「致命的ではありませんもの。 このくらいでは、死にませんわ」
殺しはしません。
貴方方には、話していただくことがありますもの。
確かに、同胞である貴方方を失うことは悲しみますが、ただ同胞に対してのみ。
私個人としては、あの狸さんのご命令に従って私だけではなく、
キラの命をも狙ったことでそれ相応の罰を受けるべきだと思いますの。
ですが・・・そのようなことで、万が一貴方方が亡くなってしまったのなら、
心優しいあの方は、嘆き、悲しむでしょう。
ですから、私たちは貴方方のお命までは取るつもりなどないのです。
Adiantum
― 最後の計画 ―
その頃、
連合艦の捕獲と奪取された3機の奪還の任務に就いていた『セシリア』は、アスランたちの連係プレイにより、
その捕獲を無事に成功させ、被害を最小限に抑えての任務遂行を遂げた。
「兄さま、ニコルさんからの定期連絡です。 読み上げますね。 『月と歌姫は無事。狩人捕縛』」
「そうか。
あちらはニコルがいるからあまり心配はしなくてすんだが・・・・俺たちが帰還する頃には、終わっているな」
レイは通信画面に【プラント】にいるニコルからの定期連絡によって、
キラたちの安全が確保されたことを知り、安心したようにため息をついた。
その横で聞いていたイザークも同様で、
彼もまた婚約者であるラクスと妹のように可愛がるキラの身に迫る危険を危惧していたことが分かる。
「・・・・・我々も彼らを連れて本国に戻るぞ。
・・・・その前に、ラミアス女史からの依頼である『彼』が本物の『彼』であるかを調べることになるだろうが」
「・・・・・記憶操作されている可能性が高い。 このデータを見てくれ」
重要人物たちの移動を確認したイザークは、
アスランたちを連れてブリッジに戻ると艦長席に座る人物に命令を出した。
そんなイザークの横で考えていたアスランだったが、
捕獲した連合艦・・・『ガーティー・ルー』のマザーからハッキングしたアスランが入手したデータを
『セシリア』へ持ち帰った。
「・・・・・・なんだ、このデータは!!」
「・・・・奴らのトップシークレット・・・・・かな?
3機を奪取したパイロットが眠っていた機械・・・奴らは『揺り籠』と言っていたが・・・・本当に揺り籠のようだ」
ディアッカはメインスクリーンに映し出される膨大なデータに驚き、
そんな驚きを黙殺したアスランは淡々と告げた。
「・・・・『彼』がラミアス女史の探している人物だと確定するには、
やはりラゥにあってみないと分からないみたいですね・・・」
「そうだな。 『彼』については、今決めなくてはならないことではない。
・・・・あの揺り籠にいる者たちは・・・・捕虜という形になるだろうが、本国で保護という形にもなるだろうな。
地球に戻しては、また敵になる可能性が高い」
「そうだな。 ・・・念のため、親父にも連絡を入れておく。
奴らも記憶を操作されている可能性が否定されるわけでもないからな」
レイの言葉にアスランは頷き、
『ガーティー・ルー』に眠った状態でいるパイロットたちの容態関係を
医療関係に活躍する父を持つディアッカは神妙そうな表情で頷いた。
一方、【プラント】国内では着々とクライン派によるデュランダル議長の包囲網が進められ、
ラクスは自らの名を上げてメディアに重大発表があると宣伝した。
議会にいるクライン派とラクスの働きにより、多くのメディアは彼女の言う発表に注目し、
国内・・・地球においても重要視されているザフト基地においても発信されていた。
その頃ニコルは、
独自に集めた情報と流した情報に引っかかった特殊部隊の者たちから聞き出した情報のまとめをし、
決定的証拠を含んだ多くの証拠たちを提示した。
「【オーブ】近海にいた頃の孤児院を襲った計画。
ラクスの替え玉であるミーア=キャンベルの整形できない部分である骨格の違いを表記したデータ。
後は・・・・この間の暗殺計画ですか」
「ニコル、こちらの準備は出来ましたわ。 ・・・・こんなに色々と裏工作をなされていたのですか?
・・・狸さんのPCにはすでに消されていたみたいですけど・・・甘かったですわねv
このような情報は徹底的に壊さないと残りますのに・・・・・」
「大概は知りませんよ。 ・・・・でも、こうして残っていたからこそ証拠としてはかなり有利ですよ。
・・・・ラクス、時間のようです」
ニコルの表示したデータに少々呆れた様子を見せたラクスは、苦笑いを浮かべたニコルを見た。
ニコルは毒舌ともいえるようなラクスの発言に同じことを思っていたのか注意することなく、時間だと伝えた。
その言葉にラクスは頷き、テレビ前に姿を現した・・・・・・。
「私は、ラクス=クラインです。
本日は、皆様に重要なことをお伝えするため、各メディアの方々にご協力していただきました」
ラクスは画面前にニッコリと微笑を浮かべた。
その様子を執務室で見ていたデュランダルは目の前の画面を睨みつけ、
すぐに放送を中止するように要請したが、その要請が届くことはなかった・・・。
「・・・彼女に出てもらおう。 この混乱を収めるのだ」
「了解いたしました」
議長の言葉に議員は頷き、
別室にいるラクスの替え玉・・・ミーア=キャンベルを議会用の会見場所へ連れて行った。
「プラント国民の皆様。 騙されてはいけませんわ。 貴方方の目の前おられた方は、私の姿を偽った方。
彼女・・いいえ、彼女たちの言葉を聞いてはなりません。
・・・私は、貴方方までもが戦場に行かれることを大変憂いておりますわ。
私はこれまで、2年前志を共にしたAAの皆様と共にオーブへと行ってまいりました。
・・・結果的にプラントを救ったといわれても、中には皆様を裏切ったと思われる方もいらっしゃると思ったからですわ。
・・2年前、ザラ前議長と道を違えましたけれど、思いは同じであったはず。
皆様、そのときのことを思い出してください。 皆様は、何を望んで戦っていらっしゃったのですか?
平和な、共存を望まれたからではないのですか??
憎しみは、憎しみしか生まないということをあの時、知ったはずです。
・・・それなのに、再びその連鎖を繰り返されますの?
・・・皆様、この2年間必死に保ってきたこの平和を今、作り上げた皆様の手で失おうとしております。
真の敵とは何か。 それをよく、お考えになってください。
核を再び打たれたからと言って・・・再び戦争を起こせば、敵は『ナチュラル』だと決め付けるのであれば、
私は再び、AAと共に行動し、『平和の歌』を剣として戦場へ参りますわ。
これから提示される情報は全て、本物です。 ちゃんと裏づけも取れておりますわ」
ラクスの言葉に、ニコルは全てのデータを送信させた。
ミーアが会見を妨害しようとしたことを見越していたのか、議会からのテレビ放送を全てストップさせていたのだ。
そのことにより、ラクスは誰にも邪魔されることなく今まで集めてきた全てのデータを全国民・・・いや、
【プラント】と地球間に流した。
そのデータの中には、それらを裏付けるかのように音声付の映像もあり、
国民たちは流されてきたデータが本物だと認めざる終えなかった。
《ラクス、議会の会見場所より妨害が行われようとしておりますが・・・・どうしますか?
このまま止めていてもいいですが・・・・この際ですから、あちらの素顔を公開いたしませんか?》
「分かりましたわ。 よろしくお願いいたしますわね?」
《了解》
ニコルは自分のPCに全ての制御プログラムを移動させていたため、
何処から自分たちの流している放送の妨害があるかを正確に把握していた。
その中で最も要注意視されていた議会の会見場所に現れているミーアの存在に気付いたニコルは、
放送しているステージに立つラクスに直接繋がる回線を開き、そのことを伝えた。
ニコルの提案を聞いたラクスは、ニッコリと微笑を浮かべた。
ラクスとの通信を切ったニコルは、あちらに気付かれないように、
議会内にいる『ラクス』の姿をラクスのいる画面の右端に小さく映し出した。
その映像は、【プラント】中のテレビに映し出され、国民が今まで信じていた『ラクス』が偽者だと気付いた。
画面に映る『ラクス』ことミーアは、
会見場所まで来て映らないことを知ると落胆し、自由気ままな格好で座っていたのだ。
その格好は、国民たちの知るラクスの座り方などではなく、その表情にも落胆の色を隠せなかった。
・・・・ミーアは今まで勘違いをしていた。
戦争が再び拡大化してきているのが最近の状況だが、自分が国民や軍人たちを励ましていると。
実際は、『ラクス』の真似をした紛い物であるミーアであるのだが、
本人はそのことを忘れ、自分こそが励ましているのだと。
そして、確かに2年前ラクスとアスランが婚約していたが、
キラが見つかった戦時中に、双方の合意の下婚約が解消されていることを
議会内のごく一部しか知られていないことを利用した議長によって、
アスランが自分の婚約者だといわれていたこともあった。
しかし、アスランは『ラクス』の婚約者であって、ミーア個人の婚約者ではない。
しかし、そのことも気付かずに自分こそが本来の婚約者だと勘違いしているのであった・・・・・。
―――― その認識が、アスランをよりいっそう怒らせることに気付かないミーアは、
彼の婚約者にはふさわしくなかった。
2007/12/28
狸たちを徹底的に叩く計画が、最終段階に入りましたv
ラクスたちは、今回のために様々な証拠となるデータを集めていたのですv
もちろん、その中には隊長格を利用して、
一般では手に入らない情報などもイザークが頑張りましたv
すべては、狸の計画を完膚なきまでに潰す為v
また、永久に自分たちの視界から追放する為ですv
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