| 「・・・俺の婚約者? いつ、そんな話になった? ザラ家とアスハ家の縁談が俺の知らないところで行われたと?オーブ学園生徒会長であるカガリ=ユラ=アスハ嬢。 俺は、貴様の婚約者になった覚えはないぞ?」
 
 
 
 あの女が俺の婚約者など・・・馬鹿げた事を。父上たちは、あの女の実家・・・アスハ家が大嫌いなんだ。
 あの家のやり方と、ザラ家のやり方は180度違う。
 第一、俺はあの女のようなモノがが一番嫌いだ。
 何でも自分に従ったりするのが当たり前だという考え方が、一番気に入らない。
 
 
 
 
 
 俺は、昔からキラしか愛さないのだから・・・・・・・。
 
 
 
 
 
 
 
 交差する想い― 後編 ―
 
 
 
 
 
 
 
 
 それから数分後、ザラ家からの迎えの車が正門前に到着したとの連絡を受けたアスランは、キラを刺激しないように最善の注意を払いながら車に向かい、後ろに横たえながらキラの頭を抱くように乗り込んだ。
 
 
 
 
 
 その様子を生徒会室から見ていたイザークたちは心配そうにしながらも残りの仕事を片付けるべく、自分たちの机に向かった。
 
 
 
 
 
 
 ― ザラ家・本邸 ―
 
 
 
 
 
 アスランとキラを乗せた車は、学園から少し離れた場所に止まった。目の前には大きな屋敷が彼らを見下ろしているがその屋敷こそ、彼らの住まいである。
 
 
 
 屋敷の中に入ったアスランはそのままキラを自室のベッドに寝かせ、堅苦しい制服を脱がせて普段着に着せ替えた。
 アスランは昔からキラが風邪などで着替えられない時、メイドたちに任せるのではなく自分がキラの面倒を見てきた。
 そのため、苦しそうに顔を歪めたキラに対してアスランはいつものように服を着替えさせた。
 
 
 
 「・・・アスラン、キラの様子は大丈夫なの?」
 「母上!? ・・・・まだ、お仕事中なのでは?」
 
 「早めに切り上げてきたのよ。 リフェルから連絡がきたから」
 
 
 
 キラの傍にずっといたアスランの耳に聴きなれた声が届き、視線を落としていた本から顔を上げて扉にいる人物へと向けた。そこにいたのは彼らの母親であるレノア=ザラの姿があった。
 彼女は学園の理事会のメンバーであると同時に研究員としても働いているため、
 普段からあまり屋敷内で顔を合わせることが少ない。
 長期休暇がない限り、彼ら家族が全員揃うことが稀なのだ。
 普段、この屋敷に住んでいる状態なのはアスランとキラの二人のみ。
 執事であるリフェル=マキスやメイドたちも住み込みだが、肉親と問われれば双子であるアスランたちだけであろう。
 
 
 
 「・・・そう、ですか。 一応、頭を強く打っていたので・・・保健室にてすでに処置した後です。 ・・・母上。アスハとの縁談などがきているのでしょうか?」
 
 「いきなり、どうしたの? アスハ? ・・・まず、ありえないでしょうね。
 あそこは確かに、力は近年になって上がってきたわ。
 でも・・・彼らが行っていることは私たちとは・・・馴れ合うことのできないほどに反発しているもの」
 
 
 
 息子の質問に首を傾げながらも彼の問いに答えた。実家の方針とアスハの方針を頭の中で比べていたアスランは納得したとばかりに頷いた。
 
 
 
 「・・・前々から、アスハ一族の直系であるカガリ=ユラ=アスハが学園に乗り込んできます。・・・セキュリティーの標準を上げたにもかかわらず、俺の婚約者だと名乗って入ってきました。
 ・・・その上、醜い嫉妬をキラに浴びせるだけでなくキラを突き飛ばして傷つけた・・・・・。
 その行い、最も許しがたいことですよ・・・」
 
 「・・・貴方に、伝えなければならないことがあるわ・・・・。 ・・・リビングに行きましょう?
 そこで、話すわ。 貴方とキラに関係するお話よ」
 
 
 
  アスランのまとうオーラが冷気を含むほど冷たくなったのをレノアは感じていたが、あえてその事に触れずにアスランをリビングに促した。
 
 
 
 
 この時、キラが意識を取り戻して2人の会話を聞いていたとは・・・予想すらできなかった・・・・。
 
 
 
 
 2人がリビングに向かった頃、キラもまたベッドから起き上がるとアスランたちの向かった部屋へ移動した。
 もちろん、アスランたちはキラが目覚めていないと思っていることを知っているためか、
 話の内容が気になるものの堂々と部屋の中に入れないのが今キラにある心情である。
 
 
 
 「母上、話・・・とは?」
 「・・・小さい頃から常にキラと一緒に行動をしていた貴方にとって・・・とても衝撃的だと思うことよ。
 ・・・キラは・・・あの子は貴方と・・いえ、私たちと血が繋がっていないの。 彼女の本当の両親は、ヤマト夫妻。
 カリダとハルマさんの大切な忘れ形見よ」
 
 「・・・・・・。 知っています。 いえ・・・知っているというより、覚えていますから・・・。
 キラが、この屋敷に引き取られた時の事を・・・・・」
 
 
 
 目の前に座った母の顔がいつになく真剣なものだったため、自然とアスランの姿勢も正しくなった。彼女から伝えられた衝撃的な事実は、気配を消して話を聞いていたキラにとって衝撃的なものだった・・・・。
 
 
 
 「・・・覚えていたの?」
 「えぇ。 キラは・・・あの後に高熱を出したからそのときの記憶が一切封印されたのでしょう。
 ・・・引き取られてまだ不安定だった頃、俺に話してくれました。 本当の両親が、彼女の目の前で殺されたということを。
 そして、殺されそうになった彼女を父上が救出したということを・・・・」
 
 
 
 レノアは息子の記憶力に驚き、アスランは当時キラから聞かされた話を母に伝えた。
 
 
 
 当時、キラはアスランにしがみつきながらこの話をし、アスランに力強く抱きついて泣き叫んだ。
 アスランはキラを外敵から守るように強く、抱きしめていた・・・・・。
 
 
 
 「・・・・そう。 ・・・当時、まだ犯人は特定されていなかったわ。けれど、あの後すぐに捉えられた者の中に見覚えのある男がいたの。
 ・・・その者は、アスハ一族が雇ったSP。 ・・カリダたちを殺したものたちは、アスハに雇われた者たちだったの・・・・・・」
 
 「アスハが・・・なぜ、キラの本当の両親を・・・・・・? キラ!?」
 
 
 
 レノアの言葉に倒れるのを防ぐために扉に縋ったキラは音を立ててしまい、アスランとレノアが気付いた。しかし、今のキラにとって先ほどの話は愕然とするもので目の前にアスランがいると認識した瞬間、彼に抱きついた。
 
 
 
 「・・・母様、僕・・・・母様たちの本当の子どもじゃないんだね・・・・」
 「・・・キラ・・・。 例え、そうであっても貴女は私たちの大切な子どもよ?
 私はもちろん、パトリックも貴女を愛しているのだから」
 
 
 
 アスランに抱きしめられたままレノアに視線を向けたキラに対し、レノアは微笑みながらキラの頭を優しく撫でた。
 
 
 「・・・キラ? 俺は昔からキラが好きだよ? 初めは・・・家族としての・・妹に対しての家族愛かと思った。・・けど、俺がキラに感じている愛情は決して家族愛じゃない。 ・・・キラを1人の女性として、愛しているんだ」
 
 「・・・僕も、アスランが好き。 何度も、諦めようって思った。 アスランは僕の・・・兄様だって思ったから。
 ・・・アスランと兄妹じゃないのは・・悲しいけど、家族には変わりないよね?」
 
 「当然だろう? 母上も父上も・・・もちろん、俺もキラが大好きだからね。 ・・・血の繋がりが全てじゃない。
 大切なのは、そこで過ごした時の流れだと思うよ」
 
 
 
 アスランはキラを抱き締める腕に力を加えながら、片方の腕で優しく頭を撫でた。その仕草は、昔からキラの悲しむことがあるといつもアスランのしていた仕草であった。
 アスランのぬくもりと優しく撫でられたキラは、静かに涙を流しながらアスランの胸に顔を埋めた。
 
 
 
 
 
 
 ザラ家にて衝撃的な告白がされている頃、アマルフィ家の一室では
 生徒会室にて真っ黒いオーラを垂れ流しにしていたニコルがPCの前に座ってどこからかのデータを抽出していた。
 
 
 
 「・・・コレほどまでのことをよく・・・。 ですが、ココまでですよ? アスハ代表並びにその直系のご息女?・・・アスランやキラさんに手を付けなければ・・まだ僕自身何もしなかったのですがね」
 
 
 
 ニコルはそう呟くと、先ほどまで見ていたデータの場所から静かに尚且つ、相手にハッキングの跡がばれないように最善の注意を払いながら退避していった・・・・。
 
 
 
 ニコルは入手したデータを彼らの使用するCD−Rに保存すると明日、アスランたちに渡すべく、
 厳重にロックをかけた重要な資料などの入っている箱に収めた。
 ニコルはアスランやキラには劣るものの学園が誇る優秀なプログラマーである。
 彼らの作るプログラムが独特のため一見理解が不能だが、手品のようにどんなプログラムよりも最速の記録で全てクリアしてきた。
 マニアル通りであればニコルのプログラムだろう。
 
 
 
 最も、生徒会に属する彼らはそれぞれ全ての成績において常に上位にいる者たちであるが。
 
 
 
 
 《ニコル、今よろしいでしょうか?》
 
 「ラクス? いかがなされました?」
 
 
 《・・・あの方に、ちょっとしたお仕置きを考えましたの。
 私たちの大切なキラを傷つけた罪、重いということを知っていただかなくてはなりませんでしょう?》
 
 
 「当然ですよね、それは。 ・・・何か、決まっておられるのですか?」
 
 
 《えぇ。 その点でニコルにお尋ねしたいのですわ。 ・・・学園内でハッキングをなされると申しましたでしょう?
 その際、あの方の今まで闇に葬られてきた裏でされてきたことを一緒に入手していただきたいのですわ》
 
 
 「・・そのことですか? すでに取ってありますよ。 一応、保険という形で取っていましたから」
 
 
 《まぁ! そうでしたの? ・・明日、アスランたちと合流した際にそのデータを全メディアに通して
 【プラント】中に流せるよう、こちらで手配いたしますわね。 では、ごきげんよう》
 
 
 「分かりました。 アスランには、こちらから連絡しておきますね」
 
 
 
 生徒会にて最も真っ黒い属性を持つ彼らは、淡々と学園のアイドルであるキラを傷つけた愚か者を徹底的に排除するための相談を堂々と繰り広げていた。
 この場にイザークたちがいたとしても彼らを止めることはできない。
 彼らを止めることができるのは、アスランかキラしかいないだろう。
 
 
 
 
 
 
 
 翌日、ラクスはニコルに伝えたように彼女の実家であるクラインの名を使って、
 各メディアに重要なことを伝えるからとデータを配信することを許可させた。
 そのことを受けたニコルはアスランからこの事のみに適応される全権を任せられているため、
 ラクスの合図の元昨日入手したアスハ一族とその直系の息女の今まで裏でして来た数々のことを全て流した。
 そのデータを受けた市民たちは怒り、アスハの支配する区域では多くの暴動が起こった。
 オーブ学園においても悪事の多い生徒会長と学園のスポンサーが
 彼らだと言うことを恥に思ったほかの理事会の者たちが彼らを学園から追放した。
 アスハ一族が経営する会社は次々と潰れ、路頭に迷う者たちが溢れた。
 そんな彼らを救ったのはアスランたちの実家である。
 彼らの実家も様々な会社を経営しており、彼ら自身も会社を既に興している。
 そんな会社に路頭に迷った元部下たちをそれぞれの能力の元で採用したのだ。
 彼らは元部下たちにまで怨みはない。
 彼らの上司であるアスハ一族のみ、路頭に迷うことを望んだだけだからだ。
 アスハ一族の者たちが路頭に迷うのは1週間の時間を費やすことなく、
 ニコルが全メディアにデータを流してから3日ほどしか時間は過ぎなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 この3日間の間でキラの体調も戻り、今まで通りアスランと一緒に学園に登校することとなった。
 今までと違う点とはキラが復帰した当日に理事長であるパトリック=ザラからキラが自分の養子である事を明かし、
 アスランの婚約者になったことを全校生徒に伝えた。
 学園の生徒並びに教師陣は彼らの婚約を心から祝福した。
 アスランのキラに対する溺愛ぶりに彼らの幸せを願うFCまでができるほど
 2人のツーショットが学園内で有名だったため誰もが彼らを祝福したのだ。
 
 
 両親の公認及び学園全員の公認となった彼らは、今まで以上のラブラブなオーラを生徒会室で撒き散らしていた。
 もちろん、小等部から彼らのオーラに充てられてきたラクスたちに効くはずもなく、
 微笑を見せながらも仕事に支障が出ない程度と釘を刺していた。
 そのことを理解しているアスランはラクスの言葉に頷きつつ、
 名実共に自分のものになった最愛であり唯一無二の絶対的存在であるキラを思う存分堪能していた。
 
 執行部メンバーに守られ、幼い時から思いを寄せていたアスランと幸せな時を過ごすキラは、
 普段からあまりメディア関係を好んで見ることはない。
 そのため、かつてこの場を乱していた金髪の少女・・カガリがピタリと来なくなったことに疑問を感じることなく、
 今までのようにアスランのサポートをする仕事をこなしていた。
 
 
 
 
 
 
 アスラン・キラに手を出そうとした愚か者は、彼らを大切に思う者たちから大きなしっぺ返しを受け一族中に迷惑をかけた。
 最も、彼らも人には言えないあくどい事を犯してきたことに変わりはなく酷い者に関しては警察の手が伸び、
 多くの者は監獄行きとなっている。
 権力を使ってそのことを阻止しようとするカガリだったがアスランたちのほうが上手でそのことをさせないよう、
 警察内に自分たちの配下を置いた。
 そのことにより、警察に捕まった一族は逃げることもできず、頼みの権力も適応されない相手になすすべもなく次々と捕まった。
 警察に捕まった者の中にはキラの両親・・・ヤマト夫妻の殺害を依頼した者たちもおり、
 キラが命の危険性を狙われることはひとまず回避された。
 
 
 ザフト学園とオーブ学園が合同で行うという企画も全て水に流され、オーブ学園側としては大きな損となる。
 ザフトは学園側の教育方針により家柄を重視しないためか個人の能力を伸び伸びと伸ばすことができるため、
 様々な事業が成功している。
 そのこともあってか卒業生たちは母校に通う自分たちの後輩のことを大切にし、
 自分たちの会社で適応する能力を持つ者を採用する仕組みとなっている。
 そのため、ザフトの就職率は近くの学園よりも高く、ほぼ100%を毎年たたき出している。
 それとは正反対にオーブでは最低ラインをここ数年間下回っている。
 そのため、オーブ側では今回の合同の話が持ち上がった時、
 成功した暁にはザフトとの友好を深め・・・尚且つザフトの生徒会長と自分たちの会長が婚約した立場になれば
 その恩恵が与えられる欲を出していたのだ。
 
 
 もちろん、そのことはアスランを始めとするザフトの生徒会執行部は彼らの考えを許すことなく、
 今後一切彼らとの連携を設けないこととオーブからの転入者を受け入れないことをオーブの理事会に宣言している。
 彼らはアスランたちの要求に応じるしかなく、最大のチャンスだったザフトとのパイプを自分たちの手でダメにしたのだった・・・・。
 
 
 
 
 
 
 
 一方、オーブとの繋がりを全て切り捨てたザフト側は自分たちの平穏を台無しにする者が二度と学園に来ないことを喜び、
 それを実行した執行部の支持率が今まで以上に上がった事は記するまでもないだろう。
 それほどまでにカガリたちの行ってきた行動に生徒たちもまた迷惑を被ってきたのだ。
 
 
 
 「キィラ? 好き嫌いしちゃだめだろう?」
 「・・・・だって・・・・」
 
 「だってはなし! ほら、ちゃんと食べる!」
 
 「やぁ!!」
 
 「嫌もダメだよ? ・・・せっかく、キラのためにデザートも一緒に作ったんだけど・・・好き嫌いするキラにはあげられないな・・・・・」
 
 「それもや! ・・・頑張って食べる・・・」
 
 「分かった。 ほら、コレなら食べられるだろう?」
 
 「・・・・・うん」
 
 
 
 キラはアスランにお弁当の中身を食べさせてもらいながら最後に口直しとばかりにキラの好きなデザートが放り込まれた。
 
 
 「・・・・・毎度のことながら、よくソレが続くよな・・・・」
 「ソレこそ、今さらだろう? ディアッカ。 こいつらのコレは、昔から変わらないのだからな」
 
 「そうですわ。 私たちがアスランたちと出会った時からこんな感じでしたもの」
 
 
 
 ディアッカの呆れ声に淡々と食事を続けていたイザークとラクスは苦笑いを浮かべながらも彼らの様子を見守っていた。この中で一番付き合いの長い2人に無自覚バカップルという名の称号を与えられた2人は
 周りの空気を気にすることなくいつものように一時の休みを堪能していた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 何人たりとも、彼らの絆を崩すことはできない。
 血の繋がり以上の繋がり・・・心が繋がっているのだから・・・・・。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   
 
 
 
 
 
  
 
 後編でございます。双子という設定、大好きですよ♪
 アスが兄なら尚更vv
 しかし、近親相姦にする予定は最初からなかったので・・・・義理の兄妹ですけど;
 そんな(義)双子を優しく、暖かく見守るのが幼馴染のイザークを始めとする執行部メンバーv
 オーブ学園だけでなく、プラントからも追放された某とは、二度と会うことはありませんv
 某のバカらしい暴走に振り回されることなく、幸せを築くことでしょう♪
 
 2005/05/31投稿
 
 
 2006/09/12
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