「・・・・まぁ、今となってはそれが仇となったというわけさ。 ・・・・オーブ、この際だから潰す」
ウズミ=ナラ=アスハがいかに寛大だと言われようと、俺はそうとは思わない。
寛大ならば、なぜ『死』と言う名の逃げに走った?
マスドライバーを奪われるわけにはいけないから、一緒に破壊したんだろうが・・・。
彼は、『国』と言う『器』しか守る気がなかったんだろうな。
だからこそ、あそこまで身勝手な行動ができたんだろう。
民衆を思う気持ちがあれば、あの判断はしなかったはずだ。
自分たちの死後、焼かれた国土を占領した地球軍が、何を行うか・・・理解できたはずだからな。
Adiantum
― 愚か者の主張・幼馴染sの認識 ―
《私の話を聞いているのか、ラクス!
とにかく、即刻アスランとキラ、そしてお前の身柄を我がオーブに引き渡せ!》
「お断りいたしますわ? 私たちにそのような命令・・・・よく出来ますわね?
大体、私たちにその命令に従う理由など、ございませんわ」
《あるに決まっているだろう! 私は、アスランの彼女だぞ? アスランは私のだ。
キラに関しても、キラは我が妹だろう! 唯一の肉親として、オーブに返還することを要求する!》
カガリのこの一言に、それまで抑えられていた冷気が一気に部屋中に充満した・・・・・。
アスランは、ただ一度たりとも今目の前のモニターで憤慨しているカガリを彼の最も愛し、
至宝としているキラの実姉とはまったく認めていなかった。
彼にとってキラの生まれや出生の秘密などキラを構成する上で必要な要素であり、
キラが決めたことではなく・・・むしろキラこそが被害者だと考えている。
もちろん、キラが自身の出生のために悩む必要性などなく、キラはキラ自身だとアスランは思っている。
アスランはキラがキラ自身だからこそ好きになったのであり、
身体(器)ではなく、中身(心)を愛しているのだ。
壊れ物のように繊細で脆く、そして誰も汚すことの出来ないほどに気高い。
そんな心の持ち主であるキラだからこそ、アスランは誰よりも大事にし、全身でキラを愛している。
そんなキラをカガリは、悪意に満ちた言葉と言う凶器で幾度となく傷つけた。
先の大戦時、オーブから脱出してから間も無くカガリは、
オーブ脱出の際に父親から渡された一つの写真をキラとアスランに見せた。
その写真には、生まれたばかりと思われる幼い双子の赤子と母親と思われる女性が映し出されていた。
その裏面には〔Kira&Kagari〕と書かれており、彼女たちが双子なのかと言う疑惑が浮上した。
その頃からである。
カガリ自身が、自分とキラが双子であると宣言しまわっていたのは。
確かに、彼女はオーブ脱出の際、父は国を守るために犠牲となった。
だから、悲しみに捕らわれていたのかも知れない。
そして、その時渡された写真で、
自分とキラが姉妹なのかもしれないといわれれば、キラに確かめたいと思うだろう。
しかし、時期が悪い。
当時は、戦争の真っ只中。
しかも、彼女たちがいるのは戦場・・・第一線である。
そして、キラとアスランは第3勢力の要とも言える。
戦闘に関して、一つでも不安要素があればそれはMSの操縦ミスに繋がる。
そのミスは『死』に繋がり、その重圧によってストレスがたまる。
キラはカガリに伝えられた時、周りからの期待と自身の持つ力に対しての不安があり、
それらに板ばさみになって心に重くのしかかっていたところにカガリから知らされた出来事・・・・。
この頃から、カガリはアスランに対して強い執着心を見せ始めた。
いつも傍にいるキラに対して、影で冷たい態度や嫌味などでキラを傷つけていた。
その事にアスランが気付いた時には既に、キラの心は限界を超えていた。
この出来事から一時期、アスランの前でしか感情が表に出ない時期があり、
その事に気付けたのはアスランだけであった。
そのため、アスランは一つでもキラの負担を無くすように頑張り、
その協力者として幼馴染であり、戦友でもあるディアッカやラクスに協力要請していた。
ラクスたちは大切な幼馴染がそんな不安と戦っていたことに気付けなかった不甲斐なさと、
そんな心優しい幼馴染の心情も考えずに己の不安だけ解消したカガリに対して怒り、
アスランとキラへ接触を図ろうとするカガリに尽く邪魔をした。
キラの不安材料にしかならず、
アスランの不機嫌の因でもあるカガリに対してラクスやディアッカはいい感情を持っておらず、
アスランの要請にも快く受け入れた。
カガリに対してのラクスたちが行った邪魔行為は、続けられていた。
しかし、カガリはそんな彼らの不在を狙ってキラとの接触を図った。
その際、キラに対してアスランから離れろと脅した。
カガリからの言葉に傷ついたキラは、
涙を美しいアメジストの瞳に浮かべさせながら・・・それでも、アスランに心配させまいと健気に堪えながら、
震える声で「カガリの元にいてあげて・・・・」と訴えた。
そんなキラの言動に、自分たちがいない時に何かが起こったと悟ったアスランは、
キラを不安に思わないよう、極力優しい声で問いかけた。
その問いかけに対し、キラは今まで堪えてきた涙をポロポロと流しながら、
彼らが不在中にカガリが訪ねてきたことや自分に向けた言葉・・・
そして、アスランを欲する彼女の行動を包み隠さず話した。
アスランに乞われるまま話したキラは、この時既に精神力や体力を消耗しており、
嘘をつくための頭の回転やそのほかの思考はまともに出来ない状況であった。
カガリに言われた言葉よりも、カガリの言葉のように自分の傍からいなくなるアスランを想像してしまって、
今まで必死に保ってきた均等が、崩壊しかけていたのだ。
そのことを瞬時に悟ったアスランは、優しく包み込むかのようにキラの華奢な身体を抱き締め、
耳元に甘く・・・そして慈愛に満ちた声がキラの耳元に響いた。
アスランの言葉に崩壊することなく、危うい均等に心があった。
しかし、優しいキラの本質からなのか、
戦後間も無くアスランに自分からキラはカガリのことを肉親だと思っているために彼女の心配をし、
そんなキラのために2年間カガリのSPをすることをディアッカたちに伝えた。
期限付きなのは、キラを彼女が心配することなくプラントが受け入れ、
尚且つ彼女をアスランの婚約者だと名乗るために必要な時間であった。
戦後、プラントも地球よりも痛手は少ないものの、それなりに忙しい毎日を送っていた。
キラの願いを無下にすることのできないアスランは、週末は彼女のいる孤児院に必ず戻ると約束し、
嫌悪すら感じるカガリのところに・・・・オーブの国家元首のSPとして有能に2年間働いた。
アスランは通信モニターに映るカガリを見たくないとばかりに視線をそらし、目の前にあるデータを見つめた。
「・・・・そろそろ、アスランも限界のようですね・・・。 ラクス、最終段階に移ってもよろしいですか?」
「分かりましたわ。 では、もう暫く時間稼ぎをいたしますわね」
アスランの様子を隣で見ていたニコルは、苦笑いを浮かべながらラクスに合図を送った。
ラクスもまた、アスランの限界を感じていたのかニコルの意見を反対することなく、
女帝のような雰囲気を保ったまま、未だ反論してくるカガリを冷たく見据えた。
「・・・貴女が何を言われようと、こちらにはちゃんと、証拠がございます。 キラの唯一の肉親?
何を世迷言を言われておりますの? 私たちは、貴女を彼女の肉親だと認めたわけではございません。
キラは、カリダ小母様方の大切な一人娘ですわ」
「カリダ? あぁ・・・先の大戦時にキラを庇って死んだナチュラルのことか」
ラクスの言葉に、聴いたことのあった名前なのかカガリが反応を示した。
キラの育ての親であり、ラクスたちにとっても大切に思う彼女の母であるカリダのことをどこか侮辱した言い方に、
それまで黙っていたニコルたちもまた、先ほどよりも冷たい冷気を部屋中に撒き散らしていた。
「カリダ小母様は、キラのお母様ですわ? ご両親が自分の子どもを守って、何がおかしいのですか?」
「おかしいに決まっているじゃないか。 自分の娘? 本当の親でもないくせに?
なにより、あの化け物を守って死ぬこともないだろうに」
「・・・・あの方を侮辱なされることは許しませんわ。 あの方は、キラを心から愛しておられました。
・・・家族の絆は、なにも血筋だけではないのですよ。 そのことは、貴女が一番知っているはずでしょうに」
「あの化け物が大人しく死ねば、あの惨劇はなかっただろ」
カガリの言い草に、穏やかな笑みを浮かべていたラクスのアクアマリンの瞳に物騒な光が宿った。
もちろん、その光は物事やその場の雰囲気に聡いニコルやアスラン、
そして評議会会議室にいるメンバーたちには感知できたものがモニターの目の前にいて、
ラクスと対峙しているはずのカガリはまったく気付いてはいなかった。
「・・・それを言われるのですか? 貴女がご命令なされたと、証拠はこちらで押さえておりますのよ」
「全ては、我が国の平和のためだ。 そのために、キラの命は必要なことだ。
・・・大体、アレもそれが本望だろう? なにせ、自己犠牲が誰よりも強いのだからな。
それに・・・アスランだって目を覚まして、私の元に戻ってくるじゃないか」
鋭い視線と平行に、彼女の纏う空気もまた冷たいものへと変化を遂げた。
しかし、その様子を未だカガリは察してはおらず、己勝手な言い方・言い分を高らかに宣言した。
その言葉は、自分の元にアスランがいることが前提であり、キラは悪者だとの主張している。
「そのようなもの、調べればいくらでもでてまいりますわ。
それに・・・既に既婚者のいる貴女が、アスランを自分のものだと言われるのですか?」
「っ! 我が国のためだ! 国のためならば仕方がないだろう! それに、私はアスランの婚約者だ。
私は、アスランを裏切ったわけじゃない!」
「・・・・何を申されるかと思えば・・・・。
誰か他の方とご結婚なされた時点で、それは裏切り行為なのではないのですか?」
「しかし! アスランは私にこの指輪を渡した! それこそ、アスランが私を想う証拠だろう!」
「・・・と申されておりますが?」
「・・・何を馬鹿なことを。 俺があの女を想っているだと?
それこそ、天地がひっくり返ろうが、考えたくもないが・・・キラがいなくともあの女だけは好きにならない」
ラクスは呆れた表情を隠そうともせず、正面のほうで情報の処理を終えたアスランに視線を送った。
そんなラクスの視線を正確に理解したアスランは、とても嫌そうな表情を見せ、
キラを中心に物事を考えている自身を改めない発言をしつつカガリの言葉を全否定した。
もちろん、アスランの性格を熟知しているラクスとニコルは微笑むばかりでアスランに対して注意することなく、
そんな上司たちに対してその場にいる一般兵たちは何も言えない表情を見せた。
「そうですよね。
アスラン、月の時もアカデミー時代もそれなりに女性にモテていたんですが・・・一切靡くことなく無表情でしたよね」
「そうですわね。
私はアカデミーの時は存じませんが・・・月の時、
あまりにもしつこい方に対しては冷たい視線を女性にでも浴びせておりましたもの。
その鉄仮面とも思えるほど感情のない方が、ただ唯一キラの前だけガラリと雰囲気丸ごと変えておいででしたわ」
アスランの言葉を肯定するような彼らの知るアスラン。
唯一、アスランの表情を変化させる切欠を与えられるのはキラだけである。
最も、ニコルたちもまたアスランとキラにとって、
かけがいのない大切な幼馴染であるため表情の変化などはするが、
他人・・・それも女性に対して厳しい一面を持つ。
本人にしてみれば、認めた者以外は全てかぼちゃなどと同じで人間と認識はしていない。
そのような認識となった原因は、周りの環境でもある。
ザラ家の嫡子として生まれたアスランは、
幼い頃から自身に取り入ろうとする周りや大人たちに囲まれていたため、
いつの日からか自身を守る鉄壁として無表情となった。
そんなアスランの表情を再び豊かなものに戻したのが、キラである。
キラの打算のない優しさとキラ自身の持つ魂の気高さに触れたアスランは、
彼女を守るためだけに自信が持てる全ての力で強くなろうと決意し、
同じような環境であったニコルたちとの出会いで自分は孤独ではないと気付いた。
そんなアスランの過去を知るニコルたちにとって、
今通信越しであるが目の前にいるカガリは到底アスランの好みであるとは思えない。
双子とあって顔や容姿はそっくりであるが、そこに宿る魂が決定的な違いを彼らに教えている。
キラは気高き魂であり、優しさと慈しみを持つ少女である。だが、目の前にいるカガリの魂は、強欲で我侭。そして、何もかも自身の思い通りになると傲慢な性格が面に出た形となっている。
そのようなカガリが治める国であるオーブは、代表を間違ったばっかりに危機的な情勢を迎えている。
代表自ら自分の想いを突き通す形でにことを進めるために連合と同盟を結び、コーディネイターを孤立させた。
・・・その時点で、カガリは自身の未来に疑問や矛盾点を感じないのだろうか?
コーディネイターの天敵ともいえるブルーコスモスが連合のトップにいることは、
先の大戦時にイヤと思うほど思い知らされた。
そして、今回もまたニコルの調べでブルーコスモスの盟主が連合のトップであると調べられている。
そんな連合と手を組めば自身が求めるアスランの身にも危険が及ぶとは思わないのだろうか。
アスランもまた、コーディネイターであるため、ブルーコスモスは彼を狙ってくるだろう。
彼は、仮にもプラントにとって重要な人物である。
そんな人物を危険視と見ているブルーコスモスが、見逃すはずがないのだ・・・・。
そんな矛盾点にも気付かない者が国の代表として権力を揮い、最終的には国民に被害を及ぼす。
性質が悪いのは、その責任を覆うことなくその事実を知る人物を自身の保身のために口封じをする愚か者。
そんな人物に対して、
かつて第3勢力として共に戦った者たちはカガリに対して大きな絶望感か無関心の二つしかない。
絶望感を感じているのは、同じ国にいる保護者の役割もするキサカやエリカであろう。
始めから同じ未来を見ているとは感じてはいなかったラクスを始めとする、
エターナルとAAの一部のクルーたちは冷たい視線を送るだけであったが・・・・・。
2007/12/30
今回、会話が少ないですね。
まぁ、某に言いたいことは山ほどあるので、割愛しましたw
別に、ここじゃなくてもぶちまけますからねv
先の大戦(2年前)のエターナル内云々は、ご都合主義と言う名の捏造ですv
某を、徹底的にアンチにするための捏造v
これでもぬるい・・・くらいですねぇw
もっとと言ってくださる方、拍手コメントのほうでその度合いを教えてくださいv(ォィ)
明日はいよいよ大晦日。
2007年最後の年です。
明日、完結するように頑張ります!
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