「・・・・こいつらがキラの言っていた者達か。
キラの友人と名乗るのならキラをなぜあの機体に乗せる?
・・・・連合のマザーにハッキングするか」



必ず、君をその鳥籠から解放するからね・・・?
俺が守りたいのは、キラだから。

だから、絶対君の心を傷つけるその場所から開放する。


・・・今でも大切にしてくれている、トリィと一緒に・・・・。











Belive
  ― 最悪のシナリオ ―














《・・・・キィラ? どうしたの?》


《アス? ・・・・僕、アスランのところへ行きたいの・・・。 けど、みんなを裏切れない・・・・》


《・・・キラ、キラは何も悪くないよ? ・・・大丈夫。
絶対に俺がキラをそんなところから助けてあげるから・・・。
だから、そのときは俺の元に帰ってきてね?》


《・・うん。 アスランの元へ帰ってもいいの?
・・僕、みんなと同じ【コーディネーター】なのに、みんなに・・アスに銃を向けてしまったんだよ?》


《言っただろう? キラは何も悪くは無いんだ。
キラはただ、自分を・・みんなを守りたかっただけだろう?
向けていたのが事実でも、キラは誰も殺してはいないのだから・・・。
キラの帰る場所は俺の元だけだろう?》


《・・・守りたいと思ったの。
・・けど、僕がアレに乗れば乗るほど、みんなの視線がきつくなった・・・。
僕はただ、みんなを守りたかっただけなんだ。
・・・ある子が僕に、「本気で戦ってないんでしょっ!!」って言ってきた・・・。
僕はちゃんと本気だよ? みんなを守りたいって本当に思っているんだ》


《・・・キラは何も悪くは無い。 力の差は歴然なんだ。 キラはMSを動かせても民間人だろう?
俺たちは軍でちゃんとした訓練を受けた軍人だ。
それに、キラ1人で俺達を倒すことはまず無理だろう?
その艦が戦っているのは【ザフト】・・・お前と同じ【コーディネーター】だ。
・・・・だから、そいつが言っていることがおかしい》


《・・・・アス・・、ここは寒いよ・・。 ここの人たちから感じる嫌な視線・・・・。
さっきね・・・、とっても嫌なことがあったの。 トリィが助けてくれた・・》


《何があったんだい?俺に言えること?》


《・・・・・とっても嫌なこと。 この艦では僕ね、【男の子】ってことになっているんだ。
ヘリオポリスに来る時に母様がIDを【男の子】として登録したから・・。
だから・・・ここにいる人たちは僕のことを女の子って知らないはずなんだ。 ・・けどっ!!》
《!! キラ、もう何も言わなくてもいいから!! ・・・頑張ったね? 大丈夫なのか??》


《・・うん。 トリィが助けてくれた。》


《そうか。 ・・こっちに来たらトリィを褒めなきゃな。 ・・・キラ、もう少しだけの辛抱だ。
今度の攻撃でお前をそこから保護するからね。
・・・・その艦も捕獲って決まっているから民間人に危害は加えないよ?
(キラにとって危険でない者たちはだけど)》




――――大丈夫。 俺が、お前を助けるから・・・・・。
だから、キラは昔みたいに・・・・あの頃のように俺の傍で幸せそうに微笑んで?
それだけで、俺は幸せな気分になれるから――――



「・・・眠っていたようだな・・・。まぁ、このデータを隊長たちに報告しに行くか・・・・。
(もうすぐ、あの冷たい鳥籠から君の大切なもの(トリィ)と一緒に助けてあげるから・・・)」



先ほどのキラとの通信での会話を思い出しながら決意を新たにし、
連合軍のマザーにハッキングして入手したデータを収めたMOを手に、隊長たちが集まる部屋へと急いだ。



「隊長! ・・なんだ、みんなもいたのか」



アスランは扉を勢いよく開けた。
そんなアスランを驚いた表情をしながら同僚たちは見つめていた。
アスランの視線はクルーゼに固定されていたため、イザークたちの存在を感知できなかったのである。



「そんなに慌ててどうしたんだね、君らしくもない。・・・・そのMOは?」

「先ほど、連合のマザーにハッキングして入手したデータです。
・・本来、このようなやり方は好きではないのですが・・・・気になることがありましたので」



クルーゼの言葉に敬礼をしながらアスランは答えた。
もちろん、気になることとはキラから聞いていたヤマト夫妻の事故死についてである。


アスランはMOを専用の端末に接続すると、中央にある画面に映し出されるように設定を始めた。



クルーゼ隊メンバーはアスランのプログラミング能力の高さを知ってはいたが、
ハッキングできるほど情報処理が優れているとは思いもしなかったことであった。



「・・・これは・・。 さっき言っていた方のご両親のことですか?
・・・・キラさんが一世代目なのでしたら・・この方たちは『ナチュラル』ですよね?」

「そうだ。 しかし、能力的には俺たちと同等だったと思うよ。
なにせ、『ナチュラル』嫌いの父上が信頼していた人たちだから。
それにこの人たちには俺は随分、お世話になったよ。
月に引越しをする以前から父上たちは忙しくてね。 屋敷に俺だけってことは日常茶飯事だったんだ。
そんな時、母上の友人でありキラの母であるカリダさんが俺の面倒も一緒に見てくれたんだ。
・・・姉弟のように育ったよ。 キラとは。
まぁ、キラは俺より5ヶ月だけ上だからいつも『僕がお姉ちゃんだからね!』って言っていたな」



アスランは昔のことを思い出しているのか、今まで見たこともない穏やかな表情で幼年時代のことを話し始めた。


そのことはアスランの父と同じ職場にいるクルーゼ隊メンバーにも覚えのある感覚だったため、
アスランがいかに彼らを大切に思っていたということが伺えた。



「やつらはどこまで卑怯なんだ!!
・・・やつら、その同胞を月基地に着き次第、人体実験にでもするつもりか!?」

「・・・・考えたくはないが、そうだろうな・・。 この記録がそのことを裏付けている」



イザークの言葉に、辛そうな表情をしながら予測を立てていたアスランは呟いた。
そんな彼の表情を近くで見ていたニコルもまた、辛そうな表情を見せた。





(・・・当然・・・ですよね。
自分の大切な人がそのような目に合うだなんて、想像するだけでも耐えられませんから・・・)




「隊長、目標・足つき、捕捉いたしました! 目標まで、1800!」

「・・・直ちに、出撃の準備を。 今回の戦闘は、民間人の同胞が乗る『ストライク』の捕獲だ。
イザーク、ディアッカは足つきの足止めを。 その隙にアスランとニコルで捕獲。 ・・いいな?」



クルーゼはデータを装置から取り出すと、目の前にいた部下たちに命令を下した。



「「「「はッ!ザフトのために!!」」」」



4人はそれぞれの思いを胸に、敬礼をした。





(・・・絶対、キラをあの冷たい場所から助けてあげるからね・・・・・・・)





アスランは、未だ大天使という名にベールをかけられた悪魔に囚われている
彼の天使のことを思っていた・・・・・・。






ちょうどその頃、AAのブリッジでは艦長、副艦長がとあるデータを見ながら話し込んでいた・・・。

「・・・あの“化け物”のおかげでここまで無事にこられましたが・・・・。
そろそろ、処分をなさっては? 後は、月基地へ向かうだけですから。
・・・・我々にはあのGシリーズは扱えませんし・・・。
どうせですから、アレを的に敵の艦・・・ナスカ級を落としては?」

「そうね・・。 確かに、この距離からであれば今まで生き残ってきた私たちだけでも十分、逃げ切れる距離ね。
ナタルの言うととおり、次の戦闘で『ストライク』を的にしてナスカ級を沈めるわ」



副艦長・・・ナタル=バジルールと艦長・・・マリュー=ラミアスは、
この艦を守っている1人の民間人であるはずの少年のことをただの駒としか考えてはいなかった・・・・・。






ヴェサリウスからアスランの乗る『イージス』。
ヴェザリウスの隣艦であるガモフから『デュエル』、『バスター』、『ブリッツ』が出撃していった。



「イザーク、ディアッカ。 落とさない程度に攻撃を加えろよ。
隊長が言うにはあの艦には・・・仲間がいるらしいからな」



アスランは、今にもAAを落としそうな勢いのイザークに注意を呼びかけた。
出撃する寸前に呼び止められた彼らに、クルーゼはとんでもないことを4人に伝えた。



「あの艦には2人ほど仲間が乗っている。 その者たちを回収するために、一度足つきを捕獲する」



スパイの1人は、未だ見たことのないこの隊の副隊長だということであった。




《分かっている! お前たちはその『ストライク』の捕獲に専念しろ!!》


《そうだぜ、アスラン? そのお姫さんはお前に助けを求めているんだろう?
だったら、その期待に応えろよ》

2人は通信画面にそれぞれの顔を映し出し、その言葉を残してAAのいる方向へと向かっていった。




《そうですよ、アスラン。 僕たちは『ストライク』の保護を専念しましょう?
・・・イザークたちは大丈夫です。
アスランが『イージス』で組み付いたら僕は、イザークたちの支援に向かいますから》




尚不安そうな表情を見せていたアスランに対し、
ニコルは苦笑いを浮かべながら自分たちの目的をアスランに知らせた。



彼が一番すべきことは『ストライク』・・・最愛ともいえるキラの救出である。



「・・・そうだな。 早く、キラをあの鳥籠から開放しよう。 ニコル、行くぞ!!」


《はいッ。 ・・・後ほど、キラさんに自己紹介させてくださいね》


「あぁ。 ・・・落ち着いてきたらになるだろうが」



先ほどよりも落ち着いた顔をニコルに見せた。








2006/01/17

修正
2007/03/31















3話目の更新です。
今まで【制裁】の強化月間だったため・・・
リクエスト関係を後回しにしてきたツケが回ってきました・・;
今回、前半部分はアスランとキラの回想シーンとなっています。
・・・・漸く、漸くクルーゼ隊が動き出しました!
ボチボチ解消していけるように頑張りますb