《搭乗者確認。 カタパルト開放。 『FREEDOM』、発進スタンバイ完了!》


「アスラン=ザラ、『FREEDOM』、出るッ!」



『FREEDOM』、キラの愛機。
2年前のあの時・・・・大戦が漸く終わりを迎えた時、この機体を封印するはずだった。
もう、二度と彼女が戦いに身を投じることがないようにと。
・・・・だが、世界は再び戦いに飲み込まれた。
奴らはキラたちが何を望み、戦うのかを理解しようとしない。
邪魔だからという理由で、討伐するだと?
自分たちに賛同しないから、討伐するという理不尽な理由で、
俺の最愛を奪うことは・・・誰であろうと、許さない。




彼女に、真の安らぎを。
2年前、誰よりも苦しんだ彼女に、これ以上のストレスを与えることは・・・絶対にならない。






『自由』と共に、真紅に染まる戦場へと駆けて行く月の騎士。
その胸に、確かな憎悪と唯一無二である月の姫にのみ見せる慈しみ。
双方が混ざり合う中、彼らの廃除しようと企む者たちの前に8枚の翼を背に舞い降りる。
美しきエメラルドの瞳に、紅蓮の炎を宿して・・・・・・。









Reason
    ― 『衝動』消滅 ―









大天使の懐から8枚の翼を持つ天使が戦場へ舞う頃、
アスランの書き換えたデータを漸く通常通りに戻したミネルバクルーたちは、
予想していた時間よりも大幅にかかってしまったことによっての疲労感が大きかった。

プログラム自体は、一般の模範的に見えるのだが解析したらそれらは複雑に組まれているのだ。


もちろん、解読しようとしたら少しでも時間稼ぎを行うために、
幼年時代に創り、それをアスランがアレンジしたトラップも大量に組み込まれていた。

トラップの中には、一定の量を超えるとデータが一部消滅する自体になり、
消滅してしまったデータの回復もまた一から組みなおさなければならないのだ。


尤も、それらは彼らがコーディネイターだからこそ出来たことであって、
ナチュラルの艦であれば、その時点で降伏又はその艦から脱出しているだろう。



「艦長、すべてのプログラムが正常に戻りました。
!? 熱源確認!! 一時の方向、数1。 その後方に艦クラスが1!!」

「なんですって!? どこか分かる!?」

「現在、ライブラリにおいて検索中です!! 前方はモビルスーツです。 種類特定。
『FREEDOM』と『アークエンジェル』!」

「ッ! コンデションレッド発令。 ブリッジ遮蔽。 対艦隊MS戦闘用意!
『IMPULSE』、発進準備。 離陸上昇。 取舵、10!」



索敵担当のバード=ハイムはプログラムが修正された画面に、
敵の熱源を感知したことに驚きながらも艦長席に座っているタリアに伝えた。

そんなバードの声に、タリアは驚愕の表情を浮かべるとすぐさま熱源の照合を急がせた。
照合の結果、本国から『エンジェル・ダウン』と名付けられた作戦の目標が自らやってくることに対し、
自分たちの任務を遂行するべく、すぐさま戦闘態勢を整える準備に取り掛かった。


尤も、『IMPULSE』以外の機体は全て前回の戦闘にて修復中であり、
『SAVIOUR』においてはパイロットが脱走したばっかりであった。




《コンデションレッド発令。 パイロットは搭乗機にて待機してください》




オペレーターであるメイリン=ホークの言葉を聞いたシンは、
片手にヘルメットを持って搭乗機のある格納庫へと向かった。

そんなシン=アスカの様子を負傷や機体の損傷のために
今回の作戦には不参加であるレイ=ザ=バレルとルナマリア=ホークは静かに見つめていた・・・。





「『シューズ』、『トリスタン』、『リゾルデ』起動。 ランチャーワンからスリー全門『パルチハル』装填!」

離陸した『ミネルバ』はすぐさま修復されたすべての火気を起動させた。



「シン。 大丈夫だ。 お前なら撃てる」



レイは格納庫に向かうシンを呼び止め、優しげな声で「大丈夫」と伝えた。
そんなレイの様子に驚きを見せたのがルナマリアだったが、激励を受けたシンは、不敵な笑みを浮かべて頷いた。




一方、遮蔽されたブリッジではメインスクリーンにこちらに向かってくるAAと『FREEDOM』の姿が映し出されていた。



「ジャミング弾、発射。 『IMPULSE』、発進!!」

「ハッ!」



タリアの声と共に艦の前方に供えられている砲弾が発射された・・・・。



「シン=アスカ、『コアスプレンダー』、行きますッ!」



シンの声と同時にカタパルトが開放され、戦場へ飛び出した。

その後から『IMPULSE』の接続部分となる『チェストフライヤー』、『レッグフライヤー』、『フォースシルエット』がカタパルトから射出された。

空中でそれらと合体し、『IMPULSE』となったシンはそのまま肉眼で見える付近まで接近している『FREEDOM』へと向かった・・・・。







その頃、『IMPULSE』がこちらに向かっていることをコックピットの警報によって知っているアスランは、
冷たい視線で前方に見える『IMPULSE』と『ミネルバ』に視線を注いでいた・・・・。





「この俺に、貴様ら如きが勝てるとでも思っているのか?
確かに、お前はこの機体・・・『FREEDOM』のことをシミュレーションしていたが・・・それは、
キラが乗っているからこそ出来ること。
しかも、唯一見つけた弱点とはキラの優しさに漬け込むという最も許しがたいこと。
俺は、キラのように甘くないからな。 容赦なく、ここで堕ちてもらおうか」



アスランはコックピット内に真っ黒いオーラを充満させていた・・・・・。







「攻撃開始!!」



マリューの言葉と共に、スレッジハマーが全門から射出された。
その攻撃により、『IMPULSE』や『ミネルバ』も進路変更を余儀なくされ、
その隙を突いたアスランは瞬時に『IMPULSE』との間合いを詰めた。



「『ミネルバ』補足。 その距離、2000!」

「・・・ここで叩くしか、他はないようね・・・。 ここでみすみす堕ちるわけにはいかないわ」



マリューは前方に映る『ミネルバ』を見据えた。
空中戦を繰り広げているアスランは、接近した瞬間に『ピクウス76ミリ近接防御機関砲』を放った。



「そんなもん、当たるか!」

「・・・コレは囮だということに、気付いていないようだな。 だから、甘いんだよ、お前は」



アスランの攻撃をかわしたシンだったが、すぐ近くにアスランが接近したことに気付かなかった。
シンの隙を突いたアスランは、『ラケルタ』を斬りつけた。
その攻撃により、避けきれなかったシンは衝撃と共に落とされそうになったがすぐさま体勢を整えた。



「・・・コレくらいで堕ちたらダメだろう?
それに、この機体のシミュレートをしていたのだから、それなりに楽しませろ」

アスランはクスッと黒い微笑を浮かべるとすぐさま次の攻撃に移った・・。



「ッ! クソッ!! どうなっているんだ?!」



シンは『FREEDOM』に向かってシールドを投げ、そのシールドに反射するようにビームライフルを撃ったが、
そのことを見切ったアスランは慌てるとことなく避けた。



「・・・・そんな攻撃、この俺に通用するとでも思っているのか?」



『クスィフィアス』レール砲を構えたアスランは、
『IMPULSE』のコックピット付近にロックさせると何の躊躇いもなく撃った。
発射された『クスィフィアス』は至近距離のために避けることが不可能で、
『IMPLSE』はその攻撃を諸に中り、バランスを崩した。



「!? コックピットを狙わないんじゃないのか!?」



シミュレートした際にレイから言われた言葉を思い出したシンだったが、
現実にはコックピットではないがその近くを正確に撃たれた事により、シンは驚きを隠せなかった。



「俺はキラじゃないからな。 そんなに甘くはないさ。
・・・彼女の戦い方を俺は甘いとは思わないが・・・その戦い方を利用するお前たちを、俺は許さない」



アスランはその身に纏う真っ黒いオーラをより一層黒くすると、
『FREEDOM』の中で最大の破壊力を誇る『バラエーナ』プラズマ収束ビーム砲を発動させ、
『IMPLSE』のバランスが立て直される前にコックピットをロックすると、2門を同時に放った。


アスランは1mも誤差がないようにプログラムを直していたため、
照準も狂うことなく『IMPLSE』のコックピットを貫いた・・・・・・。




『IMPLSE』の爆発は、『ミネルバ』にいたクルーたちにモニター越しに目撃されていた。
パイロット室にいたルナマリアは呆然とした表情で見つめ、レイもまた愕然とした様子を隠しきれていなかった。

ブリッジでもその騒然とした映像がメインモニターに映っており、そのあまりにも無残な映像に、
クルーたちは前方に敵がいることを一瞬忘れた・・・・。



その一瞬を見逃さないのが、先の大戦で生き残った者たちの強さだろう。

ザフトから“浮沈艦”と呼ばれたAAはその一瞬の隙を見逃さず、
すぐさまエンジン部分を狙って『ゴットフリート』を発射した。


その熱源に気付いた『ミネルバ』だったが、既に回避する時間が残されてはおらず、エンジン部分に直撃した。

その隙を突いたAAは、すぐさまその戦闘区域から離脱し、未だ空中に漂う『FREEDOM』に通信を開いた。




《アスラン君、戻って! これから、少し離れたところから宇宙へ行きます。
【プラント】の狸さんが、何か不審な動きをしていると、ラクスさんから連絡がありました》


「・・・了解。 すぐに帰還します。 AAは、先に向かっていてください。
宇宙へ上がるポイントをお教え願いたい」



アスランの言葉を聞いたマリューはこれからアスランが何をするのかを聞くことなく、
了承してポイントを示した地図を『FREEDOM』に送信した。
その地図を受信したアスランは、頷くと通信を遮断した。



「・・・・ここで叩かないと意味がない。 ・・・尤も、叩かなくともAAがコレ如きに堕とされるとは思わないが」



アスランは無様にも走行が不可能となったかつての所属艦・・・『ミネルバ』を嘲笑い、
一瞬にして無表情に戻したアスランはそのままの位置からブリッジを照準に入れた。


『IMPLSE』を一撃で撃破した『バラエーナ』プラズマ収束ビーム砲を再び発動させ、
『ミネルバ』に照準を合わせている2門を同時に放った。

不意打ちだったために、『ミネルバ』がその熱源に気付いたときには既に目の前まで迫っており、
チェンがタリアに報告する前に、業火の炎に包まれた・・・・・・・。




燃え盛るかつての所属艦に、アスランはその表情を動かすことなく冷たい視線を向け、
興味が失せたかのように視線を戻すと現在の所属艦であり、
彼にとっての天使が眠る大天使へと、飛行を開始した・・・・・。










――――― 天使を亡き者にしようとした『衝動』とその鞘は、
天使を最も大切に思う『救世主』の冠を授かっていた者によって、豪華の炎にその身を包まれることとなった・・・・・。











END.








2007/03/19















ザラ様、降臨いたしましたッ!
今回の戦闘、当然ですが『FREEDOM』は傷一つありませんv
無傷のまま『IMPULSE』と『ミネルバ』を破壊いたしましたv
しっかし、漸く終わりましたv
キラの出番が余りありませんでしたが・・・ザラ様が中心としていましたので;
もともとの予定が、『ミネルバ』破壊まででしたので・・・コレにて終了です。
苦情・加筆はチロロ姉様のみ、常時受付いたします(笑)