「日本に?」
「えぇ、そうよ? 仕事の都合で日本に行くことになったの」
「・・・母様、日本の学校に通うのなら国光と一緒のところがいい」
「その予定よ?」
「ありがとう! 母様!!」
また、彼と一緒に通える。
遠い地にて、桜の咲き乱れる半年前・・・一人の少女が母親の言葉に嬉しそうに微笑んでいた・・・。
心に夢を君には愛を
桜の舞い散るこの季節にしてこの国特有の景色がいたるところで見受けられる季節。 青空の広がるこの日、体育館の窓ガラスに春の陽気を感じさせながらこの学園・・・ 真新しい制服をその身に纏い、 青春学園・・・地域からは青学と呼ばれるこの学園は小・中・高・大とエスカレーター式の構成でなっているため、 新入生が入学する数日前、彼らのテストを全て集計した教師陣は前代未聞の事態に驚きを隠せなかった。
そんな裏事情を知らない新入生たちの前に彼らの代表である主席を取った男子生徒が理事長のいる教壇に立ち、 その声にうっとりとした表情で見ていた女子生徒が1人いたのだが、
生徒会長の挨拶も終わり、淡々として入学式が終了すると新入生は式が始まる前に発表されている自分たちの教室に向かい、 エスカレーター式となっているためにこの学園は生徒数が半端なく多い。 彼らの在籍するクラス・・・1組において他の生徒たちとは違うオーラを放っている生徒がいた。
「久しぶりだね、国光」
「・・・・莉央香・・・・か?」
手塚の表情は無表情だったが内心で呆然としていることが解る女子生徒・・・越前 莉央香はニッコリと微笑んだ。
「そうだよ? 国光」
「・・こちらに引っ越してきたのか?」
「うん。 母様の仕事の都合上でもあったけど、我侭を言ったの」
莉央香は少しだけ首をすくめると悪戯が見つかった少女のような瞳を見せた。
「我侭?」
「うん。 ・・・どうせ日本に行くのなら、国光と同じ学園がいいって」
「・・・そうか。 ・・・・今日は俺の家だな」
「そうだね。 会場で、彩菜さんたちに会っていたから・・・・」
彼女の言うところの我侭に手塚は嬉しそうに微笑むと洋書を持っていた利き腕を優しく触れるように 莉央香は嬉しそうにその仕草に身を任せていたが、 ざわめきに首を傾げたのは女子生徒でもう1人の男子生徒も表面上では無表情なものの、 クラスのざわめきを鎮めたのは彼らのクラス担任であった。
「・・・・LHRが終了次第、今日は下校となる。 私語のざわめき等が多い場合、その時間は長くなるからな〜」
この一言により、クラスのざわめきは一瞬にして消え去り、手塚は自分の隣に立っていた莉央香に座るように促した。
「・・・莉央香、一応座れ」
手塚の言葉に素直に頷いた莉央香は自分の席である手塚の隣に座ろうとした時、
「・・・越前、お前は帰国子女だからこっちに来て挨拶くらいしろ」
「・・・・はい」
2人の様子に呆れたように呟いた担任に対し、
「リオカ=E=ユリウスです。こっちが本名だけど・・日本名は越前 莉央香なのでよろしく」
自己紹介をした美少女は勝気な笑みを浮かべるとそのまま自分の席に戻った。
「・・・越前はアメリカからの帰国子女だ。 仲良くしろよ」
莉央香の簡潔すぎる自己紹介に苦笑いを浮かべた担任は簡単に莉央香の国籍を伝えると
私語のざわめきを抑えたままLHRの時間が無事に終わり、
今年度の新入生代表を務めた彼とその親しい女子生徒は揃って
「・・・国光、テニスコートの場所知っているの?」
「あぁ。 ・・・入学式が終わり次第、すぐに向かおうと思って事前に調べておいた」
玄関前にある靴箱で自分たちの通学用シューズを取り出しながら自分よりも少し目線の高い男子生徒に尋ねた莉央香は、
「君たち、テニスコートに向かうのかい?」
校舎から出た手塚たちに声をかけたのは手塚よりも少し背の低い細身の少年であった。
「・・・・その予定だが・・・君は?」
「あぁ、名乗っていなかったね。 僕は不二 周助。 君たちと同じ一年だよ。 僕もテニス部を見に行きたいんだけど・・・
手塚は無表情の下で困惑していたが元々感情が表に出ない手塚に代わって隣で静かにしていた莉央香が首を傾げた。
その様子に苦笑いを浮かべた少年・・・不二 周助は自ら名乗り、テニスコートに一緒に行くことに対して彼らに尋ねた。
「テニスをするの? あ、名乗っていなかったね。 越前 莉央香だよ。 彼は手塚 国光」
「彼のことは知っているよ。 僕たちの新入生代表・・・入試試験の首位だから」
「・・・向かう方向が同じだからな。 俺は別に構わない。 ・・・莉央香、行くぞ?」
「うん」
不二に好感を持った莉央香は自分たちの名を名乗ったがやはり入学式直後だからなのか手塚の名はすでに知られていた。 手塚は不二に対して淡々と言葉を返し、テニスコートに向かおうとしながら莉央香に声をかけた。
その様子を一部始終見ていた不二は2人を包む柔らかい雰囲気に自分が微笑んでいることに気付き、
2006/04/04
テニプリにて、新連載開始ですv
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