「・・・往こう。 真実を確かめに。 きっと、彼らにも何かの事情があったに違いない」



・・・ルシフェルは、誰よりもミカエルを大切にしていた。
そんなヤツが、大切な無二の半身を置いて堕天するなど、俺も納得が出来ない。




だからこそ、ヤツの真意を確かめる為にも・・・ゼウス様の勅命を受けた俺たちは、
ルシフェルたちが向かったとされる《人界》へ降りる。






―――― 友を思う心。
半身を失い、自我をも失いかけるほどのダメージを与えられた無二の親友。
彼の唯一無二の半身の考えを知るため、4大天使と3人の天使たちが《人界》へと舞い降りる








apocalypse
    ― 天使、降臨 ―











純白に光り輝く世界。この世界の唯一の出入り口の門。
そしてこの世界の主であり、
創造主である『あの方様』・・・ゼウスの命によって
《天界》に反旗を翻す堕天使や対極の勢力である《地界》の住人・・・悪魔との闘いのために
《天界》と《地界》の狭間や人間たちの生きる《人界》へ向かう為の門でもある『天界門』。
今回もまた、
ゼウスからの勅命を受けて4大天使が『天界門』前にて、門の開門の時間を待っていた。



「・・・情報によりますと、ルシフェル様方は《人界》へ向かったとのこと。
テレポート先は、そのポイントに設定いたしました」



『天界門』が開門されるまでの間、
堕天したルシフェルたちが最後に目撃されたとされるこの門に、
《人界》に降りた形跡が残っていた。
その形跡を元に、彼らの位置を特定したレミエルは、自分の上司たちにそのことを報告した。



「・・・ご苦労様。 貴女たちはここで待機していてください。
これは、我ら4大天使に命じられた任務です。 ・・・貴女たちを巻き込むわけにはまいりません」

「・・・いいえ。 ぜひとも我らもお連れくださいませ。
私たちの力では、ウリエル様方の足手まといになることは重々承知の上でございます。
ですが・・皆様が危険な任務を遂行している間、我らが安全な場所で待機など・・・。
ルシフェル様方には敵わないとしても、下級悪魔たちには負けません」



レミエルの報告を聞いたウリエルはニッコリと優しげな微笑を見せると、
《人界》に降臨するのは自分たち・・・4大天使だけでいいとレミエルに伝えたが、
レミエルは彼女の言葉を頑なに拒んだ。



「レミエルの言うとおりです。 我らは貴方様方の部下。 己の力など、高が知れておりましょう。
しかし、貴方様方を煩わせるものの排除などの任には、就ける筈です」

「・・・危険だぞ?」

「それは、承知の上です。 我らは貴方様方をお守りする為に共に参ります。
決して、貴方様方の任務の支障にならないよう、最善の注意を払います。
・・・我らの任は、貴方様方の邪魔をする下級魔族を排除。
ですから、皆様は任務の方に集中してくださいませ。
下級の者共などに、皆様が力を使う必要は、ありませんから」



レミエルの言葉に賛同するように隣にいたアナエルが静かに口を開き、
それでも留めようとするガブリエルの言葉に、サマエルは静かに首を振って否定した。



レミエルたちは自分たちの上司であるミカエルたちを心酔しており、
至上主義な部分も多少あった。


その中でもレミエルの4人に対する忠誠心は他の2人よりも強く、
そして彼らの敵に対しては容赦がない。



「ミカエル様方。 《人界》へご降臨なされるのですか?」

「ラジエル。 お前がここのいるとは・・・珍しい」



苦笑いを浮かべながらも部下たちを説得するミカエルたちの前に、
1人の天使がその姿を現した。
ミカエルにラジエルと呼ばれたその天使は、
神秘を司る天使で、滅多に宮殿から外に出ることがない。



その事を知るミカエルは純粋に彼がここにいることに対して驚いた。



「・・・皆様にお伝えすることがございます」

「伝えたいこと?」

「はい。 ・・・数日前より、予兆はあったのですが・・・僅かな力のため、気付くのが遅れました。
・・・現在、《人界》において何らかの力が作用し、異変が起きております。
・・・その原因がなんなのかは、ここから感知することは難しいですが。
しかし、《人界》へご降臨なされるのでしたら、十分ご注意くださいませ」



ミカエルの純粋な驚きに対して苦笑いを浮かべながらも、
滅多に出ない外に出た最大の理由を彼らに告げた。



ラジエルは他の天使たちよりも自分たちと異なる力を感知する能力に長けており、
ミカエルたちよりは地位が低いものの、その聖力は高い。




ミカエルたちは力が巨大のためにその力をコントロールし、
尚且つ制御装置をそれぞれ宝飾として形を変えてはいるものの常に身につけている。


そのため、《人界》への降臨や《地界》に住む魔族や
《天界》に仇をなす者たちの討伐以外は力を制御している。
そのため、彼らと異なる力を察知することがあまり出来ないのだ。
そのこともあってか、
《人界》おいて異変を誰よりも早く察知する役目がラジエルのもう一つの任となっている。



「・・・分かった。 十分注意しよう。
・・・ついでになるが、その異変の正体も我らで調べるとしよう」

「よろしくお願いいたします、ミカエル様」

「ミカエル様方。 開門の準備、全て整いました」



ラジエルの言葉に神妙な顔付きでミカエルは頷き、
そんなミカエルに対して安心した表情を見せたラジエルは、
ミカエルたちに敬礼するとそのまま宮殿内へと戻っていった。
ラジエルが宮殿内へと姿を消した後、
『天界門』の開門準備を整えていたサマエルは全て整ったことを伝えた。




サマエルの報告に頷きを返したミカエルたちは、
一度だけ宮殿の中央にある純白の高い塔を見つめ、
頭に残る雑念を振り払うかのように小さく頭を横に振った。



「・・・往くぞ」



開かれた『天界門』から7人の天使たちが《人界》へ向けて、飛び立った・・・・・・。







―――― ミカエルの脳裏に浮かぶのは、
この場にはいない彼の唯一無二の半身の姿であった・・・・・・。










《天界》と《人界》の狭間の地点で、
『天界門』を通過する時には既に聖力制御装置は解除されており、
設定された地点からずれないよう、注意を図っていた。



そんな中、風を司るラファエルは、《人界》から向かってくる風の中に、不快感を覚えた。



「・・・ミカエル。 ラジエルの言う通り、《人界》において異変が起こっているようだ。
風たちに混じって我らとは相対する力・・・魔力を感じた」



不快感を探るように、風と共に感じられた力を探ろうと、
ラファエルは翼を巧みに操りながら意識を集中させ、辺りの気配を探った。
そんな中、彼らの真下・・・《人界》から増大な負の力を感知し、
隣を飛行中の見返るたちに注意を呼びかけた。



「!? ・・・ラファエルがそういうのなら、間違いないだろうな。
・・・確かに、この力の波動は魔力だ」

「・・・私にも、その力を感じられます。
・・・他の天使たちよりは感知能力は上ですが
・・・ミカエルたちよりも低い私にでさえ感知することが可能なこの力
・・・放っておくには、危険な力になりますよ」



ラファエルの言葉に、彼は風の守護者である為、
風が運んできた《人界》の異変を逸早く気づくことが出来たと納得したミカエルたちだった。
《人界》に近づく度に強くなる不快感はミカエルたちにも感じられ、
その力が彼らとは反するモノだと改めて認識した。

4大天使の中で尤も感知能力が弱いとされるウリエルでさえ
感知できるほどの力であるのならば、今後危険分子となりかねない。
尤も、4大天使の中で弱いといわれるが、他の天使たちよりは遙かに上である。



そのため、4大天使たちは気付いた魔力だが、
彼らと共に《人界》へ降臨した3人には、まだ感知できていなかった・・・・・・。








―――― 《聖力》と《魔力》。
相反する力の為に反発する。
だが皮肉にも、反する力だからこそ、巨大であればあるほど見つかるのだろう・・・・・・











2008/08/01













第二章が開始しました。
今回は、過去・・・前世です。
いろいろと調べていたんですけど・・・それでも妄想になりますね;
前世と現世が交互になっておりますので、分かりにくいかと思います;
しかし、後からその二つが重なり合いますv