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       「何が起こっているのか、よく理解できない。 だけど・・・兄様方はご無事なの? 
私の大切なお人たちは、ご無事なの?」 
 
 
 
 
大好きな兄様方。 
兄様方は、昔から不思議な力をお持ちだった。 
けれど、私はそんな兄様方が好きだったわ。 
不思議な力をお持ちでも、兄様方にはお変わりないもの。 
 
 
 
 
 
 
      ―――― 姿が変わろうとも、純粋に大好きな兄たちを信じる少女。 
少女が願うのは、大好きな兄たちの無事 
 
 
       
       
       
       
       
       
       
apocalypse 
          ― タリスマンの発動 ― 
       
 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
 
静寂に包まれていた空間を破ったのは、兄たちの姿に驚愕する聖華の声だった。 
 
 
 
 
「兄様!?」 
 
 
 
 
それまでその場だけ時が止まったかのようにピクリとも動かない久遠たちに、 
漸く変化があったのか重力にしたがって彼らの髪が静かに靡いた。 
 
 
 
優しく撫でられるように頬に当たる風に気付いたのか、 
それまで閉じられていた瞼がゆっくりと開かれ、手元に持っていた武器に視線を向けた。 
 
 
武器を持つ手に、少々力を込めると武器全体を淡い純白の光が包み込んだ。 
その光は徐々に消えゆき、 
彼らの掌にはそれぞれ銀色のチェーンの通った十字架が乗っており、それらを自らの首元に掛けた。 
 
その色はそれぞれが持っていた武器と同じ色であった。 
 
 
 
 
「兄様方ッ!」 
 
 
 
 
緩くなった幸正の拘束を力一杯振り切ると、制服姿に戻った兄たちに駆け寄った。 
駆け寄る聖華に、優しげな微笑を見せた久遠は両腕を広げて聖華が胸元に飛んでくるのを待った。 
自分の為に開かれた胸元に飛び込んだ聖華は、 
先ほどまでの不安を消し去るかのように、抱きつく腕に力を込めた。 
そんな聖華の心情が分かっているのか、 
苦笑いを浮かべた久遠は妹の不安を取り除くかのように、抱き締める腕に彼女に負けないくらいの力を込めた。 
そんな仲の良い兄妹の抱擁を微笑ましく見守っていた紫苑たちだったが、 
何かに呼ばれた感じがしたのか、緊張した面持ちで辺りを見渡した。 
 
 
 
 
「・・・紫苑? どうしたの?」 
 
「・・・雫たちには感じられないの? ・・・この感じ、まさか・・・“タリスマン”!?」 
 
 
 
 
真剣な表情を見せる紫苑たち4人に、雫たちは困惑気に尋ねた。 
そんな雫に対し、自分たちの感じるモノが彼女たちに感じられないということで、一つの可能性が頭を過ぎった。 
 
 
 
 
「・・・“タリスマン”は、封印しているはずです。 
・・・精霊の力をたどることは可能でも・・・場所の特定までは・・・」 
 
「・・・いや。 不可能なことは無い。 
・・・敵は、“タリスマン”が自動的に『シールド』を張ったことを知っていたのだろう。 
だからこそ、『シールド』を破ることで結界の力を弱めた・・・。 
本来の結界を破らずとも、『シールド』を破壊することである程度の場所は特定できるさ。 
・・・精霊の力は、全てにおいて平等。 聖にも魔にも力を貸す。 
だからこそ、やつらでさえ見つけることは可能・・・・・・」 
 
 
 
 
紫苑の言葉に優衣は眉を顰めながら嘗て自分たちが封印したはずのものが、 
そう簡単に見つかるはずがないと呟いた。 
しかし、そんな優衣の言葉を否定するかのように、 
由岐は自分たちの守護する精霊たちが《人界》では全てに対して平等だと告げた。 
 
 
 
 
「・・・俺たちが目覚めたことと、何らかの関係があるはず。 何故、目覚めるのが今だったのか・・・・・・」 
 
「・・・目覚めの原因・・・。 星が私たちを選んだから? ・・・敵とは・・・まさか!?」 
 
 
 
 
今まで封印されていた膨大な量の記憶を一気に見せられた優耶はどこか釈然としないものの、 
何故自分たちが目覚めたのかを疑問に思った。 
 
 
 
そんな優耶の問いかけに答えることができるのは、一つしかなかった。 
 
その事に辿り着いた真琴は、自分の考えが間違いであることを願った。 
 
 
 
 
「・・・私たちの目覚め。 星の存亡をかける戦い。 
・・・この二つの鍵を握るのは、やっぱり・・・『天より追放されし者・堕天使』。 彼らしか、思い当たらないわ」 
 
 
 
 
雫の淡々とした呟きは、誰もが思っていた事であり現状を指している。 
彼女たちは元々、堕天使となった3人を追って《人界》へ降臨したのだ。 
その時は彼らが見つかることなく、《天界》へ戻ることなく現代まで転生を繰り返してきた。 
その際、多くの記憶を封印して・・・・・・。 
 
 
 
 
「・・・風が、怯えている。 彼らの目的が“タリスマン”だとして、真の目的は何だ? 
確かに、“タリスマン”はそれぞれ巨大な力を秘めている。 
だが・・・あれは俺たちの力も一緒に込められているはず。 
確かに、彼らも俺たちと同じ聖力を持っていたが・・・天界を追放された時点で、 
その力は、既に無いはずだが・・・・・・」 
 
 
 
 
先ほどの優しく撫でるような風の動きとは一転、 
怯えるように冷たい空気となって久遠たちに吹いてくる風に対して、 
風と共に僅かにだが向かってくる波動に反応した。 
その腕にはしっかりと抱き締められていた聖華の姿があり、久遠は妹を護るかのように強く抱き締めた。 
そんな久遠の行動に苦笑いを浮かべながらも彼の横に立ち、同じように護る姿勢の紫苑は、辺りを見渡した。 
 
 
 
 
 
台東区・上野の上空に突如、暗黒の筋光が六本出現した。 
その光は六角形の形を作り出し、その中央に一筋の暗黒の光柱が新たに出現した。 
その光は天空から地上へ突き刺されたような印象を与え、 
本来ならば『シールド』で遮られているはずのモノが、 
『シールド』が破壊されている為に易々と本来拒絶するモノを易々と入れていた・・・・・・。 
 
 
 
七本の光の中心に、黒い光で球体が作り出され、人の形となってその光は徐々に消え去っていった。 
完全に黒い光が消え去った後、 
そこには先ほどまではいなかった7人の姿があり、それぞれが漆黒の翼を広げていた・・・・・・。 
       
 
 
 
 
 
 
 
      ―――― 姿を現し、闇の力を持つ7人の漆黒の翼を持つ者たち。 
      巫女姫の“予知夢”と同じく、天空に禍々しいモノを連れてその姿を現した・・・・・・ 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2008/11/01 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
第三章の開始です。 
二章の最後で覚醒した7人。 
これから、この話の佳境となります。 
・・副題を考えるのが、苦しくなってきました; 
 
 
 
 
 
      
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