| 「あぁ。 俺の居場所は、キラのところだけだからね?・・キラが平和で静かに暮らせるように俺は軍に戻った。
 だから・・・キラには少しだけ辛い思いをさせるだろうけど・・キラがここにいてくれるだけで俺は頑張れる」
 
 そう。俺が再び剣を手に取ったのは、ほかでもない・・・・。
 君を守る為。
 剣を取るということは、多くの十字架を背負う覚悟がいることだ。
 だが・・・、俺は君を守る為ならばその重荷にも耐えてみせる。
 君をこの手で守ることが、俺の全てなのだから。
 
 
 
 
 
 
 
 
 Adiantum― 終幕への序曲 ―
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 それから3日間、彼らの日常では平和な時が静かに流れた。
 世界は再び二分されようとしているが、彼らの間ではそのようなことがなかったかのような日常が過ぎていた。
 
 
 
 暇を見つけたニコルがザラ家に訪問し、その際にレイも一緒に連れてくることもあった。
 彼らはお互いがピアノを弾くことから意気投合をし、
 休暇の時は2人で音楽について話すことが多くなったと彼の保護者であるクルーゼが
 戦時中には見せなかった微笑を浮かべ、アスランたちに話していた。
 
 
 クルーゼは、戦後軍から離れ、レイと一緒に静かに暮らしていた。
 しかし、戦火が再び世界に広がろうとした時、レイがアカデミーに通うことを決意しクルーゼはそれを止めなかった。
 
 だが、先の大戦で心に傷を負ったのはキラやアスランだけではなかったらしく、クルーゼ自身も傷を負い、
 今まで休養を取りながら静かに傷を癒していた。
 
 
 
 「・・・アスラン・・・無事に、帰ってきてね・・・?」
 「もちろんだ。 ・・俺が、キラを残して死ぬはずがないだろう?」
 
 
 
 キラはザフトの港・・・『セシリア』の前で定時になるまで、アスランの元を離れないと事前にラクスたちに話していた。そのことはラクスたちも承諾し、ラクス自身自分の婚約者の元へ向かった。
 
 
 
 「イザーク、無事に私の元へお帰りくださいませ」
 「もちろんだ。 ・・・大丈夫だ。
 ミネルバが先日取り逃がした目標が再びこの宇宙に現れたと言う報告を受けただけだ。
 その任が終われば・・・しばらくは休暇が取れる」
 
 
 
 イザークは心配そうに自分を見つめる婚約者にめったに見せない笑みを浮かべると、優しく頭を撫でた。彼女の下ではピンク色のハロが飛び回り、『ハロ、ハロ』と叫んでいた。
 
 
 
 「大丈夫だよ、歌姫、姫。 俺たちがそう簡単に殺されるわけがないだろう?」
 「だけど、みんな無傷で帰ってきてね? 絶対だよ?」
 
 「・・・キラ姉様、大丈夫ですよ? ちゃんと任務を終えてこの場所に帰ってきます。
 姉様に久しぶりにお会いできたんだ。 まだ、たくさん話したい事が残っているのだから・・・」
 
 「うん。 今度の休暇にいっぱいお話しようね?」
 
 「はいっ」
 
 
 
 キラは自分よりも高い‘紅’を身に纏っているレイにニッコリと微笑むと、レイは嬉しそうに微笑みかえした。レイの返事とともに定時の時刻を知らせるチャイムが鳴り響き、
 アスランたちは自分たちを見つめるキラたちに微笑を返すと、
 そのまま振り返ることなく『セシリア』に入っていった・・・・。
 
 
 
 
 
 その様子を見ていたのは、彼女たちだけではなかった。
 本来、この任務を言い渡されていた『ミネルバ』のクルーでありMSのパイロットたちであった。
 彼らは『セシリア』に乗り込んだレイと同期であり、同じMSのパイロットだった。
 
 
 
 「・・・レイ、あの人たちと知り合いなんだ」
 「みたいね。 『ミネルバ』で見たことない顔をしていたもの」
 
 
 
 黒髪に赤い瞳を持つ少年は赤髪の少女に話しかけた。しかし、彼の目にはザフトでも有名な英雄・アスラン=ザラの婚約者に固定されていた。
 
 
 
 彼らは知らない。
 アスランは本来、『セシリア』ではなく『ミネルバ』へ配属命令が出ていたと言うことを。
 正式に言われる前に彼が『フェイス』の権限で『セシリア』へと移ったことを。
 
 
 
 キラは遠くから見られている視線に気付くことはなかったが、
 キラの隣にいた元軍人・・・ニコルにはバレバレな状態で気付かれていた。
 彼は今回、『セシリア』からの要請がないため、【プラント】に残った。
 本業であるピアニストとしての仕事は当分ないため、時間がある間キラたちのSPをアスランたちから任せられていた。
 
 
 彼は伊達に2年前‘紅’を身に纏っていなかった。
 トップと次席で卒業したアスランとイザークには大差を引かれたが、それは彼らが優秀すぎるからである。
 だが、歴代を見ていてもこの年の‘紅’を身に纏うトップ5の者たちの成績は大変優秀であった。
 そんな彼らの中で3位を常にキープしていたニコルをキラたちの傍に置いておくことに対して、
 アスランたちは不安を感じずに任せた。
 
 一応、キラたちの傍には何があってもいいように彼が製作したトリィとハロたちがいるため、
 万が一と言う事態にはならないが・・・。
 
 
 アスランはこの日のことを思って、キラたちから預かったトリィたちに今までのレベルからいくつかを上げていた。
 直撃すれば死ぬことはないだろうが、瀕死の状態にはなるだろう。
 
 
 
 ・・・・よくても、失神者は続出すること間違いなしだ。
 
 
 
 (・・・・この視線、キラさんに向いていますね・・? ・・・・あの人たちですか・・・・・。彼らは僕たちにとってブラックリストのワーストの方々ですね・・・・。 『ミネルバ』のパイロットさんたち?)
 
 
 
 ニコルは視線の持ち主が彼らの一番敵意を向けている『ミネルバ』のクルーだという事に気付くと、キラに分からない程度に冷たい冷気を発した。
 その冷気は当然、ラクスには分かったが特には何も言わず、遠くから見ていた者たちは気付かなかった。
 
 
 
 「キラさん、僕たちも軍本部へ向かいましょう。エルスマン議員や僕の父が首を長くしてお待ちしておりますよ? きっと」
 
 
 
 ニコルはニッコリと微笑みながら隣にいたキラとラクスに話しかけた。彼らはアスランたちを港から送り出した後、議会のほうに顔を出すようにとニコルの父であるユーリから言われていた。
 ニコルに守られるようにしてキラとラクスはアマルフィ家専用のエレカに乗り込み、軍本部へ向けて車を走らせた。
 
 もちろん、キラに視線を固定したままだった2つの視線の元を軽く睨みながら。
 
 
 
 
 しばらくすると、エレカは軍本部の正門前に着き、ラクスとキラは臆することなく内部に入った。
 警備員はキラをアスランの婚約者だと認めるとチェックなしで内部へと入れた。
 
 
 
 「やっぱり、小父様たちのご用って僕に管理システムのプログラムの依頼?」
 「・・・・多分、それは建前なのでは? キラはお父様たちからも気に入られておりますものv」
 
 「ラクスの言うとおりですよ、キラさん。 ・・・そのついでに依頼プログラムの追加だと思いますけどね」
 
 
 
 心配そうにラクスたちを見たキラに要らない心配だとラクスはニッコリと微笑み、ニコルもまたラクスの考えに賛同した。しかし、以前自分の見たザフトのセキュリティーの甘さを体感しているため、
 その強化プログラムの依頼も可能性があるとニコルは予測していた。
 
 
 
 3人はそれぞれの予感が当たっていると妙な自信を持ちつつ彼らに指定された応接室へと向かった。
 ニコルが応接室の扉を開くと、中に5人の大人たちが彼女たちを待っていた。
 
 
 
 「いらっしゃい、キラちゃん。 ラクスちゃんも大変だったでしょう?」
 「ご無沙汰しておりますわ、エザリア様。 先ほど、イザークたちのお見送りに行ってまいりましたの」
 
 
 
 銀髪の女性・・・イザークの母であるエザリアは、キラとラクスを見ながらパトリックと息子から聞かされたキラたちの状態をこの目で確かめるためにこの場にきていた。
 
 
 ラクスはそんな未来の義母であるエザリアに、ニッコリと微笑を浮かべると港での報告をした。
 
 
 
 「そうか。 ・・・彼らの留守中を狙う輩もいると報告を受けている。・・・まぁ、そのハロたちと君たちの家のセキュリティーに勝てる輩がいるとは思わないが・・・」
 「当然ですよ、父さん。 特にキラさんが暮らしているセキュリティーは並大抵のプログラムではありませんからね」
 
 
 
 自分と同じ髪質・・・父であるユーリの言葉に苦笑いを浮かべたニコルは、パトリックに頭を撫でられているキラに視線を送った。
 
 
 
 「キラちゃん。 早速で悪いんだが・・・このプログラムを改良してもらえるかい?」
 「これをですか・・・? このプログラム・・【プラント】の制御プログラムですよね?」
 
 「そうだよ。 このプログラムは【プラント】の中でも最も重要視されている。
 以前、アスランとニコル君からも指摘があってね。 だが、急がなくてもいいからね?
 ちゃんと休養をとることも大切だよ」
 
 「分かりました。 小父様もちゃんとお休みになられなければいけませんよ?」
 
 
 
 キラはパトリックにニッコリと微笑みながらパトリックから手渡されたプログラムデータを覗いた。一見、暗号にも見えるデータだがある程度の知識を持っているものから見れば、
 そのデータは【プラント】を動かすデータの一部だということがわかる。
 
 
 
 キラはそのデータを受け取ると、再びラクスと一緒にもと来た道を戻った。
 
 
 
 「・・・父さん、ミネルバクルー・・・今期の‘紅’たちですが・・」
 「・・・彼らがどうかしたのか」
 
 「先ほど、港でキラさんに対して凄い敵対心を感じましたよ。
 ・・・・今期の‘紅’を決めたのは、デュランダル議長ですか?」
 
 「そうだが?」
 
 
 
 ユーリの言葉に、ニコルは綺麗な眉をひそめた。そんな息子の珍しい姿にユーリは、息子の背後に不穏な空気があることに気付いた。
 
 
 
 「・・・あの程度の実力で‘紅’・・ですか。アスランがミネルバではなくセシリアに移ったのは間違いではありませんでしたね。
 ここに、今期の‘紅’たちのデータを置いておきます」
 
 
 
 ニコルは机の上にキラから手渡されたデータのコピーを置き、キラたちの後を追うように扉に向かった。ニコルが部屋から出てくると扉の前にキラとラクスの姿があった。
 彼女たちはニコルが来るのを待っていたらしく、ニコルの姿を見つけるとニッコリと微笑んだ。
 
 
 
 「ニコル、お屋敷でお茶会しよう? アスランがね、美味しい紅茶を買ってくれたの」
 「お菓子のほうは私が準備いたしますわv ・・・イザークたちの無事を祈って、兄様もご招待してお茶会を開きましょう」
 
 「そうですね・・・・。 母さんに作っていただいたケーキも一緒にもって行きましょう」
 
 
 
 3人はにこやかに微笑みあいながら本部を出て入り口で止めてあったエレカに乗り込み、屋敷へ戻った。
 屋敷に戻る際、予め持っていた通信機でクルーゼと連絡を取り、屋敷前で落ち合うことを約束した。
 
 
 
 クルーゼはキラとアスランに大変甘く、休暇などの時はキラたちの用事を最優先にする傾向があった。
 それは今も健在であるようだ。
 
 
 
 「ラゥ兄様、ニコルと一緒に待っていてね」
 
 
 天気がいいと言うことで広い庭で茶会を開くことにした彼らは女性陣が何かを準備しに屋敷内に戻り、男性陣は庭での準備にとりかかった。
 
 
 
 「・・・ココ最近の様子、私なりに探ってみた。 ・・・前議長・・パトリック議員からの要請でもあったからね。まさか、君たちも探っていたとは」
 「・・・僕らも上層部の不穏な行動に疑問を感じましたから。
 ・・・まぁ、その情報の信憑性を確信したのでキラさんやラクスを含め、
 【オーブ】で暮らしていらした同胞たちを一気に本国へ保護したんですよ」
 
 「その情報とは?」
 
 「・・・【オーブ】で静かに暮らしていたラクスとキラさんの暗殺・・・それと同時期に計画された【オーブ】の動き。
 後、【オーブ】に亡命したはずのアスランに複隊するように呼びかけたその真意。 ・・・こんなところですね」
 
 
 
 ニコルは若干黒いオーラを垂れ流しにしながら表情には笑みを浮かべ、かつての上司であるクルーゼに報告した。
 
 
 「・・・・彼はいい意味でも悪い意味でも真面目だからね。・・・自身に力があればキラを守るために一直線に突き進む。 ・・そして、暗示に掛かりやすい」
 
 「・・・えぇ。 議長はその手でアスランが複隊するように誘導したんですよ・・・・。 【スペース・コロニー】での出来事。
 彼が避難したミネルバの急な出撃。 ・・・そして、地球降下前に起こった【ユニウスセブン】崩壊での出来事・・・・。
 全て、事前に彼は知っていたみたいですよ。 アスランは偽名を名乗っていました。
 ・・・まぁ、どこかの温室で育った身ほど知らずの者が、
 ついうっかり彼の名前を他人の前で喋ったことも原因ですけどね?」
 
 
 
 クルーゼに向かってニコルは背後にある黒いオーラを隠すことなく自分たちが得た情報をクルーゼに話した。
 
 クルーゼがかつて現議長であるデュランダルと親しかったことはすでに彼らは知っていたが、
 彼はデュランダルよりもキラとアスランを大切にしていることも知っていた。
 
 そのため、自分たちが仕入れた情報を彼に教える前に本当にこちらの味方に付くのかを確かめていたのである。
 
 
 そのことは疑問から確信へと変わり、今では互いに協力をする仲となっていた・・・・・。
 
 
 
 「・・・この辺りでお仕置きしませんといけませんわよね・・・?アスランは、策略に嵌められたと思わせながら複隊を依頼しましたわ」
 
 「なぜまた?」
 
 「イザークたちにもですが・・・、情報収集は中からやったほうが早いのですわ。
 外からではいろいろと制限がされていますから・・・。 イザークは白服で隊長クラスですわ?
 ですが、それでもやはり限界がありましわ。 ですが、アスランは特務隊・・・。 しかもフェイスですわ?
 使えるものは使わないとv」
 
 
 
 ラクスはキラ、アスランと共に【オーブ】で暮らしていたが、本国にいるイザークたちと頻繁に連絡を取っていた。もちろん、そんな記録は公式には無い。
 クライン家が使っていた回線を経由しているため、アスハにはばれない様に連絡を取っていた。
 イザークたちにはニコルがサポートし、ハッキングできるところまでは彼の力を借りていろいろな情報を入手してきた。
 しかし、やはり限界があるのかパスワードせいのこところは解除できなかったらしく、
 その辺りの相談をアスランが【オーブ】から単身【プラント】に渡った時に相談していたのだ。
 
 
 そんな時、議長の思惑でアスランにフェイスの称号と、かつての軍服である紅を手渡されたために、
 その立場を利用することが彼らの中で決まっていた。
 
 元々ミネルバと共に行動するように言われていたが、
 アスランに彼らと行動を一緒にすることを最初から望んではいない。
 【オーブ】に帰還するまでの間ミネルバに滞在していたアスランだったが、
 とてもじゃないが彼らとアスランとは相性が最悪である。
 
 
 無事にやり過ごせたのはそこにレイがいたからであろう。
 
 
 
 「レイが、イザークたちと一緒だと考えると・・・それが一番ホッとしているよ。とてもじゃないけど、残りの2人は‘紅’をその身に纏う資格がないから」
 
 
 
 キラは個人データを見たためか、本人たちが聞いていればプライドが傷つくような事を言った。しかし、彼女の言うとおり彼らは‘紅’を纏う資格がない。
 
 
 
 「その点は僕も同じ意見ですよ、キラさん。・・・2年ほど前まで僕も所属していましたからあまり悪く言うのは引けますが。
 ・・・・‘紅’を纏う者としてイザークほどではありませんがプライドを持っていましたから。
 ・・・彼らの実力で‘紅’を身に纏えるのでしたら、
 それほどまでザフトは全体的のレベルが下がったことを意味しますからね。
 ・・・肉体的だけではなく、精神的のレベルも下がったようですし・・・・・」
 
 「どう言うことですの?」
 
 「・・・以前、ミネルバも含めてですが・・・。
 ラクスたちがプラントに入国するまで、本国で歌姫のコンサートが行われていました」
 
 「そのことはレイから聞いたよ。
 到底ラクスとは思えないテンションで歌を歌い、軍人たちに戦場に行けと促しているように聞こえたと」
 
 
 
 ニコルはキラに微笑みながらも、後ろには黒いオーラを放出していた。しかし、この中でそのことを突っ込むものはいない。
 ラクスはニコル属性であり、キラは元々そのオーラ関係は疎い。
 この中で常識人と思えるクルーゼは自身やキラたちに危害がない場合黙認する傾向があるからである。
 
 
 
 あっさりとニコルの後ろにある黒いオーラを無視した3人は、ニコルに先を促した。
 ニコルの言葉に、彼らと再会する前に養い子から聞いた言葉を思い出したクルーゼは、キラたちに話した。
 
 
 
 「レイの認識は正解ですね・・・。僕はその場にはいなかったのですが・・・偶然、イザークとディアッカがその場に居合わせたらしいです。
 ・・・ディアッカがイザークを宥めるのに苦労したそうですよ」
 
 「・・・イザーク、ラクスのこと大切にしているもんね。
 ラクスの歌、僕たちも好きだけど、僕たちの中で一番好きなのはイザークだもの」
 
 
 
 クルーゼの言葉に肯定の意味で首を縦に振ったニコルは後日ディアッカが零していた言葉を幼馴染たちに話した。その言葉にキラは自分たちの中で感情に正直であり、婚約者を大切に想うイザークを思い出し、ラクスを見た。
 
 
 珍しいことにいつも微笑んでいるラクスが僅かながらも顔を赤らめ、強い眼差しの宿る瞳を隠していた。
 
 
 
 「そうですよね。 【月】にいた頃もラクスがイザークのために歌った曲をどう勘違いしたのか、自分のためだと思い込んだ馬鹿な方がいましたが・・・・。
 まぁ、そんな暴挙をあのイザークが許すはずもなく、後日彼直々にお灸を据えていたみたいですが」
 
 
 
 ニコルはキラの言葉に頷きながら彼らが過ごした【月】での出来事を思い出していた。
 
 
 「・・・恥ずかしいですわ、キラ、ニコル。 ・・・ですが、彼が私の歌を今でも好きだと言ってくださるのならそれは私にとって、救いになりますわ」
 「私も好きだよ? ラクスの歌は。 もちろん、キラの歌もね」
 
 「僕も好きだよ! ラクスの歌、本当に癒されるもの」
 
 「僕も好きですね。 ・・・以前、街頭で映像が流れていましたが。
 ・・・・あの歌を『‘ラクスの歌’だと勘違いしている彼らと一緒にしないでいただこう』って、言いたくなります。
 ラクスの歌は、心を込めて歌っていますから‘癒し’なんですから」
 
 
 
 少しだけ顔を赤らめたままでいるラクスは本当に嬉しそうに微笑を見せた。そんなラクスの笑みを見ていたクルーゼを始めとする彼らは口々に自分たちもラクスの歌が好きだと主張しあった。
 
 
 
 
 
 一方、アスランとキラ、イザークとラクスの合同婚約記者会見が行われ、
 今まで民衆を騙してきた議長と偽者の『ラクス=クライン』はメディアから隠れるため、
 人気の少ないコロニーへ避難していた。
 
 
 
 「・・・・あの場で彼女が出てきたのはちょっとした誤算だったね。・・・あのまま、【オーブ】の混乱の中、あの“化け物”と一緒に亡き者にしようと思ったが・・・」
 
 「・・・・議長、どうしますの? 議長は私が『ラクス』だとおっしゃいましたわ。 そして、アスランは私の婚約者だと」
 
 「そうだよ? 『ラクス』。 彼は君の婚約者だ。 ・・・きっと、彼女たちに捕らわれているんだよ。
 ・・・彼女たちを消して、本来君の傍にいる彼を取り戻そう」
 
 
 
 ・・・愚か者はどこまでも愚か者のようで、議長の巧みな言葉に操られた操り人形はサーカスのピエロのよりも醜い姿を晒した。
 
 また、そんな愚か者を操っているデュランダルはニコルたちに情報を掴まれているとは知らずに、
 アスランたちが任務にて本国を離れているこの隙を突いてラクスとキラの暗殺を企んでいた・・・・。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 2007/12/01
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 最後まで見直して、気付いたこと;・・・運命のサラブレッドたちに対して、
 似たような表現が多く使われてます・・・・・(今更?)
 まぁ、そのことは本編を見ていたときから思っていたことですしね;
 
 世間は既に『ガンダム00』の時代ですが、
 当サイトはまだまだ種と運命に心血を注ぎます!
 
 
 
 
 
      
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