「・・・父さんたち、余計なことを言わないほうが身のためですよ?
それに、今回はそのようなことをしないですむようにこの場を開いたんですよ。
・・・キラさんを傷つけようとしているお馬鹿さんに最も有効なやり方でしょう?
あとは・・・カナーバ議員が選ばれた人選ミスを指摘するためでしょうか」



僕自身、今回のことを許せませんからね。
彼らは身をもって知るべきですよ・・・。
それに、アスランは昔からキラさんしか愛しませんし・・・ね?








Adiantum
    ― 記者会見 ―











その頃、控え室ではイザークに小言を言われているキラを見ながらラクスに小声で話しかけた。

「ラクス、こちらの準備は整っています。
今回の婚約の会見はここ本国だけではなく、大西洋やオーブなど地球上にも届くように手配しています。
・・・やつもこの中継を見るでしょうね」

「そうですわね。 ・・・AAにいる間、何かとオーブからの通信が入っていましたもの。
まぁ、気づいたときにはすでに領海を越えていましたが。 ・・・今頃は、ご自分が大変なのでは?」



ラクスは会場で黒いオーラを放っているニコルに負けないくらいのオーラを放出しているのだが、
この部屋でそれを恐れるものはいない。

イザークは極力アスラン達のほうを見ないようにし、
キラに関しては、ラクスのオーラにすら気づいていなかった。


キラは天然が入っているため、
ラクスや二コルといった黒いオーラを放出できる人物がいたとしてもあまり気にしないのである。
アスランに対しては、まったく効かない。彼もまた、ラクスたちと同類なのが。



「・・・あぁ、連合との同盟とあの女自身の結婚話か。 悪いが、興味が無い。
俺があの女に優しくしたのは、キラの肉親だからだ。 それ以外の感情なんて持ち合わせてはいない。
・・・それを勘違いして、キラを殺そうとしたのならば、俺は許さない。
俺を幸せにできるのはキラだけ。 そのほかの女には触れたくもないし、触れられたくも無い。
唯一の例外は母上や小母さん、そしてラクスたちだけだ」



アスランは思い出すのも嫌とでも言うように形のいい眉を寄せた。

そんなアスランにラクスは同感とでも言うような表情をし、
イザークに頼んでキラを移動させていたため、もとの位置に戻った。



「・・・お気持ちは分かりますわ。
ですが・・・これから起こることでキラを悲しませたら、私も黙ってはおりませんわよ?」

「えぇ、そのことについては俺としてはなにも関与しないので、お好きになさってください。
俺の望みはキラが平和に暮らすことですので」



アスランはラクスの言葉の裏を正確に読み取り、自分の中にあった答えをラクスに示した。



そんな2人の話を聞いていないキラはイザークに連れられて控え室に戻ってきた。



「・・・アス? なんかあったの? 怖い顔してるよ?」

「・・・大丈夫だよ、キラ。 ちょっと嫌なことを思い出しただけだから」



キラは不安そうな顔を精一杯抑えながらアスランが怖い顔をしていることに気づいた。

しかし、アスランは最愛の人の顔を歪めさせた己の失態に対してキラが気づかない程度で舌打ちをし、
キラ限定の微笑を見せた。



「アスラン様、お時間です」



アスランがキラを抱き締めていると、ドアを叩く音が聞こえ、
外からこの会場を提供しているザラ家の所有するホテルの支配人がやってきた。



「わかった。 ・・・キラ、行こうか。 大丈夫、俺やラクス、イザーク。
それに、会場にはニコルとディアッカ、父上たちもいるから」

「そうだぞ、キラ。 俺たちも一緒なんだ。 話したくなければ何も話さなくてもいい。
・・・俺たちに任せろ。 これは、お前の身の安全を証明することなんだからな」



アスランがいまだ不安がっているキラを抱き寄せると、
ラクスと共に控え室を出ようとしたイザークが軽く頭をポンッと叩いた。
彼のこのやり方は昔からの“心配するな”という合図でもあった。
キラはそんな不器用な幼馴染の姿を見ながら、少しは安心したかのように強張っていた表情を少しだけ緩めた。






場所が変わって、
会場では今か今かと4人の登場を招待されたメディア関係者たちの熱気が高まっていた。
それを遠くから傍観していたディアッカがため息をつきながらその様子を見ていた。



「・・・さっきからため息ばかりついて、どうかなさいましたか?」

「・・・いや、議長も馬鹿なものを自ら抱え込んだなぁと思ってな」

「・・・議長がですか? ・・・確かにそうですねぇ。
あの人は触れてはならないものに手を置きましたからね。
大体、2年前の大戦を本当の意味で知っている方でしたらアスランを複隊させようという考えはまず起きませんよ」



二コルは隣でため息をついていたディアッカに気づき、小声で話しかけた。
そんなニコルにディアッカもまた、小声で答えた。



「・・・あぁ。
本当はアスラン、あの戦争が停戦って形でも一応、
姫の嫌う争いは終わったから姫の休養も兼ねて月に帰ろうとしてたんだ。
だが、あの馬鹿女が姫を無断でオーブに降ろした。
まぁ、表向きは自分の妹だからとでも言い張ったんだろうな」

「・・・・十中八九、そうでしょうね。 しかし、本来の目的はキラさんではなくキラさんの傍にいるアスランでしょう」

「あぁ。 アスランの話だと、無理やりあの女のSPにさせられたそうだぞ。
あいつ、先の戦争で傷ついた者の一人だっていうのにな。
大体、あいつの故郷はここ『プラント』だ。 いくら中立だって言っても『オーブ』はナチュラルの国だ。
キラのご両親・・・小母さんたちだって、
姫のことを思って『プラント』の近くに新しく建設されたコロニーに移住したばかりだというのにな」



キラの義理の両親であるヤマト夫妻は2年前の戦争時にキラ達がどのような状況にいたかを知っていた。
停戦後、元々繊細だったキラを心配して、
『ヘリオポリス』のようにナチュラルの多いコロニーや地球には下りずに
キラの同胞の多い『プラント』の近くに新たに建設されたコロニー『ガーデン』へ移住してきたのだ。


しかし、『プラント』に移住する予定だったキラをカガリが独断で
「自分の妹だから『プラント』に移住するのは許可しない」と言ってきたのだ。
それにより、キラはまたしても両親と離れ離れとなった。



「公務中も私用の時もところ構わずベタベタしてきたらしい。
・・・通信のたびに不機嫌な顔をしてたからな。 アスランは基本的に他人に触られるのを一番嫌うんだ。
俺や二コル、ラクスや親父たちは平気みたいだが・・・。
まぁ、めったに触らないがイザークも平気だな。 その中でも姫は特別だが・・・」

「えぇ。 アスランが暴走した時は僕らでは止められませんからね・・・。
唯一、傷を負わずに静まさせることができるのはキラさんだけですから・・・」

「・・・俺、今回のことはそれの前触れだと思うぞ。 ってか、絶対そうだ。 ・・・逃げ出したくなってきた・・・」

「それについては同感ですが、ここで逃げ出したらその後が怖いですよ?
なっていたって、今回の黒幕はラクスなんですからね?
・・・大量のハロ攻撃だけですめばいいですが・・・。 まず、無理でしょうねぇ」

「・・・それにお前も一枚かんでるからな。 逃げないぞ。 ・・・姫のためだからな」

「それを聞いて安心しましたよ。 ・・・そろそろ時間ですね。 さて、僕らは僕らの仕事をしましょうか」



ニコルの合図にこのホテルの支配人が司会席へ着いた。
今回の記者会見の司会はこのホテルの支配人であった。



「お待たせいたしました。
只今より当ホテルの時期オーナーになられますアスラン様とキラ様、
そしてご友人であられますイザーク様とラクス様の婚約会見を開催いたします」



支配人の声に一瞬にしてざわめきが収まった。



「・・・・この度は私たちの婚約会見にお集まりになられましたことにお礼を申し上げます。
この場をお借りして、私、アスラン=ザラと私の隣にいますキラ=ヤマトは正式に婚約いたします。
私の隣にいますのは幼い頃からの友人であり、
2年前の大戦時も戦友であったイザーク=ジュールとラクス=クラインの婚約も同時にお知らせいたします」



アスランは淡々と話しながら隣にいるキラを見つめていた。
キラは隣にアスランとラクスがいることに安心を抱き、どうにかリラックスをしているように見えた。



「アスラン様はラクス様との婚約をしておられたのではないのですか?」



アスランの言葉を聞いた記者の1人がアスランに問いかけた。
彼の話しているのは2年前に噂されたことであった。



「そのことに付きましては、噂でしかありません。 私たち本人は肯定をしてはおりませんので。
・・・人々が勝手に決め付けたことでしょう? それに、発表したのは父でして、私たちではありません」

「あの時はまだ時期ではございませんでしたもの。 ですから、私たちの発言は控えさせていただきましたの。
ですが・・・、それがあたかも真実だというような言い方は不愉快ですわ」

「・・・ラクス、落ち着け。 貴様らそれ以上余計なことは慎め。 質問は後ほど受ける。
・・・一つ宣言しておく。 このの会見以外においての俺たちへの質問は全て無効とする。
貴様らの仕事だろうが俺たちを追い回すのはやめていただこうか。 非常に不愉快だからな」



イザークは隣で不機嫌なオーラを出しているラクスを宥めながら
射抜くようなサファイアの瞳でマスコミ達を見据えた。



「それでは・・・・・」



イザークが質問を後回しにした隙に今回の司会者はシナリオ通りに進めていった・・・・。











2006/04/06

再up
2007/04/01













短いですが・・・切りました。
これ以上続くと・・・切るタイミングを逃してしまうので;
記者会見、開始です!
記者たちの質問にイザークは少々お怒り気味ですねv