「・・・何を知らないフリをしているのです? あなたも関係していますわよね?
私の替え玉である・・ミーア=キャンベルさん?」
名前が欲しいの言うのなら、差し上げましょう。
歌唱力が欲しいと言うのなら、差し上げますわ。
ですが・・・私が『ラクス=クライン』であることに変わりがないように、
貴女も『ミーア=キャンベル』であることに変わりはありませんわ。
しかし・・・貴女はご自身をお認めになられないのですね。
所詮、同じ名前・同じ歌を私の顔で歌ったとしても・・・それは、
紛い物でしかありませんわ。
ですから、私は許せません。
かつて《癒し》と呼ばれた曲によって、ザフトに属する方々を・・平気で戦場へ送り出す貴女方は・・・・許すことはできませんわ。
Adiantum
― 偽者の正体 ―
昔からラクスのことを良く知る彼らからして見れば、
愚か者・・・ミーアのやっていることはラクスとはお世辞にも言い切れない。
ラクスの歌う歌は全て“癒し”の力を持つものである。
ゆっくりとしたテンポや心に何かを呼びかけるような歌詞。
そして・・・一番の違いはその衣装でもある。
もちろん、彼女独特な雰囲気は決して真似できるものではない。
尚且つ、彼女は先の大戦で一度も市民を戦いに誘うことはなかった。
彼女はただ、平和の歌を歌い、市民に優しく語りかけただけである。
『自分の信じるものは何ですか。
私たち、コーディネイターと彼ら・・・ナチュラルの共存の出来る世界は本当にないのでしょうか』
と。
「・・・仕方がありませんわ。 認めてくださると宜しかったのですけど・・・・。
・・・イエローちゃん? お願いいたしますわw」
ラクスはニッコリと微笑みながら、ピンクと一緒に持っていた黄色い【ハロ】・・・イエローちゃんに話しかけた。
《ンン〜?? ラクスゥ〜!!! リョウ〜カイッッ!! ハロハロ〜》
(・・・おい、アスラン。 アレって確か・・・・)
(・・・覚えていたか。 あぁ、あの【ハロ】の機能は確か・・・・睡眠効果が搭載されていたはず・・・。
オプションに、相手のデータを読み取る機能も搭載されている)
(・・・僕らが知っているのは前半部分ですが? 後半は後から付け足したものですか?)
(あぁ。 ・・・ラクスからこちらへ途中・・・・艦内で頼まれたことだ。
・・・目の前の事態がすでに彼女の中で予測されていたようだな)
ラクスから『イエローちゃん』と聞いた瞬間、彼女を良く知る3人はこれから起こることに予測がついた。
アスランの言うとおり、ラクスが話しかけた【ハロ】はアスランが月の幼年学校に通っていた頃に、
ラクスから頼まれて作ったマイクロユニットである。
同じ機種のものは当然ながら、最愛の彼女であるキラにもプレゼントされていた。
ラクスがいつも傍においているのは彼女の髪と同じ色であるピンクである。
ラクスはそれを『ピンクちゃん』と呼んでいる。
キラが常に一緒にいるのは、メタルグリーンの【トリィ】とキラの瞳であるアメジストと同じ色の【ハロ】の姿があった。
―― 時々は、アスランの瞳であるエメラルドと同じ色の【ハロ】の姿があったが ――
アスランが作ったマイクロユニットには様々な機能が搭載されている。
まず、【トリィ】にはキラの探索機と自分との距離を図ることの出来る追跡機能である。
この機能のおかげで先の大戦時、大いに役に立った。
そのほかにもキラに言い寄る害虫駆除のために対人用のビームが搭載されている。
このことにキラは自身の天然ゆえに気づいてはいない。
普段は死なない程度に設定されているが、
この機能をMAXにしてリミッターを外すと、アスランが乗っていた『イージス』のスキャラ並に匹敵する。
【ハロ】については、ピンクとアメジストの【ハロ】は純粋にペットロボとなる。
ただ、幼い頃から可愛い彼女達を守るためにえげつない機能が満載であるが・・・。
誘拐にはあわなかったが、それも【ハロ】のおかげであった。
【トリィ】ほどではないが、対人用の攻撃も可能である。
ビームは発しないが、思いっきり飛び跳ねてくるのだ。
それは、相手を認識し終えたらその標的が沈黙するまで攻撃を止めない。
そのほかには【ハロ】すべて共通では、どんな鍵でもすぐに開けてしまう機能である。
但し、キラやアスランが作った鍵は開けることが出来ない。
本気で中に入れなくする時は、【ハロ】の性能を超えるほどの本気を出すからである。
【ピンクハロ】にはそのほかに通信機能が追加された。
これは、アスランたちがプラントへ移住した後にラクスからの依頼で付け足したのだ。
そのほかにも、【ブルーハロ】や【オレンジハロ】にも追加機能が搭載されている。
その中でも【イエローハロ】にはほかの【ハロ】たちとは違い、ある意味えげつない機能が追加されていた。
(相手のデータを・・・ですか? でも、どうやって?)
「・・・みなさん、眠ってくださいましたわね。 では、始めましょうか?
・・・私は警告をいたしましたのに・・・。 では、イエローちゃん? お願いいたしますわw」
ラクスは【イエローハロ】をミーアの前に固定した。
《ハロハロ〜!! ・・・・・データ、インプットチュウ〜》
ニコルの疑問を他所に、【イエローハロ】はミーアの頭に飛び乗り、大きく口を開いた。
その中から赤と青、そして白のコードが出てきた。
(あのコードが見えるか? 白は逃げ出さないための保険のため。 赤・青で相手の頭から情報を取り出すんだ。
【ハロ】から出てきたコードには特殊電波を発信するように仕掛けてある。 もちろん、人体に影響はない。
それによって、記憶されているものを全て読み取ることが出来るんだ)
(・・・・アレは他の機能よりもある意味えげつないな・・・。 アレ一体だけで黙秘権も使えない。
・・・まぁ、同情もしないが)
アスランからの説明にいち早く回復したのはイザ−クであった。
イザークはため息を吐きつつ、目の前にいる【イエローハロ】を見ていた。
《・・・・・・ハロハロ〜vv ラクスゥ〜vvvvv》
「どうさないました? イエローちゃん? 終わりましたの??」
《データ、インプットシュウリョウ〜。 サイセイスルカ??》
「お願いいたしますわvv」
ラクスは【イエローハロ】の言葉にニッコリと微笑みながら了承した。
この【ハロ】もだが全ての【ハロ】たちもちゃんと意思疎通ができる。
・・・・それは全てアスランが周期的にメンテナンスをしているからでもあるが・・・・。
《ン〜? リョウカイ! ハロ、サイセイ〜》
〈私が、ミーア=キャンベルですけど・・・? ・・・・・・・・私がラクス様の代わりをですか!?
分かりましたv あ、この話し方も変えなければなりませんよね?
私、ラクス様の大ファンなんです。 そんな方の代わりを勤められるなんて!・・・・・・・〉
「!!」
「・・・これでも白を切られますか? ちゃんと、貴女の声でしょう?」
【イエローハロ】が再生する時は本人の声となる。
記憶の録音機能がついているために、再生をすると必ず本人の声となるのだ。
「で、デタラメですわっ!! 私がラクス=クラインですわ!」
「・・・見苦しいぞ? ラクスは俺に抱きついたりしないし大声で俺の名を呼ばない。
・・・俺がキラや母上、キラの母上以外に触れられることを一番理解しているからな。
・・・まぁ、ラクスくらいならばまだましだが。
それに・・・俺の送ったハロはそんな話し方はしない。
ついでに言えばラクスは常にピンクハロしか連れ歩かないからな」
アスランは往生際の悪いミーアに、冷たい視線を浴びせながら淡々と事実を話した。
「あらあらw 私はこの【ピンクちゃん】がお気に入りですのよ?
幼い頃、月でお逢いして始めて頂いたのがこの子ですからvv」
「「!?」」
ラクスはニッコリと微笑みながら、これまで誰も知ることのできなかった彼女たちのつながりを知った。
「・・・知らなくて当然だろうな。 俺たちの秘密はキラのことがあったから公表していないしな。
・・・・俺たちは幼馴染だ。 月の幼年学校時代からのな」
「・・・僕らの大切な幼馴染である、
キラさんやラクスさんに危害を加えようとお考えだったようですが・・・・誤算でしたね?
僕らがそのことに気づいて先手を打たせていただきました」
議長とミーアに対して追い討ちをかけたのは、それまで傍観者としていたイザークとニコルである。
特にニコルは今までの恨みとばかりに黒いオーラを出していた。
「大体、俺は貴様などの婚約者になった覚えはない。
婚約した覚えもないのだからな? ・・・勝手に婚約したと妄想などするな。 迷惑だ」
「ですけど、アスランは・・・私のっ!?」
「・・・何度も言わせるな。 貴様ごときが俺の名を気安く呼ぶのは止めろ。
『私の』? なんだと言うんだ? まさか、未だに婚約者だなどと思っているわけでもあるまい?」
「っ!? けどっ、議長がそのように仰ったわ!! アスランは私の婚約者だと!」
「・・・・まだそのような戯言を・・・。 ・・・まぁ、漸く尻尾を出したな?
口調が本来のものに戻っているようだが? ・・・本物のラクスならばそのようなことは言わない。
俺たちが先の大戦時に婚約をしていたのは【プラント】の希望だったからだ。
それ以上でもそれ以下でもない。 俺の本来の婚約者はキラのみ・・・。
ラクス自身もイザークと幼き時より婚約を交わしていた。 ラクスが俺に執着する訳がない。
・・・現時点で昔と同じだろうなどと考えている顔だな? それは違う。
確かに現状は2年前と同じになりつつある。 だが、俺達が婚約する必要がない。
そのようなこと、俺たちや父上たちが許すわけがないからな?」
アスランは眼光を鋭くしながらミーアに浴びせた。
アスランとしては、ラクスから頼まれたとはいえ軍に戻る気がなかったのだ。
しかし、彼自身も気になることがあったために軍へと複隊した。
しかし、現議長との話し合いで彼が何を考えているのかが分かってきた。
彼自身、キラほどではないがハッキングができるため足跡を残さずにザフトのマザーへ侵入し、
独自に軍内部から調べていた。
二コルもアスランと共に別の方面で調べていたため、その作業は予想していたよりも簡単であった。
(実際、あのようなセキュリティーでよく軍事機密を守れますねぇ。
アスランや僕らの屋敷にあるセキュリティーのほうがまだ丈夫ですよ)
「確かに・・・パトリック小父様はキラを気に入っておられますからね。
キラが通信に出る度にいつもは眉間にしわを寄せていらっしゃるのに、
その眉間にしわを一切寄せないのですよ?
そんなキラを可愛がっている小父様がキラ以外をアスランの婚約者に選ぶなど・・・ありえませんわ?」
ラクスはニッコリと微笑みながらアスランの言うことを肯定した。
彼女自身、いつまでもアスランの婚約者だと思われたくはないのだ。
彼女が心から信頼し、安心できる人物はイザークのみなのである。
「まぁ、そういう事だ。 大体、俺は貴様などに俺の名を呼ぶことを許した覚えはない。
気安く名を呼ばないでもらおうか? ・・・俺の名を呼んでいいのはキラだけだ。
・・・例外はラクスや母上、カリダ小母上だけだが」
「・・・いい加減、認めたらどうです?
僕らはあなた方が今までしてきた数々の証拠品を保持しています。
たとえは・・・・今はラクスと瓜二つの顔をしているあなたの本当の素顔など・・・ね?」
ニコルはため息をつきながら目の前の偽者を見つめた。
彼もラクスやキラを侮辱されて相当キレていた。
2006/05/18
再up
2007/05/02
ラクス、黒化ですw
大切な幼馴染を侮辱された為、
当事者であるラクス以外のメンバーもまた、切れておりますがw
アスラン製作の【ハロ】シリーズは、
それぞれラクスの要望やスバル兄様の意見、アスランが必要だと思った機能が満載w
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