「・・・・『STRIKE FREEDOM』? 『FREEDOM』と同じ形なんだね・・・・。
・・このデータを隣のアスの機体に組み込んで・・・・・よし、行きますか。
・・・キラ=ヤマト、『FREEDOM』、行きます!」



僕の新しい剣。
・・・この剣を持って彼を迎えに行こう。
彼こそが、僕が認めた僕だけの片割れ。
待っていてね、アスラン。
すぐに、迎えに行くから・・・・・。






自分の右翼を求め、失ったと思われた翼を再び剣へと変えた天使は、
再び空へと舞う。


その姿にオーラからは天界から地へと堕ちた堕天使のように見えたとしても、
彼の者には紛れもない自分だけの・・・純白の翼を持つ天使に見えるのだろう・・・・・。









堕天使、降臨
         ― 『正義』、覚醒 ―









その頃、何事もなくジブタルへと到着したミネルバは、
自軍の基地だけあって降艦願いがすんなりと受理され、
クルーたちは久しぶりの艦以外の地面を踏みしめた。


とある一室では基地に入っても尚部屋から一歩も出ることはなく、
未だに情報収集を行っていた。
今、彼を動かしているのは彼にとって最も大切なものを想う心だった。
それ以外のことに意識を一切向けず、一心不乱に求め続けた。



「・・・・キラが死んでいるはずがない。 俺を置いて、あいつが死ぬ筈がない!」



アスランは最悪を想定している自分の考えを振り切るかのように激しく首を振り、
再びPCの画面に視線を固定した。





その頃、一心に求められている極上のアメジストをもつ最愛の人物は目的地である基地の上空に佇み、
最大出力を最大限に酷使して進入を果たそうとしていた。




(・・・外部のMSはどうでも良いけど・・・内部の人間は煩そうだな・・・・。
ハッキングして、ちょっと小細工しておこうかなぁ)




キラは頭で考えるよりも行動のほうが数倍も早いのか、
考えながらも既にキーボードを取り出しハッキングの準備を整えていた。
マザーのパスワードはAAにいた頃に既に入手していたため簡単に進入を果たし、
プログラム回線を弄って警報機を無効化した。
それにより、基地内部に進入をしても警報機がなることはない。



キラがそうしている間にも上空を飛ぶ未確認物体を外部にいたMS部隊が感知したらしく、
司令部に報告しようとした矢先にキラによって
警報機もろともプログラムを書き換えられたために伝達することができず、
独断で攻撃することが決断された。




(・・・・未確認扱いかな?
当然だよね、この機体はザフトにばれないように製造されていたみたいだから)




の割にちゃっかり機体番号はザフト製であるが・・・・。




そのことに誰も突っ込む相手はおらず、淡々とした様子で周りを把握していた。
さすがザフトの基地だけあってMS部隊の数は半端なく、
堕とされるのが目に見える光景だが彼らの前にいる
未確認物体・・・『STRIKE FREEDOM』のパイロットは民間人でありながら
ザフトの‘紅’を身に纏う4人と互角に戦闘を繰り広げた天性的の戦闘センスを持つ者である。
キラにとって彼らは2年前戦い続けたクルーゼ隊の足元にも及ばない。



‘紅’の実力低下=ザフト全体の実力低下だと考えているため、
2年前のザクに乗っていたパイロットたちよりも実力が低下しているのだろう(新人は特に)。




むやみやたらと撃ってくるライフルを余裕もって回避しつつ、
コックピットを狙わない戦闘を今も尚続け、
パイロットは無傷だがMSは戦闘不能にしていく未確認MSに呆然としながらも
動かない愛機の中からその光景を見つめ続けるパイロットたちが多数いるのは
仕方がないことである。



向かってくる大体の敵を急所を外して落としていたキラだが、
自分の行動を邪魔するMSがいないことを確認し、
再びキーボードを取り出してプログラムを構築していった。

キラが瞬時に構築しているプログラムは基地内部に進入した際、
侵入者撃退システムを無効化させるためのウイルスである。


10分も掛からずに作り上げたウイルスを流すため、
基地のマザーにハッキングをかけると中央部分にウイルスを撒き、
警報プログラムを止めた。




(・・・コレで、少しは静かになったかな?)




そのまま跡を残すことなくマザーから抜けると入手したパスワードを入力し、
大胆にも使われていないカタパルトから内部へ侵入を果たした。




『STRIKE FREEDOM』のOSを厳重にロックし、
きっちりと固定してからコックピットから飛び降りると
侵入する際に基地内部の構造を頭に記憶しているため、
苦労することなくアスランに宛がわれた部屋に向かった。





警報装置をウイルスによって止めているためか、
それとも自軍の基地において侵入者がいないと思っているためか基地内には緊張感がなかった。
最も、現在のキラの姿を見て誰も彼が侵入者だと分からないだろう。
彼は2年前に【プラント】から『FREEDOM』を奪取する際に着用した
アスランの“紅服”を再び纏っているからであるが・・・・。



彼が侵入者だと分かるのは彼の捜し求めている右翼だけであろう。





キラは迷うことなく部屋に向かい、幼い時からの癖かコンコンと2回ノックをして部屋のロックを解除した。




――― シュン




「・・・誰だ? 入室許可はしていない」

「・・・気配ぐらい、感知しようね? アスラン」



アスランは目の前にあるPCに集中しており、後ろを振り返ることなく問いかけた。
そんなアスランの姿に苦笑いを浮かべながらも無防備な姿にため息をつくと
黒いオーラを纏っているにも拘らず優しい口調で認めた。



「キラ!?」

「そうだよ、アスラン。 ・・・・馬鹿なことを考えているアスランを迎えに来てみた。
・・・基地をハッキングすることには同意するけど・・・どうやって戻ってくるつもりだったの?
ココには、新型2機以外にまともなのはないじゃない。
・・・・でもその2機はアスランには不向きだし、尚且つアスランの好みじゃないからね、色的に」



アスランの驚きに予想通りの反応なのかキラは冷静のままで
アスランの逃走する計画の不備点を指摘した。
そんなキラに図星なのかアスランは反論することができずに、
キラの雰囲気が少々違うことに気付いた。



「・・・・キラ、何があった?」

「さすが、アスラン! ・・・・まぁ、どっかの馬鹿姫が僕の地雷を見事に踏んでくれたからね。
でも、マリューさんに廃棄処分のお願いしてきたし・・・戻った時にはもういないと思うけどね」

「そうか。 キラを煩わせるなんて論外だな。
まだいるようだったら、俺が直々に処分してやるから」



アスランは何事もなかったかのようニッコリと微笑を浮かべるとサラリと爆弾発言を落とした。
マリューとは違い、幼年期から共に過ごしたアスランはその年数は伊達ではな
くしっかりとキラの性格を把握している。
それ以外にもアスランはやっぱりキラ至上なのか背後に真っ黒いオーラを纏っていたとしても
気にすることなく、その原因になった者への報復を考えていた。
アスランはキラに逆らうことはできないが、
キラが生きていることによってその他に関しては無敵になっているのであろう。




アスランの言葉に嬉しそうに微笑を浮かべるとこの場所に
長居は無用とばかりに既に用意されているアスランの荷物を本人に持たせると
アスランの腕を引っ張って『INFINITE JUSTICE』と『STRIKE FREEDOM』が固定されている
格納庫へ向かった。






その頃、修復作業を順調に進めていたミネルバであったが、
OSのチェックをしていたマリク=ヤードバーズは目の前にあるプログラムに違和感を感じ、調べ始めた。



「か、艦長!」

「どうしたの?」

「本艦・・・いえ、基地全体にウイルスを発見!
警報装置及び感知装置が停止しています!」

「何ですって!? ・・・今からでも止めることはできないの!?」

「・・・今からではもう、間に合いません!!
・・・プログラム自体が複雑すぎて、解読が不可能です・・・・・」



マリクの驚愕の声に驚いたタリアは、すぐさま止めるように命令したが、
キラが構築したプログラムは独特なため、解読が不可能である。
そんなプログラムを前に絶望的な声をあげたクルーにタリアは愕然とし、
すぐさま隣にいた副艦長であるアーサー=トラインに命令を発し、
ブリッジ全体に聞こえるよう、号令を出した。



「なんですって!? ブリッジ遮蔽。 コンデションレッド発令。
本艦は只今より戦闘を開始する。 対モビルスーツ戦闘用意!」

「コンデションレッド発令。 パイロットは直ちに搭乗機にて準備してください」



タリアの命令に即座に従ったオペレーター・・・・メイリン=ホークはすぐさま
それぞれの場所で休んでいるであろう4人のパイロットを呼び出した。






ミネルバ全体が緊張化の取り戻りもどしている頃、
その騒動を放送で聞いていた侵入者と脱走者の2人は慌てることなくキラが
侵入してきた格納庫に着いていた。



「・・・漸く、プログラムの異変に気付いたみたいだね。
・・・僕としては、もう少し早いと思っていたんだけど・・・・。 まぁ、いっか」

「・・・同じ軍にいた者・・というか、同じところに所属していた者として少し恥ずかしいな。
・・・あいつらのほうが余程この程度のことに関して優れていた。
・・・まぁ、それがこの軍全体の質が落ちていることの表れなんだろがな」



2人は冷静に今頃慌てているであろうミネルバのクルーたちの評価を辛口に批判していた。
それでもキラのタイピング速度は落ちることなくミネルバの格納庫も合わせて
基地全体の格納庫に最後の仕上げとばかりに仕掛けを施していた。



「アスランの機体、隣にあるヤツだよ。名前は『INFINITE JUSTICE』。 僕の機体はその隣」



キラは長居無用とばかりにプログラムを流し終えた後すぐに乗り込み、カタパルトが開くよう、ハッキングを仕掛けた。



「OS、キラが完成してくれたんだ?」

「うん。 『JUSTICE』のOS、見たことがあったからそれと同じようにしてみたよ。
・・・性能的に延びてそうな部分は改良したけど・・・・。 簡単にしか弄っていないから。
・・・それでも、AAまで持つくらいの性能だと思うよ」

「いや、これだけで十分だ。
・・・少し、こちらで製造された新型2機と戦闘があるかもしれないが・・・遠慮しなくてもいいぞ」

「もちろん。 図に乗っているひよこさんたちにもお灸を据えたいし?」



アスランの発言に嬉しそうに微笑んでいたキラだが、
自分の愛機である『FREEDOM』を撃破された恨みは相当なものだったらしく、
クスリと妖艶に微笑みながらもバックのオーラはその笑みを裏切るかのように
真っ黒いオーラが撒き散らされていた。




そんなキラに気付きながらも何処までもキラ至上なアスランは、
纏っているオーラを気にすることなく、素早く機体を起動させ、
沈黙を守っていた巨体を目覚めさせた。



その動作を見ていたキラもまた、
自分の所属する艦に戻るために隣にある自分の片割れと対となる8枚の翼を持つ天使を目覚めさせた。


2体の機体が目覚め、開放されたカタパルトから
赤と白の機体は自らが求める場所へとその翼を広げ、飛び立った・・・・・。







再び『正義』と『自由』の名を冠する機体が飛び立った頃、
ミネルバは修復したばかりであるがタリアの命により再び基地の外にでていた。



「『トリスタン』、『リゾルデ』起動。 ランチャーワンからスリー、全門『マルチハル』装填!!」



基地より少し離れた場所に陣をとるとアーサーはすぐさま艦に装備されている武器の起動を命令した。
その命令どおりクルーたちはそれぞれの役割として全門を開き、戦闘準備を整えた。




《搭乗者確認。 カタパルト開放。 発進、どうぞ!》


「レイ=ザ=バレル、『LEGEND』、発進する!」

「シン=アスカ、『DESTINY』、行きます!!」



ミネルバのパイロットたちの中で動けるパイロットは2人だけだったようである・・・・。
メイリンの言葉に開放されたカタパルトから空へと出ようとした矢先、急激にカタパルトが閉ざされた。



「!? メイリン、どうなっているんだよ!!」


《!? 分かりません!! ・・・プログラムが書き換えられている?
一度、開放したら二度と開かないように書き換えられていると思われます!!》


「・・・・・なんだと? ・・・艦長、このカタパルト、破壊します。
・・今追わなければ・・後に、大変なことが起こりますよ」


《・・・・許可します。 但し、回りには被害が及ばないように気をつけて》


「了解」



メイリンの言葉に驚きながらも冷静に分析したレイは
そのまま機体に搭載されているビームライフルをカタパルトの一部に照準を当て、
ブリッジにいるタリアに許可を求めた。
タリアも一刻を争っていることを実感しているために許可を出し、
その許可の声と同時にレイは合わせていた照準を躊躇いもなく打ち抜いた。





打ち抜かれたカタパルトは空に向かって緑のビームを見せながら見事に穴を開け、
その抜けた穴から脱走したと見られるアスランとプログラムを流した者を追いかけるため、
全速を上げて追いかけた・・・・。








2006/07/19















漸く、更新が出来ました(滝汗)
黒キラ、発動ですねvv
気持ち的に黒キラ>アスランですが・・・キラが生きていることが分かったアスランにとって、
キラがいることだけで結構無敵になるようです;
少々、黒アスランになるかな?
黒キラ状態なので、普通の時ではやらないことをやっております。
私の中で黒キラは、目的のためには手段を選ばない(特にハッキング)なのでv
順調に行けば、次回が最終話かもしれません。
今しばらく、お付き合いくださいませv


大変お待たせしてしまって、申し訳ありません!
亜矢姉様に限り、修正・加筆のコメントを受付!(爆)