「我らの使命は、慧様をお守りすることですから」
「・・・・僕は、お前たちを大切に想っている。 僕だけじゃない。 凛たちもだぞ?」
「ありがとうございます、慧様」
私は、昔から慧様をお守りしてまいりました。
ARES
同時刻、慧たちは晴明と共に夜の刻時の都を歩いていた。空は一面の闇で星は輝き、月は満月が出ていた。しかし、闇の深まる夜は明るい昼間より、邪気を強く感じる。
「晴明殿、我々は何をすればよろしいのですか?」
慧は晴明の隣を歩きながら尋ねた。
「凛たちを守るんだ。 彼女たちは先ほどの戦いで力を使ったからね。 !! ・・・・早速、来たみたいだよ・・・・」
「慧様、我々の後ろへ」
晴明は微笑み、魁と隼は慧を守る体勢をとった。
外で4人が敵に備えていた時、屋敷の離れにある姉の部屋に凌は凛を運んでいた。寝室の扉を開けてすでに整っている布団に姉の身体を優しく横に倒していった。
「姉上、安心してお休み下さい。 今度は僕が姉上をお守りいたします」
「・・・凌、ここは兄上様のお屋敷よ? 大丈夫、ここは安全よ。 ・・・そう言えば、今宵は満月だったわね・・・・・? 一緒に寝ましょう」
凛達は満月になるといつも不思議な夢を見る。そんな時、凌は凛と一緒に寝るようになった。凌は姉の傍だと無防備になり、姉のことになるといつも冷静だが酷く感情的にって抑えが利かなくなる。逆に、凌の感情を制御できるのは凛しかいないのだ。 凌は部屋についている蝋燭の炎を全て吹き消し、姉がいる布団の中に入った。凛は弟が風邪を引かないように肩まで布をかぶせ、額にキスを落とした。
「お休み、凌。 ・・・・よい夢を」
そう言い終えると凛は疲労のためか眠りに対して、急降下であった。
凛たちが眠りについた頃、深夜の都に出ていた4人の目の前に闇に紛れていた‘鬼’達が現れた。 隼はどこから取り出したのか、両手に弓矢を持っていた。彼らは自分たちの力で武器を創ることが可能である。隼の武器もまた、彼の力で生み出された物であった。魁と隼は幼い頃から慧を守るために武道を全て習っていた。
「我の創りはこの弓は‘陽’の力!! ‘陰’の力より生み出されし者たちよ、我が光の刃を受けよ! ・・・・我と契約せし炎の精霊達よ、我が矢にその力を! 翡翠流・火炎術、『火龍』!!」
隼が放った矢は途中から炎を帯びながら‘鬼’たちの間を駆け抜けていった。
「我らは“摂理者”なり! 翡翠流・身封じ、『影縫い』!!」
魁は腰に忍ばせていた苦無を取り出し、‘鬼’達の影を縫っていった。 晴明はその者の襟を捕まえて、木に叩きつけた。
「・・・我らに‘鬼’を仕掛けるなど、貴様等は一体何者なのだ?人を印の力で‘鬼‘などのよう怪かしにするなど、そのようなものの力は外法ということを貴様の主にそう伝えよ。それと我らにもう二度とその姿をさらすな。貴様の姿を今一度見たならばその命、無いと思え」
晴明は音質を氷のように冷たくし、眼光を鋭くした。彼にとって優希やその従妹弟たちは守りたいものに含まれていた。晴明自身も凛たちを本当の妹弟のように可愛がっており、彼女たちも兄のように慕っていた。人見知りの激しい柊でさえ晴明には懐いており、絶対的な信頼を寄せている。
男は青筋を立てながら何度も縦に頷き、襟を開放された時には一目散に逃げていった。
「晴明殿、もう‘鬼’の気配がいたしません。 それにそろそろ亥ノ刻ですから屋敷のほうに戻ったほうがよいかと」
慧は自分の放った武器を回収しながらこれからのことを提案した。
「そうだね。 優希のほうもそろそろ綻んだ結界の修復も終わっている頃だろうしね。 一応、念のために屋敷のある南側に結界を張っておこう。 ・・・四方を司どりし聖獣よ!! 我にその力を貸したまえ! 南方を司るものよ、汝の聖なる炎にて結界を創りたまえ! 『聖獣・朱雀 召喚』!!」
晴明は袖から五法星に書かれたお札を取り出し、空に高く掲げた。
「コレで暫くは保たれるだろう。 ・・・紫呉、君の力で慧たちを屋敷のほうへ送ってくれ」
「御意。 ・・・慧様方、この光の中へお入りくださいませ」
紫呉とは晴明の式神である。
「兄上、只今戻りました。 晴明殿のお力により、この屋敷を含む南側に結界を創ってまいりました」
「分かった。 君たちももう休みなさい。 ・・・そうだね、今夜はみんなあの頃の夢をみるんだろうね」
慧たちは既に退室した後だったためか、優希の発した言葉は闇へと消えていった・・・・・。
2005/04/01 修正・加筆
過去編での戦闘、2回目です。
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