宇宙では、さらに激しさを増しながら地球軍の『メビウス』との戦闘に発展した。
『メビウス』からの攻撃を避け、次々と攻撃を仕掛けてくる『ジン』。
フラガの乗る『メビウス=ゼロ』の特殊な攻撃方法・・・『有線誘導式ガンバレル』で巧みに相手を翻弄し、
撃墜を果たしたかに思えた。



「ゲイル!!」



しかし、ギリギリのところでコックピットを外し、後方へ飛ばされた『ジン』は近くにいた『メビウス』へ向かった。
動き回りながら近づいてくる『ジン』に対し、
ロックが上手くかからなかった『メビウス』が1機、真っ二つに破壊され撃墜された・・・・・・。









「ラミアス大尉。 艦との通信途絶え・・・状況不明ッ!!」



一人の兵の声に、ラミアスと呼ばれた女性は驚きを隠せない表情を見せた。
その時、突如上空から2機の『ジン』によって奇襲される。

咄嗟に地面に伏せて頭を庇った女性・・・マリュ=ラミアスは、
当たり一体を包み込む黒煙が徐々に晴れてゆくをの確認した。



「ザフトのッ! X-105と303を起動させて! 兎に角、コークから出すわ!」

「解りましたッ!!」



マリューは共に地面に伏せていた部下に告げると、
苦虫を潰したような表情を浮かべながら自らも『G』の元へ向かった。X-105の元へ・・・・・・。










容赦なく攻撃を加えられる輸送車は全て破壊され、
工場区に近いモルゲンレーテ内は大きな揺れが断続的に続いていた。


天井からは僅かながらも破片が落ち、停電を起こした。



「な、何なの!?」

「どうしたんですッ!?」



突如真っ暗になった部屋にパニックを起こしたミリアリアを守るようにトールが抱き締め、
サイは近くにあった非常口を開け、下から避難してくる職員に問いかけた。



「ザフトに攻撃されているッ! コロニー内部にMSが入ってきているんだよ! 君たちも早くッ!」



職員の言葉に、サイたちは息を呑み、非常階段を上る彼らに続いた。



そんな彼らを静かに見つめていたキラは、
彼らに気付かれないようにと注意しながら離れ、工場区へ向かって走り出した・・・・・・。










破壊された輸送車の前方には、まだ無傷の輸送車があった。

【ヘリオポリス】に降り立った『ジン』は、目の前にいる地球軍を排除し、無傷だった輸送車を破壊した。
また、『G』を奪取する際に邪魔となる地球軍の攻撃部隊も全て破壊した。



「運べない部品と工場施設は、全て破壊だ。 ・・・報告では、5機あるはずだが。 後の2機は、まだ中か・・・」

「俺とラスティの班で行こう。 イザークたちはそっちの3機を」

「OK、任せよう。 各自、搭乗したらすぐに自爆装置を解除」



銀色の髪を持つ少年は、サファイアの瞳に宿る冷ややかさを隠そうともせずに崖から目標地点に降り立つ。
エメラルドの瞳を持つ少年の言葉に、
頷きを返したサファイアの瞳を持つ少年・・・イザーク=ジュールは、
目の前に見える3機の機体を奪取する2人に装置の解除を指示した。










工場区へ向かって走るキラは、
周りに誰もいないことから先ほどまで浮かべていた儚げな笑みを消し去っていた。




(・・・漸く、戻れる。 彼の元へ、やっと・・・・・・)




爆発と爆煙に包まれる廊下を、キラは気にすることなく目的地へ向かって走り続けた。
暗闇の続いた廊下の先に白く光る扉を発見し、キラはそこへ身を滑り込ませた。




キラの目の前に広がるのは、
寝かされた状態になっている・・・本来ならば中立国にあるはずのない光景が広がっていた。




(・・・所詮、中立と謳われた【オーブ】もまたナチュラルの治める国・・・・か)




キラはアメジストの瞳に冷徹を宿し、目の前に広がる戦場を見据えた。









「ほぉ、凄いモノじゃないか。 どうだ、ディアッカ」


《OK。 アップデータ起動、ナ−ブリンク再構築、ヤリブレ−ト完了。 ・・・動ける!》




イザークは首尾よく奪取できた機体に乗り込んだイザークは、
起動させたOSデータを見ながら皮肉気な笑みを浮かべる。
通信機越しに見える金色の髪とヴァイオレットサファイアの瞳を持つ少年は、
OSを動かしやすいように構築し直した。



「ニコル」


《待ってください、もう少し!》




イザークが搭乗した機体が立ち上がったと同時に、
ヴァイオレットサファイアの瞳を持つ少年・・・ディアッカ=エルスマンの搭乗した機体も立ち上がった。

イザークは、もう1人の同僚である若草色の髪とトパーズの瞳を持つ少年に声をかけた。
OSを構築し直しながらイザークに答えたトパーズの瞳を持つ少年は、
最後の部分を構築するとエンターを押して起動させ、最後の1機を立ち上がらせた。




《アスランとラスティは? ・・・遅いな》


「フン。 ヤツなら大丈夫さ。 それは兎も角、この3機先に持ち帰る。
クルーゼ隊長にお渡しするまで、壊すなよ」



ディアッカの言葉に、イザークは素っ気無く返したがその言葉には信用が込められていた。
3機の起動を確認したイザークは、先に3機を持ち帰ると告げた・・・・・・。










残り2機が横たわる工場区内では、激しい戦闘が続いていた。
その戦闘を静かに見つめていたキラは、見覚えのある赤のパイロットスーツに身を包んだ2人を確認した。




〈トリィ!〉


「子どもッ!? そこは危ない! 此方へ来い!!」



突如、鞄から飛び出したトリィに、銃を向けて撃っていたマリューは階段近くにいるキラの姿に気付いた。




(・・・予定とは、大きく変わっちゃったな・・・・・・。 邪魔になれば、気絶してもらうしかない・・かな?)




マリューの言葉を聞いたキラは、内心で下にいる地球軍兵を冷然とした態度を取ったが、
表情に出すことなく手すりに手を掛け、真下へ飛び降りた。
そんなキラの様子に、
息を呑んだマリューだったがすぐさま現在置かれている状況を思い出しのか、すぐさま銃を構えた。
別の場所で行われていた戦闘で、赤のパイロットスーツを身に纏った1人の少年が、その凶弾が右肩を貫いた。



「ラスティ!!」



近くにいたエメラルドの瞳を持つ少年は、肩を押さえて倒れこむ同僚に近づく為、
周りにいる地球軍兵をなぎ倒すかのように打ち倒した。



橙色の髪とアオライトの瞳を持つ少年の傷具合を確かめた少年は、
その場で待機しているように伝えると、目の前にある機体を奪取するために再び銃を構えた。




(トリィの声が聞こえた・・・・。 ここに、いるのか。
・・・当初の予定とは大きく変わるが、トリィの声に気づいたのであれば、それを利用しない手はない・・・か)




キラの姿を確認したエメラルドの瞳を持つ少年・・・アスラン=ザラは、キラの近くにいる地球軍兵の肩を狙った。
アスランの放った銃弾はマリューの肩を貫通し、倒れこむのを確認したキラは助けるのを装う為に近づいた。


また、先ほどの銃弾で弾切れとなった銃を捨て去ると、装備していたサバイバルナイフを構えて駆け寄った。



「アス・・ラン?」

「キラ・・・・」



アメジストとエメラルドが放つ光が交差し、瞬時に互いが思っていることを理解した。
ナイフを静かに下ろしたアスランは、名残惜しげな表情を見せながらも後方に下がり、
残り1機の奪取と待機させているアオライトの瞳を持つ少年・・・ラスティ=マッケージを回収した。
その様子を静かに見つめていたキラを、
意識を取り戻したマリューは無言でコックピットに叩き落し、自らも乗り込んだ。






4人が2体の機体に乗り込むと同時に、ガソリンに引火した炎が爆発を起こし、
辺り一体を火の海に変えて行き、巨体2体が静かにその身を起こした・・・・・・。
















――――― 僅かな再会。
互いの思いを、その視線に込めて伝え合う。
再び離れる、唯一無二の片翼へと・・・・・・











2008/10/12













漸く、1話が終了です。
奪取したGシリーズのパイロットたちは幼馴染。
そのため、本編と違ってイザークたちはニコルの実力を認めています。
また、幼馴染だからこそ彼の恐ろしさも分かっている・・・。
ニコルは基本的に、全作含めて黒を推薦。
灰はあっても、白はまったくない・・・かもしれませんw