「あぁ。 4年位前か? アカデミーの時だ。
イザーク、周りから見ても不機嫌だと解っているのにアスランにいつものように突っかかっていたからな・・・・。
普段であればアスランは無視していたんだが・・・」



アレ以来、イザークがアスランに突っかかる回数が減ったな・・・。
まぁ、それでも‘打倒・アスラン’を棄てなかったのはイザークだからか・・・・。
・・それに、アスラン自身不機嫌な時以外は眉を少しだけ顰めるだけでイザークの相手していたからな・・・・。





・・・・・その度、俺の部屋でもあるイザークの部屋は荒らされていたけどな・・・・。








記憶のかけら 2











今から4年前、【プラント】・・いや、彼ら『コーディネーター』たちを恐怖へと導いた“血のバレンタイン”直後、
多くの者がザフトへ志願するべく、アカデミーの門を叩いた。



訓練期間中、カレッジのように優秀成績の者が上位50番まで張り出されることがあり、
その中でもTOP5の者たちは一度も順位を下げることがなかった。


その中でも首位と次席の総合点はその以下たちの成績を突き放し、ほぼ独走状態だった。


彼らがアカデミーを卒業した時、同じ隊の先輩に彼らの成績は、歴代最高だということを知るのは、
まだ先の話である。






そんなTOP5に君臨していたのはこの年にクルーゼ隊に配属された‘紅’を身に纏った者たちであった。






どの訓練でも首位を維持していたアスラン=ザラ。
彼はいかなる時も無表情であり、
淡々と教官からの任務をこなす彼を他のアカデミー生たちは影で彼のことを‘氷の貴公子’と呼んでいた。

アスランと正反対の性格を持つイザーク=ジュール。
彼は圧倒的な差をつけられて常に次席に納まっていた。
彼は怒りの沸点が低いらしく、常にアスランと勝負事をしていた(連敗記録有)。

いつもニッコリと微笑んでいる年下の少年ニコル=アマルフィ。
彼は自分が他の者たちよりも年が下だということなのか常に敬語で接しており、
畏怖と一部の尊敬の目で見ているアスランに何の下心もなく話しかけた兵でもある。
可愛らしい容姿からなのか、彼を侮った一部の愚か者たちからは多額の慰謝料と恐怖が身にしみており、
‘大魔神’や‘魔王’と呼ばれ、恐れられている。

ニコルと同じようにアスランと親しかったラスティ=マッケージ。
彼らの中では唯一の一般市民である(ほかは皆、評議会議員の子息)。
だが、その実力は誰もが認めるものであった。

意外と世話好きでイザークの宥め役であるディアッカ=エルスマン。
彼らの中では成績が悪いとされがちだが、意外なことにあまり騒がれるのを嫌い、
テストなどでは若干セーブしていた。
そのことに気付かれたのは教官ではなくアスランたちである。




アスランとイザーク以外はそれぞれ得意不得意が目立ったのか順位変動があったが、
それでも彼らの名前は常に5位以内にあった。
それ故に、最終的の総合点数が例題最高を叩き出したのだ。









そんな彼らを他のアカデミー生たちは嫉妬と羨望を彼らに向けていた。




そんな日の朝、アカデミーをまだ卒業していない彼らはいつものように朝からの訓練をこなすため、
体育館のように広い部屋に集まっていた。
そんな中、ある一人の人物の周りには今までにない真っ黒なオーラが漂っていた。
もちろん、その表情に変化はなく彼の纏うオーラに気付いたのは
彼と比較的仲のいい2人とこの手に敏感なディアッカぐらいだろう。



「・・・アスラン、どことなく不機嫌じゃないですか?」

「確かに、機嫌悪そうだな・・・」

「・・・こんな時は、わざわざ奴を怒らせるべきじゃないと俺の感は言っているんだけどな・・・・」

「「確かに」」



ディアッカの発言にニコルとラスティは頷き、少し離れた話題になっている人物・・・アスランの姿を見ていた。
彼の周りには人はおらず、誰もが遠巻きに彼に視線を向けていた。





この日の訓練は実践を兼ねての白兵戦の訓練だった。
もちろん、実践を兼ねているため使う武器に規制はない。
ただし、危険回避のために刃物は真剣ではなく訓練用を使用し、銃弾も実弾を使用しない。
だが、武術に心得のある者にとってそれらの武器を使用することはない。




実技をかねている為に死亡者は出ないがそれでも骨などを骨折して
病院送りになっているアカデミー生が多数続出する訓練でもあった。






彼らは知らないが、アスランもまた護身用にいろいろと習っていたため多少の武術に心得はあった。
彼のほかにもイザークはもちろん、ディアッカとニコルもまた護身用にいろいろと習っている。
彼らは評議会議員の子息であるために誘拐などをされやすく、その保険として武術を習うのだ。



「アスラン! 今日こそは貴様に勝ってやるっ!!」



突然室内に響いた怒声・・・・イザークの叫びにディアッカは額に手を当て、ラスティとニコルはため息をついた。



「・・・・あいつ、絶対今のアスランの様子に気付いていないな」

「気付いて・・・いませんね。 ですから、あんな無謀なことをするんですよ」



呆れ声を出すのは彼を纏うオーラに気付くことができたラスティとニコルである。
彼らと同じく第6感で気付いたディアッカはこれから起きるであろう予想に頭を抱えていた。




イザークは毎度訓練の度にアスランに勝負を持ちかけては連敗記録を伸ばしている。
もちろん、最近では訓練だけではなく彼の得意なチェスなどでも勝負することが増え、
その度に連敗記録が伸びる。








アスランは見かけによらず、負けず嫌いだから・・・(キラ談)







そして、その連敗後の被害者は同室のディアッカである。彼らは幼馴染らしくイザークを宥めていたディアッカを見ていた教官が彼らの部屋割りを変更し、ディアッカとイザークが同室となった。





未来形ではあるが、
正式にアカデミーを卒業してからも同じ隊に配属されて再び同じ部屋になる理由は、この頃に原因がある。



「この後の俺のことも考えてくれよ、お前ら」

「それだけはできませんよ、ディアッカ。 彼の無謀なしっぺ返しですからね? 自業自得ですよ」



ディアッカの泣き言にすっぱりと切って捨てたニコルである。



ディアッカとニコルの攻防を見ながら傍観者体勢を整えていたラスティは
ディアッカに少しだけ哀れみの視線を向けるとすぐに中央付近で喚いているイザークと
いつもの無表情の状態でいるアスランの姿を見ていた。




(イザークの奴、アスランが不機嫌だということ・・・本当に気付いていないのか?)




ラスティは内心首を傾げ、室内に掛けられている時計に視線を送った・・・。






時計の針は予定時間を刺しており、部屋の扉が開いたと思った時にはこの時間の教官が姿を現した。



「全員、揃っているな? 今から、実技をかねた白兵戦の訓練を行う。 すぐにペアを作れ!」

「アスラン! 俺と組め! そして、勝負だっ!!」



教官の言葉に一番早く反応したのはやはりと言うべきかイザークであった。




毎回恒例となってきているイザークの発言に教官もため息をつきつつ
ライバル同士がペアを組んだほうが記録が伸びることを知っているためか黙認していた。







・・・後から考えれば、この時に止めておかなかった教官にも非があるのだが・・・・・。




しかし、アスランが不機嫌だったということに気付かなかったのだから、仕方がないのかもしれない・・・・・。






こうして、イザークとアスランはペアを組むことになりイザークが白を選び、アスランは紫を選んだ。




彼らが肩に掛ける紐の色は何でもいい。
自分の好きな色を選ぶ仕組みとなり、基本的にはその紐を切ったほうの勝ちである。
だが、それでも負けを認めない場合に相手が再起不能まで戦うのはこの訓練が実技をかねているからである。
そのため、毎回この訓練には死人は出ないがそれでも入院者が続出するのだ・・・・。
(素直に負けを認めるのが吉)





順番はクジで決まり、アスラン・イザークペアは最後となった。







自分たちの引いた番号が呼ばれ、
続々訓練をしていくほかのアカデミー生たちを静かに見ていたアスランと
比較的叫ぶのを我慢しているイザークの姿が終始見られた・・・。






ニコル・ラスティ・ディアッカもそれぞれペアを決め、
それぞれが勝利を収めて再び彼らの様子を見ていた。
もちろん、彼らの相手になった者たちは素直に自分の負けを認めると病院送りを逃れた。






そして、彼らの前の組が終わると内心ため息をつきながら最後の番号をコールし、
その声に反応したアスランとイザークは中央に設置されているステージ・・・今回の訓練場所に移動した。








アスランが所持している武器は長身サイズの刀(双剣)である。
もちろん、その刃は真剣を隠すために厳重に封印されている。




イザークが所持している武器は普通サイズの刀を手にしていた。





彼らは双方とも剣術が得意分野であった・・・・・・。







彼らの使う剣はそれぞれ自分たちの所持している持ち物でもある。
武器を最初から所持していない者たちには貸し出しをされるが基本的に自分の武器を所持する者が多い。
特に、アスランやイザークなど評議会議員の子息などは日常茶飯事に誘拐などがあるため、
その防止のために日ごろから武器を所持しているのだ。
そのため、彼らの持っている武器は彼らにとって使い慣れた武器でもある。





教官の「始め!」という合図がされたと同時にイザークが瞬時にアスランの懐に飛び込んだ。
だが、そのことを予測していたのかアスランはイザークの獲物にかすることなく避けると
その反動を利用して右手の剣をイザークに突きつけた。




その鋭い突きに紙一重で避けたイザークは舌打ちをしながら間合いを取り、相手の様子を探った。
そんなイザークを一瞥したアスランは臆することなく両手に持つ双剣を振るう。






その剣捌きにギャラリーと化していたほかのアカデミー生たちは彼らの攻防の激しさに目を回し、
やっとのことで追いつくことのできる彼らの能力に近いニコルたちもまた彼らの戦いを見ていた。





中央で剣を交えているアスランとイザークはそんなギャラリーの視線を一切無視し、
目の前にいる相手だけに集中していた。






アスランの持つ双剣が真剣のままだったとしたらイザークの髪は切れていただろうという目敏い部分を切っていたがイザークの剣は長さからのハンデを抜きにしても一度もアスランに届いてはいない。アスランは自身に近づく一歩手前で全て交わしており、周りからは分からない程度の変化だが、トップクラスを独占するニコルたちにはアスランの不機嫌度がさらに増したということに気付いた。





それを証明するかのようにアスランの表情は今まで通り変わることなく無表情のままだがその瞳が表情を裏切っている。
元々熱を持たないエメラルドの瞳だが、今ではその色に少しだけ冷たくしたような色を見せていた。
その変化にいまだ気付いていないのは目の前にいるはずのイザークであった・・・。



「イザーク、何であんなに近くにいるのに気付かないんでしょう?」

「さぁな。 多分・・・“打倒・アスラン”に燃えているからだと思うが?」

「・・・だろうな」



アスランの瞳が変化したということに気付いた3人は改めて気付いていないイザークに視線を送ったが
ラスティの言葉通りに燃えているイザークはその親切心で向けた視線を綺麗に無視・・・いや、
気付いてはいなかった・・・・・・。





彼らが小声で話している間にも彼らの攻防が続き、アスランの一振りによってイザークの結んでいた白色の紐が真っ二つに裂けた。



「勝者、アスラン=ザラ!!」



教官のコールによりアスランが勝利したことを宣言されたがここはイザーク。
素直に負けを認めなかった・・・・。





「アスラン! もうひと勝負だ!!」



・・その一言に不機嫌さのオーラを纏っていたアスランはよりいっそう黒いオーラを放出した・・・・・。




そして、イザークを見据える双方の瞳には今までの色を完全に無くし、
ただ冷たい色しか残されていなかった・・・・・。





「・・・・・。 いいだろう・・・・。 だが、後悔はするなよ・・・?」



アスランは冷たい視線をイザークに向けると自身が今まで握っていた双剣を
先ほどまでいた自分の場所に置くと後ろで髪を束ねていたゴムを引いた。
ゴムによって束ねられていた髪は縛るものが無くなり、重力に任せて靡きながらアスランの肩まで落ちてきた。





イザークもまた、自身の剣を置くとアスランに向かって走りだした。



イザークは走りながらも拳を振り上げ、
アスランに襲い掛かったがアスランは先ほどのように綺麗に全てを避けるとすかさず蹴り技を繰り出す。
アスランは肉弾戦となると手を使わず、足技のみを使用していた。





イザークの拳を全て避けながら僅かにできる隙を逃すことなく攻撃を仕掛けるアスランに
呆然と見ていたギャラリーは尊敬と畏怖の視線を彼に注いでいた。






その間にも逆立ちを応用したかのようにイザークを蹴り上げた衝撃を殺すことなく
そのまま床に手をつかせながらも攻撃を止めてはおらず、確実に相手の弱点を狙っていた。






アスランはイザークの腕に向かって思いっきり蹴りを入れると鈍い音が室内に響いた。










―――― ボキッ!




「腕がっ、腕が!!!!」

「・・・・だから言っただろう? 後悔をするなと」



イザークの叫びに煩そうに顔を顰めたアスランは無防備になっているイザークの首筋に手刀を落とし、
イザークを失神させた。



「・・・ディアッカ、医務室に連れて行け。 ・・・・安心しろ。 綺麗に折ったから・・・治りは早い」



アスランはそれだけを言い残すと冷たい瞳のまま自身の所有物である双剣を手に自室へと戻って行った・・・・。














すみません(T-T)
全然、ディアッカ視点ではないですね;
いつもと変わらない・・・第3視点になってしまいました(ォィ)
まぁ・・・気を取り直してっ!
アス・・いえ、プチザラ様がご降臨なされましたv
イザークの腕(左)を綺麗に折ってしまいましたね(ブルブル)
最後のセリフは・・・冷たい瞳のまま言っております。
この程度でよろしかったでしょうか?
まだ、足りませんかね?(ぇ)
ご感想、お待ちしておりますv





2006/04/06