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       「頭に流れてくる膨大な量の記憶。 俺たちは、真実を知る為に人間へと転生した。 
決して、《天界》に反旗を翻したわけじゃない。 
ただ・・・ゼウス様が必死に隠していた真実を、知りたかっただけ・・・・・・」 
 
 
 
 
俺たちは、真実を知りたかった。 
頑なに、ルシフェルたちを堕天と認定して俺達に討伐させようとしたその真意を。 
ゼウス様を疑っているわけじゃない。 
あの方は、《天界》において絶対的存在のお方。 
・・・俺たちの創造主なのだから。 
だが・・・《人界》に結界を張り、ルシフェルたちの足取りを見つけることが出来なかった俺たちは、 
二度と《天界》へ足を踏み入れることが出来なかった。 
だが・・・ミカエルは諦めなかった。 
ルシフェルに、彼本人から真実を語られるまでは・・・・・・。 
 
 
 
 
 
 
      ―――― 覚醒した魂。 
      長き眠りを経て、前世の記憶が目覚めた。 
真実を・・・真に望むものを手に入れる為、彼らは再び戦いにその身を置く・・・・・・ 
 
 
       
       
       
       
       
       
       
apocalypse 
          ― 七大天使の覚醒 ― 
       
 
       
       
       
       
       
       
       
       
       
 
 天空から流れる欠片を凝視していた7人。 
その凝視していた時は周りの者たちには数分に感じられるが、本人たちにとっては数秒に満たない。 
次々と記憶という時空を越えていた場所から現実へと戻りかけつつあったが、 
唯一紫苑だけがまだトランス状態であった。 
 
 
 
 
「・・・兄・・様・・・・・・」 
 
 
 
 
紫苑の口から小さく呟かれた言葉は、空気となって大気に溶け、紫苑の右の瞳から一筋の雫が零れ落ちた。 
雫が地面に落ち、光となって辺りを包み込んだ。 
 
 
 
 
『ventus〔ウェントゥス〕』 
       
      『terra〔テッラ〕』 
       
      『aqua〔アクア〕』 
       
      『caelum〔カエルム〕』 
       
      『nix〔ニクス〕』 
       
      『mons〔モンス〕』 
       
      『ignis〔イグニス〕、tonitrus〔トニトルス〕』 
 
 
 
 
トランス状態になっていた彼らの頭の中に、一つの言葉が浮かんできた。 
その言葉を無意識に呟いた時、突如彼らの前に強い光が現れた。 
そのうち、紫苑・久遠・優衣・由岐の目の前に光るものは、それぞれ紅・翠・橙・蒼の4色であった。 
 
 
 
 
彼らを包み込んでいた淡い光は、彼らの足元に円陣を描いた。 
彼らの足元に描かれた円陣は、次第に魔法陣のようなものに変化した。 
魔法陣を描き、純白の光は天空へ向かってその上に立つ紫苑たちを包み込んだ。 
 
 
目の前で強く光るモノに漸くトランス状態から現実へと戻った紫苑たちは、 
何かに導かれるかのように目の前に何かを形取りながら光る物体に触れた。 
彼らがその光に触れた瞬間、光だったモノが突如具現化して彼らの手の中に納まった。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
紫苑の持つものは、全体が真紅の色をした日本刀よりも少々長い剣と、 
同じように全体が黄色の半分ほどの長さの双剣。 
久遠の持つものは、片手では決してもてないほどの翠の色をした大剣。 
優衣の持つものは、橙色で統一されている細長い鞭。 
由岐の持つものは、蒼の色をした日本刀のようなもの。 
雫の持つものは、ワインレッドの色をした弓道で使用されるほどの大きさの弓。 
優耶の持つものは、シルバーグレイの背丈ほどある棍棒。 
真琴の持つものは、銀色の大きな鎖鎌。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
目の前に出現したそれぞれの武器を手に掴んだ瞬間、 
それまで制服だった彼女たちの姿は一変し、今まで見たことのない衣装をその身に纏っていた。 
 
 
 
 
 
――― いや、その衣装は先ほどまで彼女たちがトランス状態の時に見ていた衣装と同じであった・・・・・・。 
 
 
 
 
 
7人の衣装は統一されており、違いといえば男女の違い―ズボンかスカートの違い―しかない。 
全身を純白で統一され、肩と胸元から下半身にかけてのラインは銀色。 
下半身のラインは、十字架が描かれている。 
彼らの身に纏う衣装が変わり、彼らを包み込む純白の強い光はその威力を徐々に弱めた・・・・・・。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
突如、強い光が大切な兄たちを包み込み、その様子を不安げな表情で見ていた聖華は、 
咄嗟に駆け寄ろうとしたところを隣にいた幸正によって引き止められた。 
 
 
 
 
「何をなさるのです!?」 
 
「離して下さい!! 兄様たちが・・・!!」 
 
「久遠さんたちならば、大丈夫です。 ・・・あの光は、彼らに対して害を与えるものではありません。 
彼らの中に眠る何かが、覚醒いたしました。 
それが何かなど、私には分かりませんが・・・あの方々は、星が選びし者たち。 
・・・きっと、私たち以上の重い定めを担っていたのでしょうね・・・・・・」 
 
 
 
 
自分の腕を掴む幸正を振り払おうとする聖華だが、 
か弱い少女が成人している男性の手を振り払うことが出来ない。 
彼らを包む光が、目の前の少女に危害を加えることは無いと思うが、 
それでも安全な場所から動かないように注意してしまうのは仕方が無いことだろう。 
 
 
 
兄たちの安否を心配する聖華に対し、水月は聖華を安心させるようにニッコリと微笑を浮かべた。 
彼女自身、自身の言葉に対して根拠はないにしてもどこか確信していた。 
“予知夢”が彼女に見せたものは、確かに紫苑たち7人。 
しかし、目の前にした彼らを見てどこか違和感を覚えたのもまた事実であった。 
気配は同じでも彼らの雰囲気が“予知夢”に映し出された彼らとは違っていたのだ。 
だからこそ、彼らがまだ完全ではないと確信できたのだろう。 
そして、その覚醒は近いうちに起こりうると思ってはいたが、 
こんなに早く訪れるとは、彼女も予測が出来ずにいた。 
 
 
 
 
水月たちが静かに見守る中、 
紫苑たちを包み込んでいた白い光は徐々にその威力を弱め、光が彼らを包み込む前までその威力を弱めた。 
威力の弱まった白い光は、小さな輪となって紫苑たちの頭上へと分かれた。 
頭上に導かれた光は、突如その光を強めたが、 
そのひかりは一瞬にして弱まり、吸い込まれるかのようにそれぞれに降下した。 
 
 
 
 
 
光が紫苑たちに吸い込まれるようにして消え去る頃、 
彼らの足元に描かれた魔法陣もまたその姿を消しており、辺りは再び沈黙に包まれた・・・・・・。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
―――― 全てを思い出した7人の天使。 
人間への転生を繰り返し、現代までその記憶を封印し続けた。 
魂に施された封印は解け、今――甦る・・・・・・ 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2008/10/01 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
とりあえず、第二章はこれにて完結。 
過去編と現代編の繋がりは、この章で明らかとなったはずです。 
尚、今回登場した7人の武器は、私の好みですw 
また、武器名は【天使の武器】と言うことでラテン語となっております。 
和訳版は、設定にて。 
次回からは過去編はなく、現代編のみとなっております。 
・・・コメントが無いので・・・誰も見てはいないと思いますが、ここまできたら最後まで更新します(涙) 
 
 
 
 
 
      
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