《4名確認。 カタパルト開放。 『ジャスティス』、『デュエル』、『バスター』、『ブリッツ』発進してください!》


「アスラン=ザラ、『ジャスティス』、発進する!!」


《イザーク=ジュール、『デュエル』、出るぞ!!》


《ディアッカ=エルスマン、『バスター』、行くぜ!!》


《ニコル=アマルフィ、『ブリッツ』、発進します!!》




君を傷つけ、君の優しさを踏みにじってきた者たちにそれなりの代価として、報復を与える。
戦争は・・・もうしばらくしたら終わると思うよ?
そしたら・・・・俺の望みを叶えてもいいかな?
この戦争を終わらせて、君と約束を・・・叶えたい。






モノクロの世界で、
唯一の光であるアメジストを盲目的に求めるエメラルド・・・・。
自身を狂気と正気の間で繋ぎとめる輝きを求めて、
漆黒の闇に飛び立つ“正義”の名を冠する彼の機体は、何を求めるのか・・・・・・。











Belive
  ― 比翼は永久に・・・・ ―











その頃、AAのブリッジでは急なザフトの攻撃に戸惑っていた。


この艦ではもう艦に装備されている武装以外を防衛に使えるものはなかった。
MSのパイロットは先の戦闘の折に敵のMSを庇って味方艦であるAAに撃たれ、
味方だと思っていたMAのパイロットとブリッジにいた操縦士は敵軍のスパイだと知り、
彼らの土気もまた消失していた。


しかし、彼らには重要だと思っている任務のため、
彼らの目的地でもある月基地に向けて何とか進行をしていた。




そんな時、今まで何の警報も起きなかったがいきなりレーダーが反応を示した。



「艦長! 機影に熱源を確認!! その数、6です!!」

「6ですって!?」

「はい!! 今、照合中です! そのうち2つは・・・ローラシア級とナスカ級と断定!!
MSの熱源も感知!!」

「『デュエル』、『バスター』、『ブリッツ』と断定!
・・・!?残り1機、照合ありません!!新型のようです!!」



CICに座っていた少女兵・・・ミリアリア=ハウは、
いきなり現れた熱源に驚きを隠せないまま上にいる艦長に報告を入れた。
マリューはミリアリアからの報告に驚きを隠せないでいたが、熱源の数字に背中から冷たい汗が流れてきた。


その予感は、ミリアリアの隣に座っている少年兵・・サイ=アーガイルの報告により、
自分の予感が当たっていたことに内心落胆していた。



「新型ですって!? ・・っ!! 第一戦闘配備!!
『ゴットフリート』、『バリアント』起動。 ミサイル発射官、『イーゲルシュテルン』、『ヘルダート』全門総点!!」



マリューの言葉にナタルは、AAを武装する全門のミサイル発射官を急速に開かせた。



「我々を守る武装は、この艦に武装されているものだけだ!!
なんとしてでもこの艦を地球に持って行かなければならない!!」



頭から軍人として訓練されているナタルはそのようなことを言いながら戦闘準備を整えた。


この中で、何人の者がこの戦闘が無意味なことを知ったのか分からなかった。
だが、結果は火を見るからに明らかなのは確かなことであった。




宇宙に出たアスランは自分の新しい機体に以前まで乗っていた愛機『イージス』と同じように、
高速機能を搭載されていることに気付き、残り3機を残して単独でAAに向かった。


アスランの近寄りがたい冷たい空気を肌で感じているイザークたちにとって、
単独行動を起こしたアスランに文句を言おうと通信を開く勇気はなかった。





アスランはAAが完全に戦闘態勢を整え終わる前にAAのブリッジまで到達し、
『ジャスティス』に搭載されている全ての砲弾をAAのブリッジに向けた。



撃たれると感じたAAのブリッジだったが、なかなか撃ってこない目の前の見知らぬ機体に、
戸惑いを浮かべたマリューだったが、チャンドラからの報告に現実へと戻った。



「艦長!! 強制的に通信が送られてきます!!」



この言葉を言い終わらないうちに、
誰も操作をしないメインモニターに赤いパイロットスーツを身に纏った1人の少年の姿があった。




《オヒサシブリとでも言っておきましょうか?
俺の唯一の者を利用するだけしたこの世で最も醜いものたち!!》




ヘルメットが取られている藍色の少年の目から深い殺意とも言える憎悪を感じたクルーたちは、
無意識に震えていた。
そんな様子を見ながら冷笑を浮かべていたアスランは淡々と・・しかし一方的にクルーたちに話しかけた。



「俺は、お前たちを許さない。
キラは戦いを・・・この戦争を一番憂いていた。 そして、この戦争を一番嫌っていた!!
だから、中立である【ヘリオポリス】に移住した!
・・キラだけだったら、俺たちの本国である【プラント】に移住することも可能だが、彼女は一世代目。
・・彼女の両親はお前たち同じ『ナチュラル』だ。
だから、【ヘリオポリス】に移住した。 ・・・だが、そんな彼女をお前たちは巻き込んだ!
MSの開発? そんなもの自分たちの基地で造ればいいものを。 なぜ、中立国をも巻き込む!?
なぜ、民間人を乗せたまま投降もせずに戦う!! お前たちは条約を忘れたのか?
それとも、自分たちの命が民間人をこの宇宙にたった1人で追いやってまで守る価値があるとでも?
キラは、民間人でもあるし俺たちの同胞である『コーディネーター』だ。
そのことは最初に気付いただろう? なのに、なぜMSに乗せる!?」


《っ!! 貴様たちが攻めてくるからだろうが!!
この艦にMSに乗せれるほど人材がいない。ならば、それに乗れるものが乗るのが筋だろう!?
・・この艦にいれば、自らを守るためにその力を使うべきだ》


「・・・貴様は愚かだな? 乗れるからと言って乗せるのか?
軍事機密といっても、すでに4機我々に奪取された。 その状態でまだ、軍事機密と言っているのか?
キラは民間人だ。
いくら乗れるからと言って、何の訓練も受けていない状態であるキラに対して、
俺たちが容赦なく攻撃を仕掛け、最悪な事態を想定していなかったのか?
キラのご両親にあったとき、貴様たちはなんてあの人たちに謝るつもりだったのだ?
お前たちの勝手な判断で民間人であるキラが戦争に嫌でも巻き込まれ、
人質を取って自分たち軍人を守らせた挙句、死なせた・・。
その事実をどのようにして伝えた? ・・・・貴様たちはどこまで腐っている?
キラをお前たちの軍に繋ぎとめるためにオーブ本国に避難した彼女のご両親を拘束し、
人質として身柄を監禁した上に彼らが協力をしないからと言って事故死と見せかけて暗殺したお前たちが!!」


《!!??》


「俺は、お前たちを許さない。 ・・・己の罪、死をもって償え!!」



アスランはそのように呟くと強制的に通信を遮断し、向けていた砲弾を一斉に発射させた。



全てが命中し、一瞬のうちにザフトから『浮沈艦』と呼ばれたAAは跡形もなく爆発を起こした。



「・・・俺は、あの人たちがいたから『ナチュラル』を全て憎んではいなかった・・・。
・・・だが、お前たちはその人たちも巻き込み、そして死なせた!
・・・・俺は、もうお前たちを許さない。
・・・キラを捕らえ、開放せずに利用するだけ利用したお前たち『ナチュラル』を!」



アスランは沈んでゆく『浮沈艦』を無感情な瞳で見つめ、
エメラルドの奥に燃え上がる憎しみの炎が渦巻いていた。






それから事実上クルーゼ隊が・・いや、アスランの率いるザフト軍は連合の宇宙基地である月基地を壊滅させ、
宇宙にいる連合軍を一掃した。



これにより、宇宙にいた連合軍はザフトに一掃され、
宇宙へ攻める予定だった連合も自分たちの基地を破壊されたために宇宙へ攻めることができなくなっていた。



「・・・これで、宇宙にいる者たちは一掃できたな。 ・・・・後は、地上か」

「あぁ。 ・・・といっても、パナマとアラスカを叩けば早いじゃん?
ま、次の攻撃目標はパナマらしいが・・? アスランの奴・・アレから変わったよな」

「・・・誰だって、自分の最愛の人が目の前で亡くなってしまえば変わってしまいますよ。
あの人は、戦争なんて場所が一番似合わない人なんですよ」



イザーク、ディアッカ、ニコルの3人はアラスカの攻略のため地上へ降りることになっているが、
その発進準備のため待機室に自然と集まっていた。



しかし、その中にもう1人のパイロット・・アスランの姿はなく、
そんなアスランに注意をする人物もこの中にはいなかった。



「・・・分かっているさ。 ・・・あいつが一番、連合に対して憎しみを持っているだろうな・・・」



ディアッカはそう呟くと漆黒の闇が広がる宇宙を見渡した。

彼の呟きは、部屋の中にいた2人にも重く感じさせた。



「アスランの中でキラさんが全てだったんでしょうね。
・・一度だけ、写真を見せていただいた時があったんです。
キラさんのお話をなさっている時だけ、表情が一瞬柔らかくなりました」



ニコルはそのときのことを思い出しているのか、にっこりと微笑を2人に見せた。



ニコルの予想通り、アスランの世界はキラが全てであった。
キラと出会う前のアスランは何事に対しても関心がなく、母であるレノアを困らせていた。
彼自身、そんなレノアを心配したのだが感心するものがないことに何の違和感も感じてはいなかった。




そんな時、【月】へ避難してきたヤマト一家と出会った。
レノアとヤマト婦人・・カリダは友人同士だったらしく、子ども同士で遊ぶことが多かった。
そのため、彼らが友達になるのにあまり時間がかかることがなかった。


その様子を近くで見ていた双方の母親たちは、
密かに自分たちの子どもを結婚させる計画がこの頃から話されていたという事実を彼らは知るよしはなかった。



しかし、彼らはこの時期がお互いにとってとても大事で、そして・・一番平和な時でもあった・・・・・・・。







その後、彼らクルーゼ隊は地球降下を果たすと最初にパナマを叩き、
主力部隊をアラスカに閉じ込めて一気に基地を破壊した。
この地上戦でも、クルーゼ隊・・・主にアスランの愛機である『ジャスティス』が戦場を駆けた。




今、彼の中にある思いはキラが最期に願ったこの戦争の終結であった。


その願いを叶えるべく、アスランはその思いだけでこの戦場を駆け抜けた。




彼の中に在るのはキラの願いと最愛の人を奪った地球軍への復讐の2つだけであり、
その2つが今の彼が存在する意義となっていた。





パナマ・アラスカが崩壊し、地球軍のトップであるブルーコスモスを一掃したザフトはこの戦争の勝者となった。
こうして、1年にも及ぶプラント・地球間の戦争はコーディネーターの完全勝利となり、この戦争を締結させた・・・・・・・。







【プラント】にてクルーゼ隊は英雄扱いを受けたが、そこにアスランの姿はなかった。



アスランはヴェサリウス・ガモフと一緒に【プラント】へ帰還し、
そのまま軍本部に出頭したがその後の足取りが不明となっていた。

彼の父であるパトリックもまた、彼の所在を知らないと首を横に振った。


彼の同僚の‘紅’3人組もまた自分たちの使える全ての情報網を駆使してでもアスランの所在を掴もうとしたが、
どの情報にもアスランは引っかかることがなかった。







その頃、全てのメディアから自分の所在を隠したアスランはキラを安置している屋敷に戻ってきていた。



アスランはキラの眠る部屋へと赴き、今まで代わることのなかった表情を柔らかなものへと変化させた。



「・・・・ただいま、キラ。 約束どおり、戦争を終わらせたよ?
・・・もう、君を脅かすものは何もない・・・」



アスランはニッコリと微笑を浮かべるとキラの頬に触れるように優しくガラスを撫でた。
この屋敷は外部との連絡を一切受け付けないため、
屋敷に聞こえるのはアスランがキラへ伝える言葉と外から聞こえる鳥たちの鳴き声、
そして・・・キラとアスランの周りを飛び回るトリィの機械音とアスランとキラの近くに転がるハロの機械音だけだった。


しかし、今の状況はアスランにとって一番心の休まるものでもあった。





その日から数日間、彼はこの屋敷で過ごした。
食事・睡眠など一日の殆どをキラの眠る部屋で過ごし、幾度となくキラに話しかけていた。



「・・・・キラ・・・・。【月】に帰ろうか・・・。
俺たちが一番幸せだと思った・・・あの美しい思い出の詰まった俺たちの故郷へ。
・・・桜・・見に行こう?」



アスランはこの屋敷に連れて来てから一度も開放しなかったカプセルを開け、
壊れ物を扱うかのようにキラを抱き上げた。

キラの冷たい額と頬・・・そして唇にキスを落とすとアスランはニッコリと微笑みながらトリィとハロを呼び、屋敷を後にした。


屋敷に沈黙が残り・・これから去ってゆく主人たちをただ静かに見つめていた・・・・・。






キラを連れたアスランは、この屋敷のあるコロニーへ『ジャスティス』と一緒に来ていた。


アスランはキラがまるで生きているかのように扱い、
キラに少しでも衝撃がないようにと最善の注意を払いながら『ジャスティス』のコックピットの中に入った。



「・・・・キラ、ちょっと衝撃があるだろうけど・・俺がついているからね?
・・帰ろう・・? 俺たちの故郷である、【月】へ・・・・・」



アスランはもう一度ニッコリとキラに微笑むとパイロットスーツなしでMSを動かし、宇宙空間へと飛び出した。



向かう先は・・・彼らが共に過ごした思い出の地・【月】に向けて。




【プラント】に気付かれることなく無事に【月】へとたどり着いたアスランは月基地の跡地に『ジャスティス』を固定し、
キラを抱き上げて月面都市・【コペルニクス】を目指し、近くでエレカを借りながら中心部分へと進んだ。


彼らが住んでいた場所は、【コペルニクス】の中心部で幼年学校から近い位置に住んでいたこともあり、
アスランは迷わず自分たちが通っていた幼年学校方面へとエレカを走らせた。



彼らが住んでいた地区では、ちょうど桜が満開らしく、たくさんの桜の木が満開の季節を迎えていた。



「・・・もう、桜の季節だったのか・・・・。
・・・・キラ? キラが大好きだって言っていた桜だよ?
・・・少し、このあたりも変わってしまったな・・・・。 桜・・吹雪・・・・か」



アスランはキラに向かってニッコリと微笑み、そのまま視線を上にもっていき、
儚く散ってゆく桜を見つめていた。

しばらく桜を見つめていたアスランだったがいきなり強風に近い風に覆われ、
散ってゆく桜が風に覆われて宙へ舞い上がった。

その様子はまるでピンクの雪が舞い上がるようにアスランには思えた。



しばらく桜を見ていたアスランだったが、再びキラを抱くと着た道のりをそのまま戻り、
『ジャスティス』に乗って漆黒の闇である宇宙へと出た。




月の軌道近くまで『ジャスティス』を動かしたアスランは不意にその操縦をやめ、
自分の膝の上に壊れ物のように乗せているキラを見つめた。



「・・・キラ・・。 キラが望んだ通り、戦争を終わらせたよ・・・?
だから・・・俺もそっちに逝ってもいいよね・・・?
大丈夫。 ちゃんとトリィたちを連れて逝くから・・・・・」



アスランは優しくキラのチョコレートブラウンの髪を梳いていたが、彼の瞳に僅かに濁った色が見えた。


彼は本人の自覚にないまま、彼の心は壊れていた。
アスランにとってキラはアスランの世界で唯一色を見せる者であった。

彼女の死後、アスランの瞳にはモノクロでしか周りが見えておらず、
そのことに彼自身違和感を感じてはいなかった。


彼は今まで、キラが最期に残した願いを叶えるべく戦場に身を置いていた。
そして、その願いが彼を動かす原動力となっていた。

その戦争が終わった今、彼の唯一の願いはキラと一緒にいることであった・・・・・・・・。




アスランはキラの額と唇に触れるだけのキスを落とすと懐に隠していた小型の銃を取り出した。






―――――― バンッ!






サイレンサーのない銃はコックピット内で音を立て、紅い液体がコックピット内のいたるところに飛び散った。



アスランは自分で急所を外して銃で撃ち、
撃った銃を自分の手から離して震える手で予め設定されていた自爆装置を開いた。
自爆装置のふたを開け、4桁の自爆コマンドを入力した。



「・・・この・・・・機・・・体の・・・・・自爆・・・・・・コマンド・・・・はね・・・キラの・・誕生・・・・・・日・・・なん・・だ・・・・」



アスランはキラ限定で見せる微笑を血の気のない顔で浮かべ、キラの髪を優しく梳いた。





『0・5・1・8』





入力し終えたアスランは画面に出る自爆までの時間を見つめた。
彼らの傍には予め電源を切られていたトリィとハロの姿があり、トリィはキラの掌に乗せていた。




アスランは今まで以上に優しい笑みを浮かべ、
キラの頬や髪を撫でていると闇に包まれているはずのコックピットに明るい光が差し込んだ。






〔・・・・馬鹿だよ・・・アスラン。・・・・自分から、死を選ぶだなんて・・・・〕




――― ・・・かもしれないな。
・・・だが、俺にとってキラのいない世界は生きていても何の意味もない。
キラだけが俺にとっての存在意義なのだから ―――




〔・・・・それでも、僕は君に生きていてもらいたかった・・・・〕




――― キラのいない世界で生きたとしても、そんなもの俺にとって、幸せじゃないさ。
昔、キラに話しただろう? 俺の幸せは、キラと一緒にいることだと・・・・ ―――




〔トリィ、一緒に連れてきたんだ?〕




――― もちろんだ。トリィとハロはキラの大切な友達だろう?
・・・それに、トリィたちも一緒のほうがきっと嬉しいはずさ ―――






アスランはニッコリと微笑を浮かべると自分に差し出される手をとるため、自ら手を伸ばした。


二人の手はしっかりと握られ、アスランは下に見える自らの肉体を見つめ、隣にいるキラを見つめた。







〔キラ、迎えに来てくれてありがとう〕



〔・・・約束・・だもの。 ・・・ねぇ、アスラン?〕



〔なんだい、キラ?〕



〔僕たち、ずっと一緒だよね? もう、引き離されたりしないよね?〕



〔当然だろう? ・・・もう二度とこの手を離さないよ、キラ〕







アスランは自分の隣にいたキラを引き寄せ、力強く抱き締めた。


そんなアスランにキラもまた、縋りつくように抱き返した。







〔うん・・・うん。 僕も、君以外をもう選ばない。
・・・・僕が安心できる場所は・・・アスランの傍だけだから・・・・〕



〔俺もだよ、キラ。 ・・・・逝こう?
きっと向こうで母上たちが待っていてくれているはずだから・・・。 あの頃のように・・・・〕



〔小母様が? ・・・・父様たちもきっと一緒だよね。
・・・・うん。 逝こう? 母様たちのところへ・・・〕







実体のない2つの光はお互いに寄り添い合うようにしながら天空へ向けて歩きはじめた。




彼らが目指すのは遠くにある天空につながる扉であった・・・・。







その扉が閉じた時、
すでに魂のない2体の亡骸を乗せたものを言わない巨体・・『ジャスティス』はカウントがゼロとなり、
大きな音を立てて自爆を始めた。
まるで・・・自分と共に戦っていたアスランの後を追うかのように・・・・。








『ジャスティス』の自爆は遠く離れた【プラント】の軍本部でも情報が届き、
今までアスランの居場所を必死に探していた3人の同僚とラクスは、その情報に静かに涙を流した・・・・。



「・・・やはり・・・遅かったのですね・・・・。 ・・・ですが、漸くお2人一緒ですわ。
・・・こう言うわけにはいかないのでしょうけど・・・お幸せになってくださいませ、アスラン・・・キラ・・・・・」



ラクスは涙を流しながらも微笑み、アスランとキラに祝福を願った。

ラクスにはアスランの精神状態を誰よりも理解していた者だった。


それ故に、戦後にアスランが決断するであろうことに対し、
危機感を感じこうして同僚であったニコルたちの力も借りて必死にアスランを探していた。



「・・・・きっと、アスランはキラさんのいないこの世界は苦痛でしかなかったんですね・・・・・」

「・・・それでも戦争終結のために戦ったのはあの姫さんの願いだった・・・からか」

「俺たちは奴を責めることはできない。
・・・奴にとって『ストライク』のパイロット・・・キラ=ヤマトは奴の中で全てだったんだろうからな・・・・」

「そうですわね・・・。 この平和となった世界は、残された私たちが守らなければなりませんわ。
キラが平和を望み、そしてアスランがキラの願いのために平和を取り戻したこの世界を・・・」



ラクスの言葉に3人は頷き、再び各自の持ち場へと戻っていった。



ラクスは部屋の中で外を見られる場所まで移動し、ここから遥かに離れた宇宙へ思いをはせた。





(・・・ご安心なさいませ。 あなた方が望まれたこの世界はきっと私たちが守って見せますわ・・・・)





ラクスはゆっくりと瞼を閉じ、一度だけキラの見せた儚い笑みを思い出しながら心の中で呟いた・・・・。







〔今度こそ、一緒だよ? ・・・キラ、俺はお前を愛しているよ・・・・〕



〔うん。 ・・・もう、二度と離れない。 ・・・・アスラン、僕も愛している・・・・〕







―――――― もう、この手を離さない ―-――――









END.








2006/05/15

修正
2007/03/31















【Believe】、最終話をお送りいたしました。
サイト傾向どおり、最終的にはアスランもまた自爆してしまいます。
彼にとって、キラのいない世界で生きたとしても、
本当の安らぎを得られないからです。
最終戦辺りは・・・思いっきり手抜きしておりますが、
本来の目的は最終戦ではなく、『アスキラでの死にネタ』ですからv(開き直り)
リクエスト・・・クリアしておりますか!?
リクエストしてくださり、誠にありがとうございました。
ダメ文ですが・・・この話で少しでも泣けていただけたら幸いですv(ぇ)
瀬奈に限り、修正・加筆のコメントを受付!(爆)