「シン、レイも。 何をやっているんだ!」



薄暗い部屋の中。部屋の中にある光といえば、彼らの使っているパソコンからもれる僅かなもの。
彼らは、2年前のあの戦いから今まで最強と謳われる“虚空の天使”・・・『ZGFT-X10A FREEDOM』。
俺が2年前に乗っていた『ZGFT-X09A JUSTICE』の兄弟機。
そして、俺の最も大切な者が乗る機体・・・・。
その機体が今まで残してきた戦闘のシュミレーションを行っていた。





FREEDOM』はパイロットの意思で決してコックピットを狙わない。
それは別に自分の力を過信しているわけでも相手を見縊っている訳でもない。
FREEDOM』がコックピットを狙わないのは相手の命を敵だとしても奪わないためだ・・・・。









Reason
    ― エンジェル・ダウン ―









突然にも【プラント】から世界中のメディアを通して宣言された『ロゴスを滅ぼす』。
この宣言によって各国の民衆たちは‘デュランダルコール’を響かせた。
だが、次々に映し出される顔は各国のトップとも言える者たちであり、
地球上に存在する国で“ロゴス”の表の顔である“グローバルカンパニー”と関わりのない国など存在はしなかった・・・。

その放送はフェイスの称号を有する者が乗艦している艦・・・『ミネルバ』でも流れており、
自国の議長の宣言に誰もが心酔しきった表情を見せている中、
宵闇の髪とエメラルドの瞳を持つ青年・・・アスラン=ザラだけは不審そうな視線を向けていた・・・。

与えられている部屋に戻ったアスランは先ほどの放送について調べるべく、
ザラ家のコロニーを経由してのザフトのマザーへのハッキングを開始した。

アスランのハッキング能力はキラほどではないが、それでも【月】に住んでいた頃に
キラのハッキングした後の後始末をしていただけの能力はあり、
いくつも仕掛けてあるトラップを潜り抜けながら厳重にロックされたものを解除した。




(『エンジェル・ダウン』!? エンジェル・・・『Archangel』か! 議長はAAも落とすつもりか?)




マザーにハッキングしたアスランはそれを経由して【プラント】にある最高評議会マザー・・・議長の個人PCにハッキングを掛けていた。

議長のPCの中で一番厳重にロックが掛けられていたものを解除し、
中身をチェックしていたところ彼の最も愛する者が乗艦している艦
Archangel』の追撃命令に彼が今乗艦している『ミネルバ』への命令が入っていた。



「・・・AAを追撃!? 馬鹿な、議長は『敵はロゴス』だと!!」



アスランは思考が悪い方向に行っていることに気付き、頭を振るって自分の考えを否定した。
しかし、目の前にあるデータを前にそのことを否定することはできず、自身が何を望んでいるのかをこの時、改めて実感した。



「俺は、またこの手でキラを殺すためにザフトに複隊したんじゃない・・・。 キラを守るためだ。 ・・・ザフトが彼女を撃墜するというのなら・・・、俺は再び彼の艦に戻ろう・・・・」



いかなる時も身から離さずに首から掛けているアメジストの宝石が埋め込まれた十字架を手に取り、
この場所にいない最愛の者を思った。

一方、『ミネルバ』のブリッジでは先ほどの声明に呆気に取られている副艦長とどこか考え込んでいる艦長の姿があり、
警報のなっていないブリッジでは若干緊張感のないクルーたちが常務をこなしていた。



「艦隊司令部からの入電です」


「『ミネルバ』はこれより発令される『エンジェル・ダウン』を支援せよ・・・・!?」


「え!?」



オペレーターの言葉に反応した副艦長が司令部からの命令文を読み上げ、
その命令に対して艦長・・タリア=グラティスは驚きの声を上げた・・・・・。

その頃、アスランの最愛のものが乗艦しているAAでは唯一のパイロットに対し、
その姉だと公言している者が周りには見えない場所を狙っての傷付けを繰り返し行っていた。

事の始まりは彼女たちが【オーブ】から元国家元首を連れ去って本国を脱出した頃からになる。
当初は寸前に食い止めることができたが、アスランがザフトへ複隊したと知った時からこの行為はエスカレートして行った。
危険が及ぶ前に逃げてはいたのだがこの所精神的・肉体的に追い詰められていた。
かつて心が崩壊する寸前になるほど均等の崩れかけていた艦に乗っていることに対してもやはり無意識のうちにストレスを溜めている。
それだけではなく、この少女にとっても最愛と呼べるアスランが再び敵となって現れていることもストレスとなっている。
また、2年前の大戦が彼女の中でいろいろな葛藤を生み出し、心を許す者がいないと安心して眠れないのだ。
もちろん、その心を許す者とは皮肉にも敵となってしまったアスランなのだ。
アスランが【プラント】に向かった次の日から眠れない日々が続き、今ではまったく眠っていない。



「なぜアスランは私の元に帰ってこないんだ!?」


「カガリ・・・」


「なぜ、あの時連れ戻さなかったんだ!!!」



ブラウンの髪とアメジストの瞳を持つ少年に対して八つ当たりをしている少女がいた。
金髪の髪をした少女の言葉に傷ついた表情を見せている少年・・・キラ=ヤマトのことを一切も気にもせずに
ただ責めるだけの言葉を投げつけていた。



「カガリッ! ちょっと言いすぎよ? 貴女だって何もしていないじゃない!!」


「私はコイツに連れ去られただけだ。 私を迎えに来なければならないのは婚約者であるアスランだろう?」



カガリの言葉にショックを受けたキラに気付いたのは同じカレッジに通っていた少女だった。
キラを大切に思っているこの少女・・ミリアリア=ハウがカガリ=ユラ=アスハの一方的な責めに対し仲裁に入った。
仲裁に入ったミリアリアの言葉に反論したカガリは自分の言葉が当然とばかりに言い張った。



「・・・大丈夫だよ、ミリィ。 ・・・ちょっと、疲れたから・・部屋に行くね」



キラは儚く微笑むとそのまま振り返ることなく自分の部屋に戻っていった・・・。

キラの背中に憎しみを込めて見ていたカガリに対し、冷めた視線を向けていたミリアリアにカガリは気付くことなく、
怒りを込めながらキラと逆の方向へ向かって行った。




(・・・いつ、アスランが貴女の婚約者になったの? アスランは、前からキラしか見ていないのに・・・)




アスランは2年前【オーブ】から脱出した時、常に行動はキラと一緒だった。
部屋割りも彼らのことを知ったマリューの計らいで同室になった。
AAと後に彼らの所属艦となったエターナルでは彼のことを温かく見守っていた。
ザフトで無表情だったアスランとAAで儚く、
そして控えめにしか笑みを浮かべなくなったキラが今までにない表情を彼らに見せることから、
決して彼らを引き離すことがないようにしてきたのだ。
彼らは、自分たちの陣営で誰が一番犠牲を払ってきたかを知っていた。

人の命は全て儚いため、天秤に掛けるべきではないが多くのものを失ったという意味では彼らが一番多いだろう。

このことをキラの強い味方であるピンクの歌姫に伝えようとしたミリアリアだが、
彼女は今地上ではなく宇宙へ向かっているために伝えることが不可能だった・・・・。

マリューたちにもまた、カガリから暴力を受けているキラが告げないために
エスカレートするが傷はどれも服に隠れる場所のため、キラが告げない限りばれることがない。
ミリアリアが偶然医務室にいなかったらミリアリアにも気付かれることがなかっただろう。

その頃、未だにミネルバに乗艦しているアスランはキラが昔製作したハッキングプログラムを使用して
近くにいるだろうキラが乗艦しているAAの捜索に当たっていた。
それにはミネルバに気付かれないように注意しながらだが
捜索の前にミネルバのブリッジにある探索を一時的にだが無効化にした。
そのため、ブリッジではアスランがハッキングしていること自体気付いていないだろう。

「早く、見つかれ!! ・・・キラっ!!」



アスランは先ほど入手した情報に焦りながらも正確なタイピングで捜索範囲を徐々に広げていった。








2006/04/22















SEED&DESTINY展示室部屋にある長編・【制裁】と同じ設定である
DESTINY本編・『悪夢』設定でお送りします。
本編を見直して気付いたんですが・・・【制裁】は、
『悪夢』の最後辺りから。
こちらは、『悪夢』の最初辺りですv
本編では“エンジェル・ダウン”を決行されていますが、
こちらでは決行される前に先制攻撃をされます。
この話は、リクをされた方であるチロロ姉様以外はお持ち帰り禁止ですv
この話をリンクする場合はちゃんと持ち帰ってくださいねv
背景、文字の列を変えるのはOKですが、
著作権は放棄してはおりませんので(^-^;)
この話のどこか又はこの話をリンクする場所に必ず、
【水晶】と遠野 真澄と表示してください!
もちろん、返品・修正可です(爆)