「『INFINITE JUSTICE』、『STRIKE FREEDOM』・・・射出してください!」



私はまだ、時ではありませんからここから動くことができませんわ。
ですが、この場所からキラたちの無事を祈らさせていただきます。

・・・同情はいたしませんわよ?
全て・・・自業自得、ですもの。

彼らは・・・怒らさせてはならない方を怒らさせてしまったようですわね。
・・・あの方は、滅多に怒られることはございませんが・・・怒られた場合、怖いですわよ?

彼女は知っている。
彼が自分の右翼をどんなに大切にしているかということを。
彼らがどんなに相手に対して執着・・・いや、依存しているかということを。


・・・そのため、そんな右翼を傷つけた者たちに対して今彼がとてつもなく



・・・そして、静かに怒っているということを・・・・。









堕天使、降臨
         ― 堕天使の目覚め ―









一方、本来ならば艦長であるマリューが全ての決定権を持つのであろうが僅かに黒いオーラを背後に纏っている少年には誰も逆らうことができず、
彼の言葉によってある地点へと進路を向けていた。




しかし、そんな彼の考えに1人の人間は同意してはおらず、単細胞なのかそれともただのバカなのかその辺りは定かではないが、
その人間よりも長く行動を共にしているAAのクルーたちや艦全体に広がる多少重い空気に気付くことなくその原因である少年に不満を爆発させていた。



「キラ! なぜ私までその場所に行かなくてはならない!?
この場合は直ちに我が国である【オーブ】に向かうべきだ! 【オーブ】が危険になるのかもしれないんだぞ?」


「・・・・・だったらさ、君の機体で還ればいいんじゃない?」

「!! ・・・この艦に私を乗せたのはお前だろう!? だったら最後まで送り届けるのが礼儀だろうが」



この1人の人間・・・血筋的には血の繋がった姉弟(兄妹かもしれないが)であるが、
姉と公言して回る彼女はこの少年にいい感情を持ってはいなかった。
そのことは一部の人間にはありありと解っているらしく、敵意は向けてはいないもののあまり歓迎されていない。
この艦のクルーたちは2年前のあの出来事が起こって以来、
キラ個人・・・そして彼の半身である彼自身を見て自分たちの仲間だと認識してきた者たちである。
しかし、当時から方向は同じでも考え方がまったく違うこの少女のことはあまりいい感情を持ち合わせてはいない。



「・・・カガリ、礼儀って言うけど・・・本来僕たちは君をあの場所から連れ出すことは考えてはいなかったんだよ?」



いつもの癇癪を起こした少女・・・カガリを呆れた顔をしながら見つめた。




・・・・彼の背後に黒いオーラを纏っていない時には絶対言わないであろう彼の本音を爆弾のように叩き落した。



「だったらなぜだ!?」

「・・・それを君が言うの? あんな手紙を僕にわざわざ渡しておきながら? それにその指輪・・・図々しいとは思わないの?」



キラはカガリの言葉を受け流しながら本来ならば捨てられるはずの指輪を
ちゃっかり自分の左薬指に嵌めているカガリの左手を見つめた。



「図々しい・・・? この指輪は私のだ。 アスランが【プラント】に行く際、私にくれたものだ」

「・・・でも、君は一度それを捨てた」

「!? 捨ててはいない! お前に渡しただろう!?」



カガリはキラが何を言っているのかが解らないとばかりに声を張り上げたが本人は冷静な声を出した。



「確かに、僕に渡したね? ・・・でもね、カガリ。
一度でも他の人と結婚をする決めた人間がその指輪をすることはなんとも思わないの?
・・・大体それ、本物じゃないでしょ?」


「・・・本物じゃない?」

「・・・聞き返すのはそこなわけ? ・・・まぁどうでもいいけどさ? 君は何か勘違いしていない?
“【オーブ】のためだったから仕方がない”それを本気にするの?
それを言い訳にする時点で君は【オーブ】の代表を降りるべきじゃないの? だってそうでしょう?
立場よりも一個人を選んだ。 個人を選ぶのなら、全ての権力を捨てないとね?
代表ってさ、個人よりも国民を優先しなきゃいけないでしょう?
代表に与えられる特権は、国民を守ることが大前提のはずだよ。 けど、君はそれを放棄した。
連合との同盟を結んだ時点で、君は彼の敵になったんだよ。
それに、【オーブ】に住む僕や彼の同胞・・・『コーディネーター』のことを考えたの?
僕らにとって一番恐れているのは『ブルーコスモス』・・・・。
連合全てがそうとは言わないけど・・上層部はほとんどがそれに属しているんだよ」



キラは少々呆れ気味だったがそのことを隠そうともせず、淡々と事実を述べた。
彼の言っていることは正論である。
代表だからと言って何も好き勝手にすることはできない。国を動かす・・・それには個人の考え・感情を一切抜きにしなければならない。
そうでなければ国民の意見を聞くこともできない。
それだけではなく、個人の感情などで動く者を代表にすれば政である国の運営は滞り、破滅への道を一直線に辿るだけである。





しかし、この少女は口では“【オーブ】のためだ”と言いながら反対していた連合との同盟を結び、
代表となるべく幼い頃から決められていたセイラン家の嫡子であるユウナ=ロマ=セイランとの結婚を受け入れていた。
しかし、カガリは自分の世話係に頼み、キラに手紙を渡した。
キラの本質は心優しい少年である。その少年の心を利用し、結果的に婚礼の儀をぶち壊した。






【オーブ】は長年中立の立場を守ってきた。
そのことにより、【オーブ】には彼女やAAのクルーたちと同じ『ナチュラル』だけではなく
遺伝子操作をされた『コーディネーター』であり、彼と彼の半身の同胞でもある。
連合の中には『コーディネーター』を穢れとしてテロに走る者たちが大勢いる。
先の大戦はそんな一部の人間たちが引き起こしたことが切欠となった大戦である。



そんなことがあったにも拘らず、カガリの判断で中立の立場を放棄し、連合国としてこの戦争に参加している。
そのため、本国に住む『コーディネーター』たちは自分たちの命を守るべく地上に存在するザフト基地周辺に避難した。


その避難を呼びかけたのはこの場所にはいないラクスである。
ラクスは同盟の話が結ぶと予想した時点で特殊な通信機を使い、同胞たちに避難勧告を発令していた。



「だが、あの時はそれが最善の策だと思った! 再び【オーブ】を戦場にするわけにはいかない!」

「・・・どの道、戦場になるよ【オーブ】は」

「!?」

「だって、そうじゃない。
君は忘れているかもしれないけどさ、【オーブ】の近くにはザフト基地があるはずだよね?
中立である【オーブ】には同胞がいるからザフトは戦場にはしない。
けど、同胞を死なせる連合に属した【オーブ】は? 本気で戦場にならないと思っているの?
何か勘違いしていない? ザフトの敵は連合だよ?
あの狸はロゴズだといっているけどさ、そのトップの人間は連合にとってもトップだよ?
連合と同盟を結んだからにはそのトップが【オーブ】に逃げない可能性は無いと言い切れる?
そして、【オーブ】も同盟したからには嘘を言ってでも守るだろうね?
そうしたら・・・ザフトは攻めてくるよ? そして・・再び【オーブ】は戦場となる。 敵が変わるだけだ。
この戦争を終わらせない限り・・・『ナチュラル』と『コーディネーター』が共存を望まない限り、
この繰り返しは永遠と続くよ?」



キラはさらに淡々とした口調で話した。
敵が変わるだけ・・・。
だからこそ、【オーブ】は中立を保ってきたのだ。
どちらにも干渉をしない。
しかし、人間は国の秩序を守れば寛大にその扉を開く。
それが【オーブ】の方針であった。そのため、【プラント】に住めない『コーディネーター』は母なる星で生きることを許されていた。
キラのように子どもが一世代であれば彼らにとっての本国である場所では一緒には住めない。
そのため、中立と言う場所に移るのだ。
キラも例外ではなかった。
だからこそ半身と別れて2年前のあの日まで中立のコロニーである【ヘリオポリス】に移住したのだ。



「だが、アスランは私のモノだ!」

「・・・・それが勘違いだって言っているのに・・・・・。 ラクスに聞いてみなよ。
政略結婚だということで婚約者になったみたいだけど・・・・本人たちにはまったくその気はなかったから、
別のことを話していたみたいだよ?
普段、無口なくせにあることに対して、とても惚気としか取れない発言をしていたみたいだからね」



あくまでも自分が彼女だと思い込むカガリに対してため息をついたキラは、
目の前でわめく存在を無視しながら自室へ向かい、誰も入れないように中から頑丈なロックを掛けた。





(彼が君のモノ? 何を勘違いしているの? 彼は、僕のモノ。 そして、僕は彼のモノ。 この事実はあの頃から変わらないんだよ・・・?)




「・・・・アスラン、待っていてね? 必ずぼくが迎えに行くから・・・・・」



キラはうっとりとしながら【プラント】に発つ前に一緒に撮った写真を眺めていた。
彼の左薬指には写真の半身と同じシルバーの指輪をしていた。
違うのはキラの指輪にはエメラルドの宝石だが半身・・・アスランの指輪にはアメジストの宝石が埋め込まれていた。
互いに埋め込まれた宝石は、自分たちの瞳の色と同じものである。
その同じ宝石を反対に嵌めることで自分たちの繋がりを目に見えるものにしていたのだ。
それこそが彼らが望む唯一のことであった。







その後、キラはマリューからの呼び出しがあるまで自室から一歩も外には出なかった。
ブリッジのクルーたちはもちろん、AAにいるクルーたちはキラが最高に不機嫌だと言うことを認識しているため、
必要な時以外部屋の近くを通らなかった。
例外であるカガリに関してはミリアリアが引き受け、部屋に拘束という形で軟禁していた。





そのこともあってか、キラの示したポイントまでの海路は敵に見つかることなく進み、ポイント地点へと到達した。




《キラ君。 ポイントに着いたわ》


「ありがとうございます、マリューさん。 ・・・・僕が出た後、カガリをオーブに向かって出してあげてください。
このまま、ここにいても邪魔なだけでしょう?」



《・・・そうね。 このままいてもらってもキラ君たちの機嫌が悪くなりそうだし。 私たちが戻るわけにはいかないものね》




キラは格納庫でシャトルの最終チェックをし終えると、ニッコリと微笑みながら毒を吐いた。
順応性が高いと評価されるマリューはキラの冷笑ともいえる微笑に引きつりながらも微笑を返した。
その微笑を了承と受け取ったキラはシャトルに乗り込み、‘宙’から送られた届け物を受け取りに行った・・・・。






静かに佇む2体の巨体を見つめたキラは、かつて歌姫から渡された愛機と似た形の巨体に乗り込んだ。



「・・・・『STRIKE FREEDOM』? 『FREEDOM』と同じ形なんだね・・・・。
・・このデータを隣のアスの機体に組み込んで・・・・・よし、行きますか。
・・・キラ=ヤマト、『FREEDOM』、行きます!」






この時、失われたと思われた8枚の翼を持つ白と青の天使は、自分の右翼を求めて蘇った・・・・・。








2006/04/01















新設してからの更新です。
別名・某姫への毒舌v
ページの半数以上を某姫への毒舌に使い果たしました!(ぇ、足りない?)
矛盾しているんですよね〜。
アスランがAAへ戻ってきた時(in医務室)の会話。
・・・謝ることが、結婚をしかけた事ですか!?
【オーブ】が同盟なんかを結んだことじゃないんだ!
・・・思いっきり個人を選んでいますよね・・・・。
あの指輪も強調しすぎですし?
補足ですが、
キラの嵌めている指輪と写真の中でアスランの嵌めている指輪は対となっております。
中央にある宝石は、オーダーメイドv


サイト名を変更したので、修正をお願いいたします!
亜矢姉様に限り、修正・加筆のコメントを受付!(爆)