を含むザフトの軍艦が残っていますからねv
最後まで、お付き合いくださいませv