「・・・向かう方向が同じだからな。 俺は別に構わない。 ・・・莉央香、行くぞ?」
テニス・・・か。
少年は、表情が変わることは無かったが内心では嬉しさに笑みを零していた。
心に夢を君には愛を
この学園はテニスの名門として全国に有名であるが近年、テニス部の実力が落ちているのか闘争心がないのかは
校舎から離れた場所に彼らの目的地であるテニスコートが姿を現した。
「桜、そんなに珍しいの?」
「うん。 ・・・住んでいたところがアメリカだから。 アメリカには、こんなにたくさんの桜はないよ?」
後ろを歩いていた不二は嬉しそうな莉央香に対して見慣れている桜がそんなに嬉しいのか解らず、尋ねた。
「莉央香、あまり上ばかりを見ていると石に足を引っ掛けるぞ」
「大丈夫v 国光が助けてくれるでしょ?」
たくさんの桜を見て興奮気味になる理由を知っている手塚は、いつものように注意を呼びかけるが
そんなやり取りをしているうちに彼らが目指すテニスコートのところまで歩いて行くとすでにその場には先客がおり、
「君たちもテニス部の希望者?」
不二はフェンスの近くにいた自分たちと同い年と思われる学生服の少年2人に声をかけた。
「うん。 小等部の時、テニススクールに通っていたから」
「俺は兄ちゃんたちに誘われて小さい頃からテニスラケットに触れていたんだ」
真面目そうな少年と猫のような感じを連想させる少年たちと少し話をしていた不二は、
「・・・早いなぁ。 もう、入部届けを出している・・・」
「? 彼らも入部希望者?」
不二は、呟くように部室と思われる場所の近くに設けられたテントにいる顧問らしき人物と話をしていた2人を見ていた。
一方、彼らの視線の先にいた2人は不二たちのことをさっさと無視すると自分たちの目的である入部届けを早速提出していた。 2人分の入部届けを見ていた顧問は茶色の封筒の裏に書かれている2人の苗字に驚きの表情を見せ、二人を見つめた。
「・・・・手塚か・・。 もしかして親戚に国風と言う名の者がいないかい? 雰囲気がお前さんにそっくりな奴がいてね」
「・・・? 国風は俺の叔父です。 ・・・叔父はこの学園の卒業生ですよ。 高等部からと聞きましたが・・・」
「そうかい。 ・・・私は時々高等部にも顔を出していたからねぇ。 ん? 国風の甥だというと・・・お前さんの父は国晴かい」
顧問は納得したように頷き、手塚は不思議そうに目の前の人物を見ていた。
「あぁ・・・名乗っていなかったね。 私はこの青学男子テニス部顧問、竜崎 スミレだよ。 お前さんの父である国晴とは弟繋がりで知り合ってね。 それ以来だよ」
「・・・父様が言っていた“バァさん”って先生のことだったんだね・・・」
顧問・・・竜崎の言葉に今朝家で言っていた父の言葉を思い出した莉央香は納得と言うように頷いた。
「ん? お前さんの父は越前 南次郎かい?」
「そうですよ。 今年こっちに帰国してきたんです。 私の場合は厳密に言うと違いますけどね。 もう一つの故郷って意味ではあってるけど・・・」
竜崎の言葉に頷いた莉央香は自分の国籍のことを思い出した。 彼らがほのぼのと会話を交わしているとコートから一般部員とは異なるジャージを着ている人物が彼らに声をかけた。
「新入部員ですか? 本来なら明日からですが・・・どうです? テニスコートで少し打っていきますか? そこの君たちもどうですか?」
「・・・まぁ、大和の言うとおりだろう。 お前たち、この後の用事がないのなら、少し打って行け」
竜崎は青いジャージを着た先輩らしき人物の言葉に頷き、手塚たちに私服のウェアを部室で着てくるように話した。
「・・・少しだけ遅くなっても大丈夫だよね? 行こう、国光」
竜崎の言葉に嬉しそうに反応したのは莉央香であったが彼女に連れられるように部室に向かう手塚も知っている人物たちから 彼らに続くようにフェンスの近くで話していた不二たちもまた、彼らと同じように部室へと向かった。 ウェアに着替えた莉央香と手塚は自分たちが持ってきた自分専用のテニスラケットを片手に持つとコートの隅に行き、 遊びで打つにしても彼らは必ず柔軟をすることを彼らにテニスを教えた者たちから約束事として そんな二人に習うように不二たちも柔軟を始め、
「・・・竜崎先生。 メガネを掛けたこの横にいるのは女の子ですよね・・・」
「ん? あぁ、リョーのことか。 確かに、あの子は女の子だよ。 ・・・だけど、多分女子テニス部には入部する気はないんじゃないかい?」
「・・・なぜです?」
「ここの女子テニス部にはあの子以上の実力者がいない。 あの子の父親が私の教え子でね、その繋がりであの子の実力をよく知っているんだ」
竜崎は苦笑いを浮かべながら大和の疑問に答えた。
2人は柔軟を終えるとあいているコートに早速入ると軽くラリーを始めた。
「・・・綺麗なフォームですねぇ。 彼ら、基礎の方は大丈夫のようですね」
「あの子らはアメリカじゃ、有名だよ? リョーはJr.大会に4大会ほど出ているが・・・・どれも負け無しだ。 手塚もまた、様々な大会で優勝を飾っているからね。 ・・・お前さんたちも着替えてきたかい。 それじゃ、コイツと同じジャージを着ている奴にフォームとかを習いな? 他の奴らよりは的確に教えてくれるよ」
2人のラリーを見ていた大和と竜崎だったが、彼らのきちんとしているフォームに感心するように呟いた大和に対し、 コートの中には大和と同じジャージである青のジャージを着た者たちがそれぞれのコートで軽いラリーを行っていた。
「・・・あのジャージ、もしかしてレギュラーのみが纏うと言われているジャージですか?」
「そうですよ。 自己紹介をしていませんでしたね。 僕は大和 祐大です。 これでも一応、このテニス部の部長をしています」
不二は近くにいた先輩・・・大和に尋ね、大和は不二の言葉に頷いた。 そんな大和に慌てた不二たちは自分たちも自己紹介を始めた。
「1年、不二 周助です」
「同じく1年、大石 秀一郎です」
「同じく1年、菊丸 英二です!」
ラリーをしていた莉央香たちも気付き、途中で中断すると彼らのところへ戻っていき、自分たちも自己紹介を始めた。
「1年、リオカ=E=ユリウスです」
「同じく1年、・・・手塚 国光です」
「? ユリウス?」
先ほどまで回りからハードとも思われるほどのラリーを繰り広げていた彼らだったが呼吸を一切乱しておらず、
「ハーフなんで。 日本名は越前 莉央香です」
「そうですか。 僕たちは今日、自主錬の予定でしたからあまり部員がいません。 テニス経験のある方はそのままテニスコートで打ってもいいですよ? 浅い方は・・・そうですね・・・・・・桜川君!」
莉央香の言葉に納得したように頷いた大和は自分を見つめる後輩たちを見渡し、フォームを教える適任者を呼んだ。
「・・・呼んだか?」
「呼びましたよ。 この子たちにいろいろと教えてあげてください」
別のコートで柔軟をしていた同じジャージを羽織った男子部員を呼ぶとすぐさま返事が返り、
「? 新入部員? 初めまして。 俺はこの部の副部長をしている。 名前は桜川 尚哉。 よろしくな、1年ども」
『よろしくお願いします!』
男子部員・・・桜川はニッコリと微笑を見せると一斉に頭を下げる1年たちを見て満足そうに頷いた。
「・・・で、誰を教えればいいんだ?」
「そうですね・・・・。 手塚君と越前さんは基礎がしっかりとしているようですから先ほどのようにラリーをして下さって構いませんよ? 不二君もできると思いますが? この2人をよろしくお願いします」
大和は桜川の前に大石と菊丸を連れて行くと大石たち2人はキョトンとした表情を見せたが桜川本人は面白そうだと呟いた。
大和の言葉に頷いた手塚と莉央香は先ほどまで使っていたコートに戻り、ラリーを再開した。 そして、大和に頼まれた桜川と2人の新入生は共に空いているコートに向かうとそこでフォームの見直しを開始した。 時間にして2時間ほどであったが元々テニスをやったことのあった大石たちは飲み込みが早く、 莉央香はまだやりたがったが入学したばっかりであったことと手塚の両親との食事会もあるということを思い出し、
2006/04/06
テニス部の先輩たち(レギュラー陣)は大和部長以外、オリキャラです。
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