「迷惑なんか、ならないよ? キラだからなってほしいんだ。 それに・・一緒に帰るだろう? キラは1人にしておくと危ないからね? いくら、ここが俺たち以外入れないとしても。 ・・・それとも、キラは俺と一緒にいたくない?」
俺にとって、キラは全てだから。
Everlastingly
それから数日が経ち、普通クラスの間である噂が立っていた。
―――― “Zクラスに編入してきた子はあのラクス様に匹敵するほどの美人らしい。頭もよく、この学園の編入試験の過去最高得点を超えたらしい” ――――
この噂は、もちろん彼らの耳にも入っていた・・・。
「まぁ、このような噂が流れているのですか?」
「えぇ。 ラクスは僕の情報網をよくご存知でしょう?」
「もちろんですわv 私たちの中で情報網に強いのは、ニコルですもの」
ニコルの定期報告にラクスは口元を両手で隠すようにしながら、「あらあら」と呟いた。
「・・・こんなこと、アスランの耳に入ったら・・・」
「何が?」
ミゲルの言葉に重なるように聞こえてきたのはこのクラスで万年トップをキープしており、生徒会長でもあるアスランの姿があった。
「おはようございます、キラ」
「おはよう、ラクス。 ・・・ミゲル、どうしたの?」
キラは2人の登場によって固まってしまったミゲルの姿に驚き、首をかしげた。 そんなキラの様子にアスランは気にしなくてもいいよと伝えると、キラの手を引いて自分たちの席へと向かった。
「・・・今日中にでも、執行部からの連絡を掲示板に張るぞ。 普通科のやつらが煩い」
アスランは不機嫌そうに言いながら、キラを抱き締めた。
「Σ ・・・アス・・・」
アスランの突然な行動に驚いたキラだったが、幼年時代には日常茶飯事だったためか、 アスランは昔から嫌なことがあると無意識のうちにキラに抱きつく癖を持っていた。だが、
「キラは、俺のものだ。 ・・・誰にも譲る気も渡す気もない!」
「・・・アスラン、僕は離れないよ? もう・・・1人になるのはいやだから・・・・・」
キラを抱き締める腕にさらに力を入れたアスランは誓うように・・自分たちの近くにいる者たちに見せ付けるかのようにキラの首元に顔を埋めた。
そんなアスランにキラは甘えるように身体を反転させると、自分からアスランにしがみつくようにアスランの腕の中へ飛び込んだ。
「私は、キラの味方ですわ? キラにお会いして、まだ間もないですが私はキラの笑顔が大好きですわv」
「僕も、キラさんたちの味方ですよ? 情報操作は、僕にお任せください」
ラクスはキラたちの様子に微笑み、自分の気持ちをキラたちに伝えた。
・・・2人の関係は、彼らから簡単に説明されていた。
その日の放課後、彼ら生徒会執行部に新しいメンバーが彼らによって発表された。
「・・・これで、少しは静かになるだろう・・・・。 今朝は本当に煩かったからな」
本館の掲示板に執行部からの連絡であるプリントを貼り付けたアスランはウンザリした表情で隣にいるキラに抱きついた。
今朝は、アスランとキラが一緒にザラ家のエレカで学園の正門に来た時、 だが、アスランには明らかにキラに対しての悪意を発していた人物たちのことを覚えており、 もちろん、常に行動を一緒にするアスランの目を盗んでキラに危害を加えようとした過激なファンたちはこのトリィによって撃退されてきた。
「この連絡を入れて、まだ僕たちに手を出そうとする者たちがいれば・・・アスランは徹底に潰すでしょうね・・・」
「当然だ。 俺は、警告を出したのだからな」
ニコルは苦笑いを浮かべながら未だにキラに抱きついているアスランを見たが、 掲示板に生徒会からの連絡が張り出されたこの日から、キラに対する周りの目が次第に治まっていった・・・・・。
放課後、キラはアスランたちに連れられて彼らのみしか入ることのできない生徒会室へとキラを案内した。
「遅かったな」
「申し訳ありません。 ・・・文句は我々の担任に言っていただけますか? 今日はHRが長引いたので」
アスランの言葉に苦笑いを浮かべたのは部屋の中にいた青年だった。アスランの隣にいたキラは青年の顔を見たまま驚いてしまったためかそのまま固まってしまった。
「おや? この子が新しくこの生徒会に入ったメンバーか?」
「はい。 彼女はキラ=Y=ザラ。 私の婚約者でもあります」
青年はキラの存在に気付いたのか、キラを見ながらアスランに尋ねた。 アスランは青年の言葉に頷き、未だ固まっているキラに苦笑いを浮かべながら青年の問いに答えた。
「・・・・キラ、正気にお戻りくださいませ。 この方は私たちの担任であるフラガ先生の実のお兄様ですわ」
「姫が驚くことも仕方がないと思うぞ? 初対面の奴は絶対センセと似すぎて固まるから」
ラクスは固まったままのキラを心配してキラに話しかけ、
「Σ す、すみませんでした。 初めまして、キラ=Y= ザラです」
「いや、こちらこそすまなかったね。 私は生徒会の顧問をしているラゥ=ル=クルーゼだ。
キラは慌てたようにクルーゼに挨拶をし、クルーゼは苦笑いを浮かべながら挨拶を交わした。
「クルーゼ先生。 キラにはこの学園のPCの管理を任せたいと思うのですが・・・・」
「この学園のPCを? その仕事は君が受け持っていなかったか?」
「確かに、私が受け持っていた仕事です。 しかし、私よりもキラのほうがPCに対しては優秀ですよ?」
アスランはクルーゼとキラの挨拶が終わったのを見届けると今日この場に来た本題を伝えるため、クルーゼが何かを問いかける前に話した。
PCの管理は彼ら生徒会の中でもPCに強いものでなくてはならなかった。適任者ではアスランとニコルであったが、ニコルにはすでに別の仕事があったためこのことを頼めなかったのだ。そして、ニコルよりもアスランの方がメカ関連に強かったこともそれに影響していた。 そのアスランがキラを認めていたのだ。彼としては幼い頃から近くで見てきたため、彼女の能力を誰よりも理解していた。
「アスランがそこまで言うのなら、優秀だろう。 では、理事会のほうではそのように伝えておこう。
彼ら生徒会は4大イベント・・・『入学式』『体育祭』『文化祭』『卒業式』を主に取り締まるが
「・・・あの、お話中で申し訳ないのですが・・・・」
「どうした? キラ」
クルーゼの話を聞きながら早速PCの電源を入れていたキラは、アスランの言っていた内容を見ているうちにある部分に気がついた。 キラの呼びかけに瞬時に反応したのはアスランで、クルーゼとの話を折ってキラの傍に寄った。
「このPC、ハッキングを受けていますよ?」
「え!? ・・・このPCの中には生徒の個人情報が入っている!!」
キラの言葉に慌てたのは傍にいるアスランではなく遠くからキラの言葉を聞いたミゲルだった。
「キラ、今すぐロックとハッキング元を調べられるかい?」
「今やってるよ。 ・・・このハッカー、まだ未熟・・と言うかあまりにも無謀だね。 これじゃ、追跡されるに決まってるのに・・・・」
キラは呆れを含む声でありながら指先は流れるようにキーボードの上を叩いていた。 目の前で構築されたプログラムは彼らには理解できないプログラムだったがその性能は思っていた以上の代物でハッキング部分と遮断され、
「キラ? 見つけたのかい?」
「うん。 このIP・・・個人用だね。 今、特定中だから」
尋ねてきたアスランに対してニッコリと微笑んだキラは、4桁の数字を入力してエンターを押した。
しばらく沈黙の続いた生徒会室だったが、キラの前にあるPCから警報のようなものが鳴り響いた。
「・・・特定、終わったみたいだな」
「うん。 ・・・ここの生徒のようだよ。 個人情報・・・あった。 この人みたい」
キラの示した名前に、彼らの行動を見守っていたイザークたちもキラとアスランの後ろに集まった。
「こいつのPCで間違いないのか?」
「当たり前だ。 キラの能力に関しては俺も認めている」
ディアッカの質問にいち早く反応したのはアスランである。
「・・・こいつ、今回のテストで俺たちに負けたやつだ」
「そう言えば・・・自分で“秀才”って言っていたな」
「あら。 自信過剰の方ですの?」
ミゲルとラスティの言葉に反応をしたのはラクスで表情はいつものように微笑んではいるものの、彼女の瞳がその微笑を裏切っていた。
「学園の一環で、生徒と講師全員が対象となって個人PCを持っていたから・・・特定が簡単だったね。
「・・・明日、この人を生徒会に招集する。 キラ、今からこのデータを証拠として集められるかい?」
「もちろん。 ・・・集めたらプリントに印刷するね。 ・・・ついでだから全てに僕が作ったセキュリティーデータを組み込んでおくね」
キラは呟くようにハッキングされたデータを調べた。
「・・・アスランの言うとおり、君にはPCの管理をしてもらおう。 こんなに優秀とは思わなかったよ」
「キラのプログラミング能力は私でさえ勝てませんから。 この学園で最も優れていると思いますよ」
クルーゼでさえ関心させる力を見せたキラはアスランから褒められたこともあり頬を赤くしてはにかんだ。 ハッキングした犯人の動かぬ証拠をプリントアウトしたキラはそのデータをアスランに手渡し、PCの電源を落とした。
「重要データはこのPC以外から開けないようにロックを掛けておきました。 ・・・先生方のIPも明日にでも組み込みますから」
「その必要はない。 私たちは全員分の個人情報を毎年、学園側から受け取っている。
真っ黒になったPCの画面を見つめ、ため息をついたキラは後ろにいたクルーゼに振り返り、
「・・・でしたら安心ですね。 今日はこのあたりで帰ります。 アスラン、帰ろう?」
「そうだな。 ・・・明日、放課後にこの者と普通科の役員を集めてくれ。
クルーゼの言葉に頷いたキラは一度ニッコリと微笑を浮かべると自分の荷物を持っていたアスランから荷物を受け取り、 アスランの最後の言葉をちゃんと理解しているキラを除くメンバーたちは小さく頷くことで了承の意をアスランに伝えた。
2006/05/27
約1ヶ月ぶりの更新です。
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