「そうか。 ・・・・カガリ、オーブはお前の育て方を間違えたようだな?
自国を破滅へと導く指導者を育てたのだから・・・」



ただの告発だなんて・・・そんな甘いことを俺はしない。
俺の唯一無二にして、絶対的存在である至宝を亡き者にしようと企てた張本人。
本当ならば、こんな茶番無意味なのだろうが・・・キラが悲しむから、最初で最後の仏心だ。
・・・尤も、俺たちの意見では全員一致で無駄だとの予測だが。
まぁ、近い将来その結果が出る。
俺たちの予測どおりだったら・・・・・・その時は、完膚なきまでに潰してやる。




―――――― 夜明けの唯一無二であり、至宝の明星を奪おうとした篝火。
夜明けに眠りし獅子が、静かに・・・その眠りから目覚める。








Adiantum
    ― 招かれざる通信 ―











ニコルの言葉に頷いたアスランは、
今までにない鋭い視線をモニターに移るカガリに移し、哀れむように・・・見下すようにカガリを見た。




《!?な、何のことだ!!!?》


「事実を言ったまでだが? ここにいるニコルはキラのようにハッキングが得意でね。
オーブの裏側を探ってもらっていたんだ。
・・・お前が代表となった年から、叩けばホコリが出るように、たくさん闇に放り込んでいたみたいだな?
ご丁寧に、キラの暗殺計画もデータとして残っている。 ・・・キラは、お前の妹なのだろう?
どちらが上なのか興味はないが、そう公言しているよな? その妹を暗殺するのか?」



カガリは反論したがすぐ、PCを通してのデータが次々と流れていた。
それを突き止めようとしてもニコルによって何重にも経由しているため、
突き止めることが不可能となっていた。



「・・・僕が管理しているんですよ?そう簡単に突き止められるようにするはずがないでしょう?」


《!!!このようなもの、私は知らない!》


「・・・・認めないんですか? こちらの記録は、あなたの肉声もちゃんと残っているのに?」



潔く認めないカガリに対してニコルは微笑んでいた表情を一転させ、表情・声共に冷たいものを感じさせた。



このような状態になったニコルを止めることは不可能なこととアスランは認識しているため、
止めようとせずにニコルの出すデータに目を通していた。





『お前たち、オーブ近海の島に住むキラを暗殺しろ。 あいつの側にいる者たちもだ。
その際、お前たちの好きにしていい。 ちゃんと殺せばそれでいいんだからな』


『・・・我々が、妹君とご友人を犯してもいいのですか?』


『・・・あの女が私の妹だと? やめろ、虫唾が走るッ!!! あいつはただの泥棒猫だろう!!?
私の恋人を唆しているんだからな!!』


『あの孤児院に住む者、全員・・ですか?』


『そうだ。 この国は連合と同盟を結ぶ。 その際、不穏分子は必要ないだろう?
あそこにはその不穏分子であるマリュー=ラミアスたちがいるのだから』





肉声とは、カガリの行動に反感を持ってしまった副官的立場であるキサカによる協力によって入手したものである。
妹といっていたキラを暗殺すると本人から聞いた時、今まで面倒を見てきたカガリに悲しみ、
キラに対しての償いとばかりにアスランたちに協力した。


この記録は、キラたちには知らせずにそのままニコルが指定したIPへ転送させていた。
マリュー、ラクスだけならともかく、人を人一倍信じてしまうキラに聞かせられる内容ではなかった。




唯一の肉親からこのようなことを言われたと知ったら、
一度戻りかけていた精神が再び崩壊してしまう恐れがあったからだ。



「・・・これでも知らないといいますか? キラさんはあなたから奪ってなんかいません。
元々、あなたたちは付き合っていないのですから。 昔から、アスランはキラさん一筋です。
幼馴染である僕がそう証言しているんですよ?」


《だが、2年前からは私の恋人だ!! この指輪もその証としてもらった!!》


「・・・それが盗聴器だと気付いたから、こうして通信をしてきたんじゃないのか?
お前の行動を監視するために」



ニコルはため息をつきながらデータを流していた。
アスハ家が長年隠し続けていた裏でしてきた数々のデータ集を流していった。



それらすべてのデータは【プラント】、地球間でのメディアやネット上を通じて
多くの民衆に晒されることとなった。



「このデータはすべて、メディア、ネットを通じて多くの人々に見られています。
もちろん、先ほどの肉声も含めて。 ・・・あなた方のいる【オーブ】でも同じ状況です。
そろそろ、認めてはいかがです?」



二コルは最後のキーを押し終えると、モニターに移るカガリに視線を移した。



「アレは盗聴器だ。 俺が本気でお前に渡すとでも? このデータは言い逃れできない。
ちゃんと、本物だからな。 ・・・国民は、どちらの言い分を真実と取るかな?」


《!!?》


「・・・俺は、昔言ったはずだ。 “キラに危害を加えてみろ?それなりの報復を貴様に与える”と。
今回のことでキラを逆恨みしてみろ。 次こそ、俺は容赦しない。
今回は、社会的抹殺だけで見逃してやるんだからな? 次は・・・ない」



普段、淡い翡翠のような瞳だが、このときの瞳の色は氷のように冷たいエメラルドをしていた。
その様子を見ていたニコルや同じ部屋にいたホテルのスタッフたちは、
いかにアスランが怒っているということがわかった。
アスランはそれだけを言うと、
これ以上顔も声も聞きたくないとばかりにカガリが何かを言う前に通信を一方的に遮断した。



「アスラン、後のことは僕にお任せください。 キラさんの所へ行かれたいのでしょう?」

「・・・すまない。 後のことは頼む」

「えぇ。 家のほうへ着きましたら、改めてお茶会でもしましょう。
母がキラさんのためにおいしいクッキーを焼いてくれたんです」



アスランが扉を開くと同時にニコルが思い出したかのように話しかけた。
ニコルの母・ロミナ=アマルフィの作るクッキーやパイなどのお菓子は昔からキラやラクスたちの好物であり、
そのことを覚えていたニコルが母に頼んでいたものである。



「ロミナ小母上のクッキーか・・。 わかった。
すべてが終わり次第、俺たちの家にみんなで行こう。 ・・そこの庭で茶会を開こう」



アスランは昔を思い出したらしく、先ほどまでの重い空気を少しだけ昇華させ、
硬い表情に薄っすらと笑みが見えた。






アスランは今まで通信を行っていた部屋から出るとすぐさまキラの眠る別室へ足を急がせた。
ディアッカによって屋敷に帰るまで目覚めないと言われてはいるが、
眠っているキラが不安がらないようにと思い、足を急がせた。



「アスラン? もう、いいのか?」



慌てて部屋の中にはいると、
アスランの頼み通りその場に止まっていたディアッカが今まで座っていた椅子から立ち、
アスランが開けたままの扉を閉めた。



「あぁ。 ・・・すまないな。 こっちは終わった。
・・・ディアッカ、ニコルとラクス、イザークが戻ってきたら俺の家に向かうぞ。
ロミナ小母上がクッキーを焼いてくれたそうだ。 茶会を開こう」

「茶会か・・・。 久々だな、全員が揃っての茶会は。 了解! エレカ、裏口に回しておくぞ」



アスランの口から『茶会』の言葉が出てきたことに嬉しく微笑み、頷きながら部屋を出ようとした。



「あぁ。 ・・・レイはどうした?」



アスランは部屋を見渡しながら、弟と思っている金髪の少年を探した。



「レイか? さっき、キラの様子を見にきたが・・・なんでも隊長に連絡を入れるって言って出て行ったが」

「・・・そうか」



アスランはそれだけ呟くと再び眠っているキラの栗色の髪を優しく梳いた。
眠っているから意識はないが、
無意識にアスランの存在を感知したキラはアスランが髪を梳いた瞬間、うれしそうに微笑んだ。





しばらくすると、今まで無言を守っていた扉が遠慮深く開き、アスランが探していた少年が入ってきた。



「お帰りなさい、兄さま。 ディアッカさんから聞きました。 ・・・あの人が連絡を入れてきたんですね?」

「・・あぁ。 しかし、レイが心配することはないよ? 言いたいことだけ言って、後は二コルに任せてきたから」



レイは心配そうな表情をしながら兄と慕っているアスランに尋ねた。
公の場では〔アスランさん〕〔キラさん〕と呼ぶが、このようなプライベートでは〔兄さま〕〔姉さま〕と呼んでいる。
アスランはそんなレイに微笑むと簡単に説明をした。
その説明だけでこの場にいないニコルが何をしているのか、
アスランから彼のことを聞いていたレイは手に取るように分かった。



「おっ、そろそろ時間だな?俺は一足先に裏口に回っておく。お前たちも早く来いよ?」

「二コルたちがこちらへ戻ってきたら一緒に移動するさ。
レイ、ラゥ兄さまにザラ本宅へと伝えてもらえるかな? これからみんなで『茶会』を開くことになっているんだ」

「『茶会』ですか?」



ディアッカは左に付けている腕時計に視線を送り、大体の時間を計るとレイと話していたアスランに伝えた。
アスランはディアッカの言葉に返事を返すと、
目の前で首を傾げたレイに苦笑いを浮かべながらこれからの予定を伝えた。



「あぁ。 キラもそのころには目覚めるはずだよ」

「分かりました。 ラゥ、人ごみに酔ったみたいだから外にいました。
・・・俺も一緒にいるといったんですけどね」

「先に挨拶をしておいでと言われたんだな」

「えぇ。 さっき、連絡を入れたらすぐにこちらの部屋へ来るそうです」



2人は微笑みあいながら今まで話せなかったことをほかのメンバーが集まるまで話していた。











2006/09/27・12/10

再up
2007/07/15













・・・以前更新してから随分と間が開きましたね;
リアルでくそ忙しかったことも関係しますが・・・ほかの事で手一杯でした;
・・・原稿は出来ているはずなのに;

改稿前は、この話は2話に分かれていましたが・・・一気にまとめましたv
以前のあとがき(長いので、興味のある方のみ反転)↓
某虐め、第一段階其の一。
某の妄想世界は、全て自己中心です。
他人を思いやることもなければ、尊重すらしない;
甘やかされて育ったため、自分の想い通りになると勘違いしております。
そのため、自分がアスランを好きだから、アスランも自分を好きだと解釈;
他の人に言われても聞く耳を持たず、逆に自分の都合のいいように解釈します;
某、これにより一時退場。
普通の神経の持ち主だったら、
今回のことを悔いて自ら自首するなり、代表を辞職するなりするのですが・・・
生憎、某はそんな繊細な神経の持ち主ではないので(断言)
ブログには書いていませんが・・・次の登場までの間、
結構バカなことをやらかしております;
(どっちにしろ、書く気はない)


実際、書いていません(爆)
今回は、某に対していろいろと鬱憤を晴らしていますので・・・アンチ警報ですが、
元々このサイトで某に優しい要素は一切ないので、苦情等を一切受け付けません。
苦情があるようでしたら、見なければいいだけの話ですし・・・ね?(ニッコリ)