「アス・・ラン?」

「キラ・・・・」



やっと逢えた・・・・、僕の愛おしい人。



漸く、長い任務から開放されて・・・貴方の腕の中に還れると思ったのに。
ちょっとしたトラブルの所為で、それも長引いた。


・・・けれど、それでもこの半年間に比べれば貴方の声を通信機越しであっても聞けるのだから。
・・・この際だから、引き出せる情報は引き出そう・・・かな?







―――――姫は狭いコックピットの中、沈黙を守るモニターに対し、妖艶な微笑を浮かべる・・・・・・











Iris
 ― 目覚める巨人 ―











燃え盛る炎が次々と近くに流れたオイルに引火し、爆風と爆煙があたりに広がりを見せた。
そんな中、1人の民間人をコックピットへ叩き落した地球軍女性兵士は、
呆然とする民間人をシートの後ろへと追いやった。



「シートの後ろに! ・・・この機体だけでも・・・・。 私にだって、動かすくらい!」



シートに座った女性兵士・・・マリュー=ラミアスは電源をオンにすると、次々と画面が機動を始める。
そんな様子を、シートの頭を持ちながら静かに見つめていた民間人・・・キラ=ヤマトは
声を発することなく静かに見つめていた。



2人が沈黙を守る内、中央のメイン画面には彼女たちの乗る機体のメインであるOSが表示され、
中央には『Welcome to M・O・S』と書かれていた。




続いて、地球軍の軍章が表示され、軍章が消えると同時に




『G eneral
 U nilateral
 N euro - Link
 D ispersive
 A utonomic
 M aneuver
               Synthsis System』




と表示された。



「・・・ガン・・・ダム?」



キラは呆然とした様子で、表示された大文字を『ガンダム』と呼んだ。

OSが表示され、すべてが正常に機動を終えると
それまで沈黙を守っていた眠る巨人はその長い眠りから解き放たれた。



固定していた全てのパーツを取り除くと、マリューは機体を動かす為、動力となるレバーを静かに上げた。
巨体が静かに起き上がり、完全に立ち上がる頃には入り口が紅蓮の炎に包まれた・・・・・・。






外では依然と『ジン』と『メビウス』の戦闘は繰り広げられ、
【ヘリオポリス】内ではモルゲンレーテが集中砲火を浴びていた。




《【ヘリオポリス】全土に、レベル8の避難命令が発令されました。
住民は速やかに最寄の退避シェルターに避難して下さい》




全土に響く管制官の言葉に、住民たちは恐怖を隠しきれないまま、我先にと近くのシェルターに避難する。
それは、一般の民間区だけでなく戦場となっているモルゲンレーテも例外ではない。
地下の研究室から外へ上がってきた学生たちもまた、
他の住民たちと共に近くにあるシェルターを目指していた。
だが、目の前に広がる光景に呆然とし、
今朝ここにはいない友人のPCに映し出されていた光景に類似している目の前の現実に対し、
一組のカップルはその表情を歪めていた・・・・・・。





そんな中、燃え盛る工場内から灰色の巨人が2体、静かに宙を舞った。
肩幅の尖った機体にはザフト兵が搭乗している為、
近くの施設を破壊していた『ジン』に、通信機越しに話しかけた。



「アスラン!」


《・・・ラスティは失敗だ。 軽症ですんだが、あちらには地球軍の士官が乗っている》


「・・・ラスティは、無事なんだな?」


《あぁ。 ・・・もう一つ。 向こうの機体には確かに地球軍の仕官が乗っているが、彼女も一緒だ》


「はぁ? ・・・彼女って、今回の作戦時に帰還じゃなかったのかよ?」


《予定が狂ったんだ。 あちらの機体、彼女に任せる。
ミゲル、適当に戦闘を終わらせたら一度帰還しろ。
成り行き上、無理だったとしても・・・彼女の指示には従えよ?》


「・・・了ー解」



奪取した機体に搭乗するザフト兵・・・アスラン=ザラは
音声だけの簡易的な通信を開くと予定していたことが全て狂ったことを伝えた。

彼の後ろには、同じ“紅”のパイロットスーツを身に纏った兵が負傷したところを応急処置がされており、
今は静かに狭い空間ではあるが横たわっていた。


アスランは『ジン』に搭乗する兵・・・ミゲル=アイマンとの通信途中にも拘らず、
その手はキーボードの上を高速スピードでOSを組み直していた。





一方、慣れない作業を焦りながら行っていたマリューは、
ヨタヨタと初めて歩けるようになった幼児と変わらない機体に、次々と周りが映し出され始めていた。


そんな中、キラは端に映るモニターに研究室が同じであるメンバーが

逃げ遅れて戦場と化している現場にいることを知った。



「っ! トール、ミリィ、サイ、カズイ!!」



キラが叫んだと同時に、『ジン』から威嚇射撃を受けた機体は大きく揺れ、
態勢を立て直す隙を突いて、『ジン』が接近してきた。

ジャンプして設定されている重力を利用しながら振り下ろされた『MA-M3 重斬刀』に目を見張ったマリューは、
目の前にあったオレンジのボタンを押すと、
それまで灰色だった気体が白をベースに、白と青で統一された色に染まった。





腕をクロスしたまま目を瞑った彼女たちに対し、その光景を静かに見つめていたアスランは、
地球軍とオーブが共同で開発した技術に、軽く目を見張っていた。




(・・・あれが、報告にあった『フェイズシフト装甲』。
あれが展開されたら、『ジン』の装備ではまったく歯が立たないな・・・・・・)




アスランは目の前で繰り広げられている戦闘を静かに見つめ、
完成したばかりのOSで彼もまた、目の前にあるボタンを押して『フェイズシフト装甲』を展開した。

彼が奪取した機体の装甲は、彼の纏うパイロットスーツに相応しい、赤で統一されていた。




《ミゲル! 俺は一度離脱する。 あちらは、まだOSが完成していない。
動きが機敏になった時、あちらを操縦しているのは、彼女だ》


「了解した。
万が一、この機体が爆破された場合は、彼女があちらに信用される為だと考えたほうがいいんだな?
・・・後は、こっちがそのタイミングを見計らって脱出するだけか」


《そうだ。
その際、俺が間に合えば回収はしてやるが・・・無理な場合、後はお前の運か彼女が回収してくれるかだ》




アスランは完成したOSの為、
モニターに映像を映し出すと最後の連絡を告げると既に帰還しているほかの3機と同様、
外で待機している母艦へ帰還して行った・・・・・・。











2008/10/29













第2話です。
アスランのプログラミング能力は、
キラには匹敵しないものの・・・ザフト内では優秀v
・・・まぁ、キラと比べるのが可笑しいですが;
予定と違い、キラが暫く戻れなくなったため、内心不機嫌なアスラン・・・。
AAの皆さん、ご注意くださいv(ぇ)