「レイの認識は正解ですね・・・。
僕はその場にはいなかったのですが・・・偶然、イザークとディアッカがその場に居合わせたらしいです。
・・・ディアッカがイザークを宥めるのに苦労したそうですよ」
我々の中で、一番ラクスの歌を気に入っているのはイザークです。
そんな彼の前で、あんなテンションの高い曲に変えられては、さぞお怒りになっていたことでしょう。
落ち着いた曲だからこそ、民衆の心に響いたのですから。
まぁ、まったく歌い方の違った方を本物だと、そう認識した人たちも問題があったとは思いますがね。
ラクスは“歌姫”であって、“アイドル”ではありませんから。
Adiantum
― 大魔神の情報網 ―
数時間も経たずにこの情報を掴んだニコルは、呆れたようにため息をつきつつ、
向こうから飛び込んできた愚か者たちを盛大に歓迎するために、
様々な罠を嬉々として黒いオーラを垂れ流しながら作り出していた・・・・。
一方、アスランたちを乗せているセシリア艦内でも
ニコルに負けず劣らずの真っ黒いオーラを垂れ流している人物がいた。
オーラを垂れ流している人物・・アスランは、
本国にいるニコルに定期的に仕入れた情報を送信してもらうように手配しており、
議長の考えは彼の元にも届いていた。
「あぁ〜あ。 馬鹿なことを考えたな、あの狸」
「・・・確かに、俺たちは本国にはいない。 ・・だが、本国には消して怒らせてはいけない人物がいる」
「ニコルさん、嬉々として罠を作っていますよね・・・・」
アスランからこのことを知らされた彼らの発言である。
・・・付き合いが長いイザークやディアッカはともかく、
短いはずのレイでさえニコルの性格を結構把握している辺り、アスランに懐くことのできる要因でもある。
(アスラン、ニコル、レイは結構同属)
もちろん、彼の元に送信されたデータ(情報)はコレだけではない。
アスランたちを見送った港・・ニコルの感じた、彼らの視線に関してもしっかりと渡っていた。
「・・・キラ姉様に敵意的な視線?」
「ニコルが言うんだ。 相当なものだったんだろう。 ・・・だが、さすが姫! 全然気付いていないんだな」
「相手も一応、軍人だからだろう? それに、ニコルが防壁となったようだ。
・・・やはり、トリィとハロの攻撃力を上げておいて正解だったな・・・」
「「!!」」
アスランの発言にレイは首を傾げ、彼の言うことを正確に理解したディアッカとイザークは一瞬にして固まった。
「・・あらら・・・。 それは・・・・ご愁傷様・・・?」
「・・・・まぁ、ラクスとキラの安全が確保されているんだ。 ・・・・あまり、周りに被害が出ないようにだな?」
「当然だろう? ピンポイントで狙えるさ」
「「・・・・・・・」」
2人の冷や汗をかきながらの発言に、当然のように答えたアスランに対し、2人は今度こそ沈黙してしまった。
「・・・しかし、いい度胸だな。 シン=アスカ。 キラに逆恨みをするだけでなく、今度は敵意を本人に向けるか・・・・・」
「・・・シンですか。 ニコルさんが言っている姉様に敵意を見せた人物とは」
「あぁ。 ・・・まぁ、【プラント】にいまだいるみたいだからニコルたちに任せるさ。 ・・・この狸議長たちの件もね」
アスランはニコルからの報告書のデータを見ながら冷たい視線を送った。
「・・・・その前に直接手を出した瞬間、ハロたちの攻撃に遭うんじゃねーか?」
「だが、それこそ自業自得だぞ」
「それもそうだな」
スランの発言に首を傾げながら問いかけたディアッカだったが、
イザークの言葉に納得したのか、それとも今までの経験上のことなのか、とにかく納得したとばかりに頷いた。
「・・・・まぁ、今俺たちが最優先することはこの任務を早期に終わらせて本国に帰ることだ。
・・『ミネルバ』が取り逃がした例の連合が乗っているという艦、情報は得られたか?」
「それについてはニコルから受け取っている。 その艦、とんでもないものが搭載されているようだ。
・・かつて、ニコルの乗っていた『ブリッツ』に乗せてあったデータがな・・・」
「!! まさか、『ミラージュコロイド』か!?」
「そのまさかだ。 ・・・あっちもあっちで条約違反をしていたということだ」
『ミネルバ』が連合の艦と戦闘をしている時、
偶然にも戦闘内容を艦内で見ていたアスランは、その時のことを思い出しながら2人に答えた。
「・・・アスラン兄様。 ラゥが言っていた俺にもわかる兄様たちが捜している人、その艦にいるかもしれません」
「本当か? レイ」
「はい。 確かに、あの時の戦闘の際感じました。 MAの機体に乗っている隊長格の人物でしたが」
レイはその時の戦闘を思い出したのか、どこか遠い目をしながらアスランの問いかけに答えた。
・・・MAか・・・。 その時の戦闘データ、こっちに回せるか?」
「はい。 以前兄様が戦闘の際にパターンを取るようおっしゃられていたでしょう?
そのためにその時の戦闘データを俺の機体に積んでいます。 ・・・その部分だけ抽出していきますね」
レイはアスランの言葉に頷くと、急いで自分の機体のある格納庫へと走っていった。
その様子を黙って見ていたディアッカたちは2年前、
たった1機のMAでザフトと戦った《エンデュミオンの鷹》との異名を持つ彼らの探し人である
ムゥ=ラ=フラガと同一人物なのかを調べるため、
以前自分たちが取っていた戦闘データを回している最中であった。
「・・・・レイの言っていることが本当ならば、戦闘データを照合したほうが早いだろう?
たった2年で戦闘パターンが変わるとは思えんからな。 戦闘は所詮、個人の性格と同じだからな・・・・」
イザークは淡々と作業を進めながら、自分の感じたことを呟いた。
その呟きを聞いていたディアッカは、どこか苦笑いを浮かべながらイザークの作業の補佐をしていた・・・・・。
レイが先日の戦闘データをアスランたちのいるブリッジに持ってきた時、ブリッジは騒然としていた。
イザークたちが2年前の戦闘データをこちらに転送していた際、
アスランは艦の熱源感知の範囲を広げていたためである。
「隊長! 前方5000に熱源1発見!! これは・・・艦クラスです! 先ほどのデータと照合します・・・・・。
照合の結果、【ボギーワン】と一致!!」
「・・・そうか。 全艦、コンデションレッド発令。 これより、この艦は任務である【ボギーワン】の捕獲を開始する。
こちらの攻撃範囲内まで敵に悟られないよう、気をつけろ。 向こうは、『ミラージュコロイド』が搭載されている。
悟られたらそれが展開するからな!! ・・パイロットは、現地点では待機。
攻撃範囲内になり次第、我々は攻撃を開始する」
「「「了解」」」
イザークの言葉に、アスランたちはそれぞれの表情で頷いた。
「・・・兄様、こちらのデータです。 ・・・一応、皆さんの分としてコピーしてきました」
「ありがとう、レイ。 ・・・・イザーク、ディアッカ。 このデータをOSに組み込んでおけ」
「「あぁ」」
アスランはレイから受け取ったデータをイザークたちにも渡し、
自分も『アセリア』に乗せている機体・・・・『セイバー』のある格納庫に向かい、
レイから渡された戦闘データをOSに組み込んだ。
一方、後方にジュール隊の艦である『セシリア』が後を追っていることを、
未だ感知していない連合の最新の新鋭艦である【ボギーワン】こと『ガーティー・ルー』のブリッジに
座っている仮面の被っている隊長格の人物は、ため息をつきながら艦長席に身を沈めていた。
「・・・・なぜ、地球での休暇が急遽取り止めになって、月基地にある兵器の調整を見なければいけないんだ?
・・・・あの子たちの『調整』だってまだ途中だったのに」
「大佐。 それは我々もですよ。
・・・・彼らはどの道、この艦に搭載されているあの装置が無いといけないのですから、それは仕方が無いことだと」
「・・・分かっているさ。 だが、この任務は別に俺じゃなくてもいいんじゃないかと思ってね」
仮面を被っている青年はため息をつきながら、
地球基地で手渡されたデータの確認を取りながら持ち場を離れ、ブリッジから出て行った・・・・・。
彼らはまだ気付かない。
彼らを追ってきたザフトが、すぐ後ろにいることを・・・・・・。
宇宙で様々な思惑が飛び交っている頃、
ザフトの戦艦に登場している新旧の紅服4人の知人・幼馴染であり、
唯一の人と認識されている至上の宝石たちが彼らの還りを待っている【プラント】本国では、
とある屋敷の一室にてどす黒いオーラが充満していた。
「・・・・ココにトラップを作って・・・・あっちにはアレを接続しておきますか。
・・・・こんな幼稚なもの、引っかかる大人もいるもんですね。
・・・・まぁ、あんな馬鹿げたことをお考えの人たちですから容赦は要りませんか」
どす黒いオーラの中心・・・・そのオーラを発している人物は、
クスクスと冷笑ともいえる笑みを浮かべながら目の前の画面に視線を向けた。
『セシリア』で、どす黒いオーラを発する人物であるニコルの定期連絡を見ていた彼らが予測したことは、
よい意味でも悪い意味でも的中していることであろう・・・・・。
最も、彼をよく知る人物からすればその予測は予想ではなく、
これから確実に起こる出来事だと認識されているが。
(特に、アスラン・イザーク・ディアッカの幼馴染たちは経験済み)
部屋中に真っ黒いオーラを充満させながらニコルは、嬉々と様々なところにトラップを仕掛けた。
「・・・ラクス嬢たちは忙しいみたいだね」
「・・・・うん。 兄さまは、大丈夫なの?」
「私かい? 一応、隠居している身だからね・・・・・。 そうだね。 しばらくの間、出かけようか」
「うんっ」
ハロと戯れていたキラであったが、流石に暇になったのかどことなくつまらなさそうな表情を見せていた。
そんなキラに気付いたクルーゼは彼らが何をしているのかを承知の上でキラを少しの間だが連れ出すことを決め、
彼らが心配しないように伝言を残して屋敷から出た。
キラたちが出ることに対して、キラの傍にアスランの作ったトリィとグリーンハロがいることを確認したラクスは、
ニッコリと微笑みながら「お気をつけて」と言いながら送り出した。
万が一、危険な目にあったとしてもキラの傍にはレベルが上げられた護身用ペットロボ(?)と2
年前にはザフトの花形とも言われたクルーゼ隊を率いていたクルーゼがいるのだ。
そのことに信頼を寄せているラクスやクルーゼの部下であったニコルは、キラの身の安全をクルーゼに託した。
「キラさんのことは、クルーゼ隊長に任せても大丈夫ですね。 ラクス、そちらは如何です?
こちらは、ある程度とラップを仕掛けることが出来ましたよ。
・・・・・しかし、アレくらいのセキュリティーでよく今まで軍事機密を守れましたね」
「・・・それを言ってはいけませんわ。 守られると思われているからこそ、強化しておられないのでしょう。
・・・・ですが、あの方々のセキュリティーはニコルには敵いませんわ。
・・・・最も、キラやアスランにとっても簡単に侵入できそうですが」
「ついでですから、プログラムも弄っておきました。 ・・・・まぁ、解読できたとしても彼らには修復は出来ないでしょうね」
ある程度の作業が終わったのか、ニコルは黒い笑みを浮かべながらラクスに話しかけた。
ラクスもまた、ニコルの微笑みに劣らないほどの黒い笑みを浮かべたが、
その場に彼女たちの笑みに震える者や咎める者はいなかった・・・・。
ニコルはハッキングした時に入手したデータを縮小するとラクスに手渡し、
その中からこれから使用する部分だけを取り出すと再び別のものに写した。
「これは・・・先ほど言われておりましたことですの?」
「えぇ。 ・・・またあの人はどうしょうもないことを計画しているようですね。
最も、こちらに筒抜けという事は、気付いてはおられないようですね」
ニコルはデータを確かめながら、嘲笑うような笑みを見せたがラクスはそんなニコルを気にすることなく、
淡々と作業を進めた。
「・・・・これで、必要なデータは集まりましたわね」
「えぇ。 ・・後は、あちらから引っかかってくれるのを待つだけです」
ニコルは作業を終えたデータに対して厳重にロックを掛け、彼らしか知らない場所へ移動させた。
「ニコル? 彼らが来るとしたら・・・どのお屋敷に参られますの?」
「念のため、僕名義で借りている場所ですよ。
このお屋敷やアスランたちのお屋敷だと、キラさんが悲しむと思って・・・ココと同じほどの広さを買い取りました。
もちろん、セキュリティーを弄っていろいろとトラップを仕掛けましたけどね?」
「まぁv それでしたら安心ですわv 先ほど見せていただいたデータによりますと・・・決行の日は・・・・・」
ラクスとニコルはキラたちが戻ってくるまでの間、これから行われる計画の最終チェックを行っていた・・・・。
2007/12/01
連続更新です。
今回、久々に連合側がチラッと登場しましたねv
オーブと連合は同盟を結んでいますが、
結んだ時の責任者はネオさんではありません。
彼、地球降下せずにそのまま宇宙にいましたからv(ザ・捏造)
・・・そうしないと、辻褄が合わなくて;
キラたちがプラントにいること自体、捏造なので・・・開き直りましたv
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