「俺たち・・・・どうなるのかな・・・・・・」

「ねぇ・・・・あの子、『コーディネーター』だったの・・・・?」

「この状況でねられちゃうってのも、すごいよな」

「疲れているのよ。 キラ、本当に大変だったんだから」

「・・・『大変だった』か・・・・・。 キラはあんなことも『大変だった』ですむもんなんだな」







・・・彼らは気づかない・・・・・。
何気ないこの言葉が後に一人の少女を傷つけることになるとは・・・・・。











Belive
  ― 望まぬ戦場 ―











彼らは中立国・オーブの資源衛星コロニー『ヘリオポリス』で戦争に巻き込まれること無く、平和に暮らしていた。



しかし、ある日を境にその平和が偽りだと知った・・・・。







C.E.71年、1月25日。
この日は、軍に所属していた者には忘れることのできない出来事が起こった。
中立国であるはずの【オーブ】にあるモルゲンレーテによって、
創り出されていた地球軍の新造艦と5機のモビルスーツ・・・後にGシリーズと呼ばれる機体を、
地球軍と敵対しているザフトがそれらを奪取又は破壊という命令を受けて、
『ヘリオポリス』に奇襲をかけてきたのだ。



しかし、4機の機体は奪取したものの、問題の新造艦と1機の機体を破壊できずにおり、
再度戦闘を仕掛けるが新造艦がコロニーをささえるシフトを切ってしまったために、
コロニーが彼らの目の前で崩壊していったのだ・・・。

「お断りしますっ!!」

コロニーを破壊して内部から出てきた新造艦・『アークエンジェル』、
通称・AAの居住区で1人の少年の声が響いた。

「なぜ僕がまたアレに乗らなきゃいけないんです!?
ここには軍人さん達がいるのでしょう? それでも民間人である僕を乗せると言うんですか!?」

「アレは君しか乗れない。 OSを書き換えたんだろう?」

「でしたら、書き換えます! 元に戻しますから!!」



金髪の青年が少年の前に立ち、肩を落としながらため息を吐いた。



「なぜ、戻す? 君も見ただろう。 あのOSはまだ未完成だった。 君が完成してくれたんだ。
この艦は投降しない。 意味はわかるな?
君はアレに乗って、この艦とそこにいるオトモダチを守らなきゃいけない。
・・・それとも、民間人だといいながら死んでいくか?」



青年の言葉に少年は、その美しい顔を悲痛にも歪めながらその場から走り出した。



「・・・俺は軍に志願します。 キラだけ戦わせるわけにはいかない」

「お・・・俺も志願します」



少年たちの言い合いに、傍観していた2人の友人達が志願した。
・・・彼らの中ではすでに、嫌がっている少年がMSの機体に乗ることを無意識のうちに決定されていた・・・・。





走り出した少年・・・鳶色の髪と菫のような紫水晶の瞳をもつ少年が無意識に向かったのは、
宇宙が見渡せる展望室であった。



「・・・アス・・・・ラン・・・。 僕、戦いたくない。戦いたくないよ・・・・。
だって、ザフトには君がいるんだもの。 でも・・・・・、戦わないとみんなが死んでしまう。
そんなの・・・、いやだ。 ・・・どうしたらいいんだろうね・・・アスラン」



宝石のようなアメジストの瞳から、真珠のような涙を静かに流していた・・・・。




『トリィ?』




少年の肩にそれまで静かに止まっていたメタルグリーンのロボット鳥が、
少年を心配しているかのように小さく鳴いた。



「・・・トリィ、僕どうしたらいいんだろうね? 戦わないとみんなが死んでしまうって・・・・・。
けど・・・・・ザフトには、アレにはアスランがいるんだ。
アスランと戦いたくない・・・。 アスランは僕にとってとても大切な人だもの・・・・」



少年・・・・本来の性別なら遺伝子上は【女性】となるはずの彼は、
友人だという少女が探しに来るまでこの場所に佇んでいた・・・・・・・。






その頃、
コロニー内で新造艦の破壊を遂行できなかったクルーゼ隊は、
AAの機影に掛からないように一定の距離を保ちながら後をつけて来た。



「・・・キラ・・・。 お前はあそこにいるのか?
・・・・俺が必ずこちらへ取り戻して見せるから・・・・・。
お前は、本来俺の隣にいるべき人なのだから・・・・・・」



紺瑠璃色の髪と翡翠のようなエメラルドの瞳を持つ少年が肉眼では確認できないものの、
戦艦内で最もAAに近い展望室の窓ガラスにその身を預けていた。



彼こそ、AAにおいて無理やり戦闘行為を強いられようとしている少年の唯一無二な存在である。



「・・・こんなところにいたんですか、アスラン。 隊長がお呼びですよ?
なんでも、『足付き』に何か変化があったそうですね」

「ニコル・・・・。 分かった。 すぐ行く・・・・・(キラ、必ず君を助け出してあげるからね)」



アスランと呼ばれた少年・・・・アスラン=ザラは、
呼びに来た若草色の髪をした少年・・・・・ニコル=アマルフィに頷きを返すと、
今一度闇に包まれている星を見つめ、星の意味を持つ彼にとって無二の存在を思った。



「アスラン=ザラ、ニコル=アマルフィ、只今出頭いたしました」

「遅いぞ! アスラン、ニコル!!」

「そう怒鳴るな、イザーク。 急に呼び出した私も悪いのだよ」



仮面をつけた白い軍服を身に纏った青年は、
アスラン達と同じ色・・・‘紅’の軍服を着ていた銀髪の少年を宥めた。



「申し訳ありません。 私が単独行動をとっていてため、ニコルが知らせに来たのです」



アスランは先ほどまでの表情から一変して、無表情で淡々とわけを話した。



「ふむ。 それでは、臨時ミーティングを始める・・・・・・・」



仮面をつけた隊長・・・・・ラゥ=ル=クルーゼは特に気にしないようにその話を終わらせ、
この部屋に集めたことを話し始めた・・・・・・・。



「・・・『足付き』は『アルテミス』へ運行しているのですか? ・・・・補給のため・・・・ですね」



クルーゼの話を聞き終わると、最初に言葉を発したのは最年少のニコルである。



「だろうな。 あの艦は十分な物資を積む前に我々が攻撃を仕掛けた。
その余裕がないのだろう。 そこでだ。 ・・・・・『アルテミス』に入られてしまう前に・・・・・『足付き』を落とす」

「「「「!!」」」」

「・・・あの艦の守りはMAと奪取し損ねたGシリーズの1機のみ。
あとは・・・・あれ本体についている火器関係だろう」

「「「「・・・了解いたしました。ザフトのために!!」」」」」



クルーゼの言葉に‘紅’達は敬礼をし、退室していった・・・・・・・。






その頃、自分たちの後ろをザフトの軍艦・・・通称『ナスカ級』と『ローラシア級』が着いてきているのにも気づかずに、
AAは目的地である『アルテミス』に向かっていた。



「このまま、ザフトに見つからずに『アルテミス』に入れたらいいのに・・・」



艦長席に座るマリューは誰にも聞かれないほどの小さな声を出していた。
AAのブリッジには、キラを抜かした『ヘリオポリス』の学生がそれぞれの位置に座っていた。
前回の戦闘でキラが無理やり乗せられた理由がここにあった・・・・。



ザフトは一度、この艦を攻撃していた。
その時、出てきた最後の一機・・・『GAT-X105 ストライク』に乗っていたのはキラである。
彼は最後まで嫌がっていたのだ。



しかし、そんな彼に追い討ちをかけたのは同じ民間人であるはずの友人達の言葉であった・・・・・・。



「キラ!! 俺たち、ブリッジを手伝うことにしたんだ!
お前だけを戦わせるわけにはいかなからな。 俺たち、友達だろう?」



キラは彼・・・サイ=アーガイルの言葉に頭を何かで叩かれたような感覚に陥った。

彼はキラが戦うと決め付けたのである。


・・・キラ本人は嫌がっている目の前で。


普通の友人ならば、己の命も顧みずに友人が嫌だというのならその意思を尊重するべきである。
しかし、彼はキラの意思よりも己の命を優先した。


彼らはブリッジに。
そして、キラはMSに。

必然的に、最も危険なのはMSである。
パイロットスーツを着ているとはいえ、生身の人間である。
コックピットの部分を、サーベルやビームライフルなのがあたれば即死は免れない。
そして・・・ブリッジにはたくさんの人がいるが、・・・MSはたった1人なのである・・・・。


彼らが・・・『地球軍』が戦っているのは『ザフト』。
つまり、『ナチュラル』が敵視している『コーディネーター』であり、キラにとっては同胞でもある。
キラが一世代目だとしても『コーディネーター』が同胞なのは変わりない。
そんな相手に彼らは『ストライク』に乗ることを強制し、無理やり乗せた。




彼らが最後に発したのはキラにとって今一番残酷な言葉であった。



「・・・君が戦わなければこの艦は落とされる。 ・・・分かるだろう?
この艦にいる君の友人達が死ぬんだ。 彼らを守りたければこれに乗って戦うしかない」



乗りたくないと言っていたキラに対して、彼は最も残酷な脅迫をしたのである・・・・・。




この言葉を言われたキラは、「乗りたくない」と主張が出来なくなった。


本来、キラは心の優しい持ち主である。
『ナチュラル』、『コーディネーター』の差別だけではなくただ単に生き物に傷つける行為を極端に嫌っていた。



「・・・キラ=ヤマト・・・・・・。 『ストライク』、行きます・・・・」



キラはパイロットスーツも着ないまま、戦闘区域でもある宇宙へと押し出された。




・・・望まない、戦いを強いられて・・・・・・。




『ストライク』を見つけたのは、赤い機体・・・アスランの乗る『イージス』である。
アスランは目の前の機体に誰が乗っているかは直感で分かった。




《キラ!? なぜお前が、そんなものに乗ってる!?》


「・・・アス・・・・? ・・・僕だって・・・・・乗りたくない・・・・よ?
けど・・・・僕がこれに乗って戦わなきゃ、友達が死んでしまうんだ・・・・・」


《キラは民間人だろう?なのに、何で!?》


「・・・この機体を・・・動かせるのは・・・・僕しかいない・・・・から・・・・・だから・・・・・
《おい!キラ=ヤマト!!貴様、何をぐずぐずしているんだ!!早く目の前の敵を落とさないか!!
お前の友人たちが死んでもいいのか!?》・・・」



アスランがキラとの通信を開いている間、AAからの『ストライク』に対する通信の関与があり、
アスランは自分との回線をつないだまま、キラとの会話を聞いていた・・・・・・・・。








2005/08/12

修正
2007/03/31















ようやく・・・漸くリクの第一話(前編?)がupできたよ・・・・。
アスキラ(♀)で、死にネタ・・・です。
設定的にはSEED時代の最初当たりで、・・・『アルテミス』攻略前ですね。
もちろん、ここでは『アルテミス』に入る前にAAは・・・・。
ですがね。
結構、本編を捏造しています。
ここでの補足はラクスとは婚約はしてはいません。
本人たちは良い友人たちです。
この話は、リクをされた方である乃亜以外はお持ち帰り禁止ですv
この話をリンクする場合はちゃんと持ち帰ってくださいねv
背景、文字の列を変えるのはOKですが、著作権は放棄してはおりませんので(><)
この話のどこか又はこの話をリンクする場所に必ず、【水晶】と真澄と表示してください!