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       「・・・我らのする事は、少しでもウリエル様方のお力になること。 自身の力など、把握はしております。 
ですが・・・それでも皆様に向かおうとしている者たちを足止めするくらいならば・・・できるはず」 
 
 
 
 
私たちの任務は、少しでもウリエル様方の敵を排除すること。 
そのために、私たちは皆様に無理を言って《人界》へと降臨したのだから。 
嘗て、この地に降臨した時はその任を果たせなかったけれど・・・今度こそ、皆様のお力に。 
敵に敵わないとしても・・・それでも足止めにはなるはず。 
この身が滅びようとも、皆様のお力になれるのならば、本望。 
 
 
 
 
 
 
―――― ワインレッドの弓を自らの意思でその姿をレイピアに変え、同じ弓使いと対峙する。 
美しきアクアマリンの瞳には、敬愛する上司たちへの忠誠心を宿しながら・・・・・・ 
 
 
       
       
       
       
       
       
       
apocalypse 
          ― 雷霆と色欲の堕天使 ― 
       
 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
 
紫苑・久遠・優衣・由岐がそれぞれ遥か昔――前世に“タリスマン”創り出して封印した場所へと向かった中、 
雫もまた由岐と久遠の向かった中間地点・・・北西へと向かった。 
 
 
 
 
 
 
由岐が北区の中央部分に到着したと同じ頃、雫は北西地点である練馬区の中央に到着すると、静かに舞い降りた。 
 
 
 
 
 
(私にできることは、只一つ。 ガブリエル様とラファエル様に敵が向かって行かないようにしないと) 
 
 
 
 
 
雫はそのまま静かに瞼を閉じると、近くに感じる自分たちとは異なる力を感じ取った。 
しかし、彼女の感じ取った気配に負の力と同時に遥か昔・・・ 
彼女たちがまだ《天界》で暮らしていた時に常に感じていた懐かしい気配が微力だが混じっていた。 
 
 
 
 
「ッ!! この気配・・・アスモデウス!?」 
 
「・・・お久しぶり・・とでも言いましょうか? レミエル」 
 
 
 
 
雫の背後には懐かしい気配を纏う、リーフグリーンの腰ほどまである長い髪にガーネットの瞳を宿し、 
その背には二対四枚の漆黒の翼を持つ女性が立っていた。 
 
 
 
雫の前に現れたのは、嘗ては『前世』共に天界軍で戦った戦友の1人であり、ルシフェルと共に《天界》を追放されたアスモデウスであった。 
 
 
 
 
「私たちは、貴女方を探して《天界》から降臨した。 ・・・貴女方に、真実を聞くために・・・・・・」 
 
「真実? ・・・私たちはルシフェル様の為に。 我らの忠誠は、全てルシフェル様の元にあるわ。 
あの方の望みこそ、我らの悲願。 ・・・その目的を果たす為、この地上を護る“タリスマン”を頂くわ」 
 
 
 
 
アスモデウスの姿に、彼女が堕天したという証として美しい純白の翼が漆黒へ変わっていたことに、雫は悲痛の表情を見せた。 
そして、彼女の纏う気配も嘗ては澄んだものであったのが、負の力が混ざっているのか濁ったような感じとなっていた。 
 
 
 
 
 
妖艶な笑みを浮かべたアスモデウスは、首に掛けてあった黒の逆十字架を右手に乗せ、上空へ掲げた。 
 
 
 
 
「我が名はアスモデウス。 我が声に応え、真なる姿を我の前に現せ! hiems〔ニンブス〕!!」 
 
 
 
 
逆十字架が握られた右手からは嘗て感じられた聖力とは異なる魔力を放ち、 
彼女がゆっくりと掌を開くと魔力が増幅し、ある程度の形を司り徐々に光は消え去ってゆく。 
完全に消滅した時にはアスモデウスの両手には、桔梗色に染まった三日月の様な弓が握られていた。 
その弓をもう一度握り締め、全体を再び漆黒に染めた。 
 
 
 
      漆黒に染められたhiems〔ニンブス〕だったが、アスモデウスの魔力によって徐々に変化してゆく。 
      漆黒の光が再び消え去ると、弓の形をしていたhiems〔ニンブス〕であったが、再びその姿を現わした時にはサーベルへと変化していた。 
 
 
 
 
「アスモデウス・・・。 私は、貴女と闘いたくない。 ・・・けれど、ウリエル様方の邪魔をなさるのならば・・この場に留まっていただきます!」 
 
「・・・そう。 貴女では私に勝てないと判っていても闘うのね? ・・・嘗ての戦友だとしても、容赦はしないわ」 
 
 
 
 
悲痛な表情を浮かべた雫だが、“タリスマン”を護る為に闘っている由岐たちを想うと、 
この場でアスモデウスを足止めしないと彼らに負担がかかると、彼女と闘うことを決意した。 
雫は首元に掛けていた十字架のネックレスをその手に取ると、左の掌に乗せ、頭上へと持ち上げた。 
 
 
 
 
「・・・我が名は、レミエル。 我が声に応え、我が前にその真の姿を現したまえ! mons〔モンス〕!!」 
 
 
 
 
雫の言葉は言霊となり、彼女の武器の媒介となっている銀色の十字架が反応を始めた。 
瞬時に彼女を純白の光が包み込み、掌にあった十字架に光が集中し、徐々に形を象っていった。 
左手を包み込んでいた光が徐々に消えてゆき、完全に光が消滅するとそこには半月のような弓が収まっていた。 
その弓は、全体的にワインレッド色で統一されている。 
下の部分には紫の宝玉が付けられており、弓の中央部分にも紫の装飾が施されていた。 
 
 
 
彼女の弓が再びその手に出現したと同時に、彼女の姿もそれまでの服装と一変し、 
先ほどトランス状態になったときに纏っていた衣装を再びその身に纏っていた。 
その背には、智天使の証である二対四枚の翼があった。 
 
 
先ほどと違う点といえば、彼女の髪と瞳の色が変化していることだろう。 
ココア色の長い髪に、深いオレンジカルサイトの瞳。 
美しいオレンジの瞳には、強い決意が宿っていた。 
 
 
 
 
      雫・・・レミエルはアスモデウスの様にmons〔モンス〕に再び聖力を込めた。 
      込めえられたmons〔モンス〕は、あっというまにその姿を純白の光の中に導かれ、徐々にその姿を変えていった。 
      再び純白の光が消え去る頃には、弓の形をしていたmons〔モンス〕は、レイピアへとその姿を変化させていた。 
 
 
 
 
「・・・私たちの武器は、本来遠距離などの支援に使用されるもの。 接近戦やこのような個人戦に関しては不利な武器。 
だからこそ、特殊能力として武器を変化させることが出来る・・・・。 レミエル、貴女もその力を身につけたのね」 
 
「・・・鍛錬を欠かしませんでした。 私に、弓と剣術の師範をしてくださったのは、アスモデウス・・・貴女です。 
だからこそ、私は貴女との力の差を理解しているつもり。 けれど・・・私の任務はこの地で貴女の足止めをすること。 
たとえ、刺し違えたとしても・・・この場から離れるわけにはいかない!」 
 
 
 
 
アスモデウスは静かに自分の持つhiems〔ニンブス〕に似た種類を創り出したレミエルに対し、ニッコリと微笑を浮かべた。 
 
 
 
アスモデウスとレミエルは同じ弓使いである。 
アスモデウスは《天界》を追放されるまで智天使であった。 
その為、同じ智天使であるレミエルと武器も同じということでよく行動を共にすることが多く、 
命中率の低かったレミエルに師範として闘いなどの技術を伝授したのはアスモデウスであった。 
レミエルもアスモデウスの事を尊敬していた為、 
彼女が堕天したとウリエルたちから伝えられた時は愕然とし、自らウリエルらと共に《人界》へ降臨する道を選んだ。 
 
 
 
 
「・・・己の力を知っていて尚、私に向かってくるのね? ・・・手加減はしないわ。 手加減すれば、貴女のその勇気に失礼だもの」 
 
 
 
 
アスモデウスはクスクスと妖艶な笑みを浮かべながらもガーネットの瞳に宿る色がその表情を裏切っていた。 
彼女の瞳にはレミエルを哀れむ色が混ざっているものの、僅かに優しげな色を宿していた・・・・・・。 
 
 
 
 
――― 尤も、本人はもちろんレミエルもその事に気付いてはいなかったが・・・・・・。 
 
 
 
 
レミエルは静かに瞼を閉じると頭の中に巨大な結界を描いた。 
左手にレイピアを持ち、ゆっくりと両腕を広げたレミエルは、全身から自身の力である聖力を放出させた。 
放出した聖力は、徐々に大きくなり、円柱のような形を創りながら天空に伸びてゆく。 
ある程度の高さまで伸びた純白の光は、レミエルを中心に半径の広い結界が出現した・・・・・・。 
 
 
 
 
 
 
 
 
      ―――― タリスマン≠護る4大天使の補佐を勤める3人の天使たち。 
そのうちの1人が、自らに課した任を全うする為、己の力量を知りながらも戦いを挑む。 
嘗ては、敬愛した人物に対して・・・・・・ 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2009/03/01 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
千代田区より北西に位置する練馬区。 
・・・戦闘をさせる際に、東京の地図を開きました; 
地元が東京ではないので、何処を中心にしたらいいのかなど・・・ 
まず、そこから悩んでいたり; 
アスモデウスとレミエルの関係は、空想です。 
まぁ・・・天使ですから、正確な表記はまったくないのですが; 
アスモデウスが堕天するまで同じ立場であると書かれていたので、 
師弟関係にしてみましたw 
 
 
 
 
 
 
      
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