「シン=アスカ・・・・何を勘違いしている? あの放送で流された情報は全て本物だ。
証拠だって、全て揃えてある。 ・・・あの人は、俺たちの地雷を見事に踏んでくれたのさ。
キラに危害を加えようとし、あまつさえキラとラクスを亡き者にしようとしたヤツを俺たちは許さない。
・・・・ニコルから知らされたよ。
お前たちは俺たちが任務のために宇宙へ行く時、軍港へきていたみたいだな?
その時、俺の最愛であるキラに敵意を向けた・・・・・。
なぜ、あったこともない彼女にお前が敵意を向けるんだ」
貴様たちが何を考えているかなど、早々どうでもいい。
俺がお前を許せないのは、ただ1つ。
お前の思い込みと逆恨みで、罪もないキラに敵意を向けたことだ。
キラは、先の大戦で未だに癒えない傷を負っている。
身体の傷は癒えても、心に深く刻まれた傷は、今も尚・・・キラを傷つけている。
先の大戦で何が起こったかを知らない・・・守られるのが当然だと勘違いしていたお前に、
俺たちの何が分かるというんだ?
Adiantum
― 新議長、就任 ―
アスランたちは議会の廊下を抜けると大きな扉の前に立ち、その扉を開いた。
中にはアイリーンやディアッカの父・ダットとニコルの父・ユーリの姿もあった。
「皆様もこられたのですの? お帰りなさいませ、イザーク。 貴方方にお怪我がなくて安心いたしました」
「あぁ。 ラクスとの約束でもあり、キラとの約束でもあったからな」
ラクスはイザークたちの姿を見ると安心した表情を見せ、イザークもまた若干雰囲気を柔らかくした。
「君たちをココに呼んだのは理由がある。
先ほど、議会議員全員一致でギルバート=デュランダルを昨日付けで議長の座から解任することが決定した。
そして、そのため空く議長席をここにいるラクス=クライン嬢へお渡しすることが決定した。
この決定、受けてくれますか?」
「私が? ・・・未熟者ですが、精一杯国民の皆様のために頑張りますわ」
「ありがとう。 貴女には残りの2席ほど空いている議員の空席を任命することが出来る。
この人材は貴女が信頼に値すると思う者を任命すること。 今すぐとは言わず、じっくりと考えてください」
ラクスの決意のある瞳を見据えたアイリーンはニッコリと表情を柔らかめ、ラクスに一礼した。
この日、史上で最年少議長が誕生した・・・・・・・。
その頃、議会専用の会見室にいるミーアと自室にいたデュランダルを上からの命令で、
会議室へ連行していたザフトの一般兵たちだったが背後から忍び寄る影に気付かず、
気付いた時には連行していた2人を背後から現れた者たち・・・・
今期の“紅”服を身に纏うシン=アスカとルナマリア=ホークであった。
今となっては最新鋭に乗艦するに乗艦する『ミネルバ』クルーたちは、
デュランダルの私兵へと成り下がっていたのだった・・・・。
その知らせを聞いたラクスは、ニッコリと隣にいたイザークたちに微笑を見せた。
「・・・・では、新議長である私からイザークたちに勅命を下しますわ。
現在、逃亡を図ろうとなされている4名をココへお連れになられてくださいませ。
捕獲の際、抵抗がやまないのでしたら・・・仕方がありませんわ。 威嚇射撃は許可いたします。
・・・これ以上血を見たくありませんわ」
「「「了解」」」
ラクスの言葉にイザークたち3人は頷きを返すと、そのまま騒動の起こっている廊下へむけて走り出した。
振り返った際に視線が交差したアスランは、キラに対して安心させるようにニッコリと微笑を見せた。
アスランたちの向かった廊下では3人を取り押さえようとした一般兵たちが所々倒れていた。
「・・・・ふん。 緑の奴らの成績も落ちたと見える。
・・・まぁ、貴様らのトップだった者があいつらならばその下であるお前たちの成績にも変動があるか・・・」
イザークは倒れている兵たちが新人であることに気付き、冷静に判断した。
「・・・俺はシン=アスカの相手をする。 ディアッカはルナマリア=ホークを。
イザークはあの狸を捕獲しろ」
「リョーカイ」
「言われなくともヤツは俺が捕らえる。
ラクスを二度も亡き者にしようとし、あまつさえ彼女の偽者を仕立て上げて民衆を騙していた張本人だからな」
アスランは再び冷気を身に纏いながら、自分たちの目標を定めた。
そんなアスランとタメを張るくらいの冷気を放つのは、イザークである。
彼はあまり冷気を纏うことはないのだが、
彼にとって最も大切なラクスを二度も亡き者にしようと企んだデュランダルの計画に関して
今までの怒りがすべて爆発してしまったのである。
そのため、アスラン並みの冷気をその身に纏っていた。
目標を定めた彼らの動きはそれこそ電光石火の如くである。
アスランとディアッカが同時に走り出し、
一般兵の相手をしていたシンたちに近づき、一気に間合いを詰めた。
アスランたちの行動が目で追いつかなかった彼らの前に各自の攻撃が入る。
アスランは前から、MSや白兵戦でも武器を使用する戦闘以外では足技が主な戦闘術であった。
そのため、片足と両腕を軸にしながらの攻撃や的確に急所を狙うために必殺技を繰り出した。
最初はギリギリながらも必死に交わしていたシンであるがアスランに叶うはずもなく、
一撃必殺技をモロに食らってそのままあっけなく廊下の大理石へ沈んだ。
シンが失神している頃、その隣で戦闘を繰り返していたディアッカとルナマリアも勝負がついていた。
「・・・お前たち如きが俺たちに敵うわけがないだろう。 大人しく連行されるんだ」
アスランは変わらずの冷たい視線と冷たい声・・・・そして、
冷気を纏う雰囲気に周りの兵士たちも固まった・・・。
その中でも直視しないことを心がけているディアッカとアスラン並みの冷気を放つイザークは、
淡々と自分に課せられたことを遂行していた。
「さて・・・。 無駄な抵抗をしないで、大人しく来ていただきましょうか?
デュランダル議長・・いえ、元議長殿?」
イザークはアイス・ブルーをさらに冷たく細めると目の前にいるデュランダルを見据えた。
そんなイザークの忠告に耳を貸さなかったミーアに対し、
イザークは表情を動かさずに腰にあるホルダーに装着されている銃を取り出し、威嚇射撃を行った。
「きゃっ」
「・・・動くな。 次に動けば、今度は貴様の右足を撃ちぬく」
イザークはアスランがアカデミーの際熱を出して本気を出さなかったことによって首位と思っているであろうが、
本人の努力もあるといまだに気付かないイザークである。
彼らはアスランたちと同じく命中率が歴代の中でも異様に高かった。
照準は既にミーアの右足に合わせられていた・・・・。
そのタイミングを見逃さなかった一般兵たちは一瞬の隙を見せたデュランダルとミーアを取り押さえた・・・・・・。
彼らを取り押さえたアスランたちはそのまま引きつれてラクスたちのいる会議室へ向かった。
「ご苦労様ですわ。 ・・・デュランダル元議長殿を政治犯収容の牢獄へ。
私の顔へ整形したこの方を元の顔に戻してください。
・・・・いつまでの私の偽者として民衆を騙していた方と同じ顔はいやですわ」
「「了解いたしました」」
ラクスはニッコリと一般兵に微笑みかけた。
その微笑をみた一般兵はラクスの命令に従ってデュランダルを政治犯収容所へ連れて行き、
ミーアをダットがアプリリウスに呼び寄せた専門医のところへ連れて行った。
ラクスたちの前には彼らと一緒に拘束された2人の“紅”服を身に纏ったザフトのサラブレッド・・・・本来ならば、
ミネルバのクルーたちと一緒に待機中である2人の姿がある。
「・・・さて、お前たちはなぜ軍からの命令を無視してあの場所にいる?
お前たちはミネルバのパイロットたちだろう。 ミネルバは確か、待機との命令がいるはずだが・・・?」
「お前たちがしでかしたのは、軍法会議モノだ。 大人しく理由を話せ?
なぜ、国家反逆者であるヤツを逃がそうとした?」
イザークとディアッカは冷たい声で、目の前にいる2人に話しかけた。
特に、イザークは今までにない冷気を全身に纏っている。
彼は2年前のサラブレッド・・・・“紅”服を身に纏う者たちの中で一番“紅”服に誇りを持っていた。
彼のプライドと誇りは彼らの中で最も高い。
そんな彼が目の前にいる者たちの行動を許すはずがなかった。
「なんだよ! 何で俺たちが軍法会議にかけられなきゃいけないんだ?
かけるんなら俺たちじゃなくてあんたたちだろ!」
「私たちは、議長をお助けしただけです。 なのに・・・議長を政治犯収容所だなんて! 酷すぎます!」
未だ状況の理解できていないシンたちは、自分たちが正しいと主張した。
そんな彼らにため息をつきながら見ていたのは柱に背を預け、キラを抱き締めていたアスランであり、
そんなアスランと同じように傍観しているのはかつて仲間だったレイであった。
「・・・・相変わらず、自分の考えが正しいと思っているみたいですね・・・・・。
あの考えが時には危険だと、以前忠告したんですけど・・・・」
「レイが気に病む必要はない。
忠告をされて尚、自分が正しいと・・・自分の行いが全て正当だという考えを改めなかったヤツが愚かなだけだ」
レイは少しはなれたところで喚くシンと似たようなことで喚いているルナマリアに対し、
彼らに見せたことのないような冷たい視線を向けた。
そんなレイに対して咎めないアスランもまた彼らに冷たい視線を送り、
隣にいるレイが少しだけ落ち込んだ様子を見せたと感じたキラは、
アスランの腕の中にいながらも懸命にレイの頭を撫でた。
そんな一部でほのぼのとした空気が流れている会議室だが、
イザークを中心としてブリザードが吹き荒れているために室内の気温は極端に下がっていた・・・・・。
「・・・・貴方方はあの放送を見なかったのですか? アレほどまでに証拠が揃っている。
この戦火を広げようとしたのが誰か、それは明白。 貴方方のやったことは、軍人として恥じるべきこと。
上からの命令を無視し、あまつさえ反逆者の逃亡を助けるとは。
“紅”服を纏う者として何たる失態ですか?」
それまで黙って聞いていたアイリーンは、視線だけで射抜けるほどの強い眼差しでシンたちを見た。
シンたちは今まで強い視線に晒されたことがなかったために軍人であるにも関わらず、
ルナマリアは恐怖のあまりに小刻みに震えだした。
「貴方方の軍人である資格はないと判断いたしました。 今回の命令違反は、度が過ぎるものですわ。
監視付の軟禁で釈放など、甘い考えをお棄てなさいな。
軍人である証をただいま、ラクス=クラインの名において剥奪いたしますわ。 この方たちを独房へ。
処罰のほうは、この戦火を鎮めてからにいたします」
「「了解」」
ラクスの言葉に扉前にて待機していた一般兵たちはシンとルナマリアの左右に周り、
その腕を乱暴に取った。
「ちょっと待てよ!」
両腕を拘束されたシンは、最後の足掻きとばかりに目の前にいるラクスに食って掛かった。
「・・・・まだ、なにか?」
「ッ! なんで、俺たちが軍人の資格を剥奪されるんだよっ!
俺たちはちゃんとアカデミーをトップ成績で卒業した! その証でこの“紅”を議長から貰ったんだ!
そんな俺たちがなぜ議長を助けようとしたのに、剥奪されるんだよ! 剥奪されるのは、アンタたちだろ!?」
まだ、自分の立場の分かっていない発言であった。
そんな発言を聞いたイザーク・ディアッカは呆れ返り、
ラクスは先ほどよりもその身に纏う冷気をより一層冷たいものに変化させた。
ラクスは口を開こうとしたが、視線の先にいるキラを見つめ、彼女を抱き締めるアスランに視線を移した。
その視線の意味を正確に理解したアスランは、分かったというかのように頷いた。
「? アスラン?」
キラは、不思議そうに自分の両耳を塞いで目の前にある胸に押し付けた張本人・・・アスランを見上げた。
「ん? あぁ・・・雑音だったらからね。 キラは聞かなくても良いよ?
それよりも、こうやったほうが俺の心臓の音が良く聞こえるだろう? 心配しなくても、キラの傍にいるよ」
「姉様。 雑音なんて聞かなくても良いんですよ? あいつらの言葉は、世界・・・・世間をまったく知らない。
それこそ、自分の世界しか知らない無知な考えの言葉ですから。
そんな者たちの言葉は、
姉様たちのように色々と思案して道を決めてこられた姉様たちにとって雑音しかありません」
アスランとレイは、キラに向かって優しく微笑んだ。
レイの言葉には、さり気に毒が含まれていた。
彼にとって大事なのは目の前いるキラやアスラン、クルーゼである。
シンたちに対してはただのアカデミーで同期だったとしか認識しておらず、友人とも認識していない。
そんな彼らの言葉はレイにとっても不愉快でしかなく、
2年前のキラたちが格闘して選んだ道を知っているから余計に許せないのだろう。
「・・・私から話そう。 このことは、当時艦長を務めたラミアス女史から聞いたことだ。
ここにいるキラは、
かつてナチュラルの友人を守るために我らコーディネイターの軍であるザフトと幾度となく戦った。
そんな時、人道的立場で民間人であるラクス嬢を保護したと言い、
我らの攻撃から逃れるためにラクス嬢を人質とした。
そんなやり方に対して疑問をもったキラは、連合軍の軍人に黙って無断で我らにラクス嬢を返還した。
そして、連合の艦に戻った彼女を待っていたのは簡易な軍法会議。
・・・・人質を無断で返還したとして、会議の結果彼女は銃殺刑と言われたそうだ。
しかし、それを実行しては自艦を守る要がいないということで軟禁という形になったとのことだったが・・・・・」
クルーゼは静かに語るように、キラのトラウマとなっている過去を話した。
その話は本人には聞こえないようにアスランが塞いでいるため、
本人は首を傾げつつ空気を悟った様子だったが、
その様子に気付いたアスランが賺さずニッコリと微笑んで安心させていた。
そんなキラたちに対し、憎しみを込めて見つめていたシンたちを見据えたラクスは、小さくため息をつき、
背後に控えていた一般兵に命令し、強制的にシンたちを独房へと連れて行かせた。
2007/12/29
20万ヒット記念のリクである後日談の為、早期完結を目指しております;
今回は・・・・アスラン、最強伝説(違)
レベルの差を思い切り見せ付けてますねv
まぁ、本編でもアレだけボロボロにされれば・・・ねぇ。
逆に、「天晴れ!」ですよw
レイは、アスランとキラがクルーゼさんと同じくらい大好きですv
よって、アスランたちを一方的に敵視するバカが嫌いですw
|