僕たちから贈る、祝福の言葉。
君に出会えたことを、感謝する日。
この日の奇跡に、僕は君をこの世に生み出した全てのものに、感謝します。
貴方の傍にいられることが、僕の幸せなのだから。



―――― Happy Birthday,athrun!!








Adiantum・外伝
    ― 一時の休息 4 ―











晴天の秋空の下、アカツキ島に建つ孤児院では和やかな雰囲気と共にパーティが開催されようとしていた。
鳶色の髪とアメジストの瞳を持つ女性は、そのほっそりとした身体に純白のロングドレスを纏い、
細い背にはドレスの重心ともなる紐がリボンの役目を果たしていた。

桃色の髪とアクアマリンの瞳を持つ女性は、アメジストの瞳を持つ女性とは対照的にシンプルでいて、
膝上までの長さがある髪と同じ色のしたロングドレスをその細身に纏っていた。

白銀の髪とサファイアの瞳を持つ青年は、自身の髪と同系色である灰色のスーツをその身に纏っている。

黄金色の髪とヴァイオレットサファイアの瞳を持つ青年は、深緑色のスーツを身に纏っており、
若草色の髪とトバーズの瞳を持つ青年は、淡い紺色のスーツをその身に纏っていた。




そして、今回の主役である紺瑠璃色の髪とエメラルドの瞳を持つ青年は、
彼の唯一無二にして至宝であるアメジストの瞳を持つ女性の衣装と対になるよう、
漆黒のスーツをその身に纏っていた。



「アスラン、お誕生日おめでとう」

「おめでとうございます、アスラン」

「おめでとう。 何を呆けた顔をしている。 貴様は俺たちの幼馴染だろうが」

「そう言うなよ、イザーク。 おめでとう、アスラン」

「素直じゃないんですから、イザークは。 おめでとうございます、アスラン。
今回、僕たちがここにいる一番の理由は、今日ですからね」



キラはニッコリと微笑みながら隣にいる右翼に生誕の言葉を贈り、
その様子を近くで見ていた幼馴染たちもまた、1人1人彼に生誕の言葉を贈った。
彼を幼い頃から一方的にだが敵視し、
何事にも勝負を持ちかけてきた一つ上の幼馴染の言葉に驚きを隠せないアスランは、
普段はまず見られない表情で固まり、そんな主役の姿に他の幼馴染たちは苦笑いを浮かべた。



「アレックス、お誕生日おめでとう!」

「アスラン、おめでとう!」

「アスランじゃないよ、アレックスだよ」

「でも、キラたちはアスランって言ってるもん」

「どちらでもよろしいですわ。 彼には、変わりないのですから」



孤児院に住む子どもたちも、我先にとアスランの足元に近づいてはお祝いの言葉を嬉しそうに発した。
彼の名に、いつものように口論となりかけるのだがその様子に「あらあら」と口元に両手を持ってきたラクスは、
子どもたちと視線を合わせ、ニッコリと微笑を浮かべた。



「今回、時間はありましたが・・この情勢ですからね。 プレゼントは、無難なものを用意しましたよ」

「私とニコル、そして子どもたちは今流れている曲と、これから演奏するモノですわ」

「後ほど、この曲のデータをまとめたものがありますのでお渡しいたしますね」



パーティが開催されたと同時に静かに、会場の雰囲気を壊すことなく馴染むBGMに対し、
アスランはどこか懐かしそうに淡く微笑む姿をニコルは目撃していたのか、
嬉しそうに微笑みながらアスランに約束した。
その言葉に、アスランもだが隣にいたキラも嬉しそうに微笑を浮かべた。




ラクスに呼ばれて、ラクスの近くにやってきた子供たちに微笑を浮かべたラクスは、
そのままピアノの近くまで子どもたちを誘導し、ニコルに視線を向けた。
その視線の意味を正確に理解しているニコルは、
一度微笑みながら頷くとセットしてあるピアノに座り、一曲を引き始めた・・・・・・。



「俺たちも、何か用意しようと思ったんだがな。 ここの飾り付け等に追われて、用意できなかった」

「そこでだ。 無難にして貴様が喜ぶことは考えるまでもなかった。
この後のことはこちらで全て引き受ける。 貴様はキラと一緒に過ごせ」



ニコルのピアノと可愛らしい子どもたちのコーラス。
そして、それらに合わせてラクスの透き通った美しい声がホールに響く中、
テラスにいたアスランたちに声をかけたのはディアッカたちであった。
イザークの手にはシャンパンの入ったグラスが持たれており、
そんなイザークの姿にディアッカは苦笑いを浮かべた。



2人の言葉に驚きを隠せなかったアスランだったが
この後―主に子どもたちの相手―のことを一切考えることなくキラの傍にいられると理解したアスランは、
小さく2人に礼を言うと隣でキョトンとした表情を見せていたキラの手を引いて、
宛がわれている自室へ向かった・・・・・。



「アスラン? ニコルたちの途中だよ?」

「大丈夫だよ、キラ。 あいつらだって俺の行動パターンを読んでいる筈さ。
心配はいらない。 それより、キラを充電させて?」



沈黙したまま自室へ連れてこられたキラは苦笑いを浮かべながらも、
せっかくの演奏と歌声の途中で抜け出したことに罪悪感があるのか、
抜け出させた張本人であるアスランの背に抗議した。

そんなキラに対し、アスランは掴んでいた手を離して振り向くと、
ニッコリと微笑みながらキラをギュッと抱き締めた。



アスランの囁く声に、どこか疲れた様子を感じたのかキラは抗議することを諦め、
アスランを優しく包み込むかのように自ら抱き締めた。



「・・・もう、しょうがないなぁ。 立っているまんまはきついよ? 座ろう?」



抱き締める腕を緩め、キラをジッと見つめていたアスランに慈愛の満ちた微笑を浮かべたキラは、
視線をベッドに移し、ニッコリとアスランを催促した。
そんなキラに小さな頷きで肯定したアスランは、キラと密着したままベッドに雪崩れ込んだ。




ギシッと音を立てて二人を受け止めたベッドだがアスランはそんなことを気にすることなく、
キラを再び強く抱き締めた。



「キラ・・・・キラ」

「アスランに渡したいものがあるんだ。 受け取ってくれる・・・?」

「? なんだい?」

「僕からのプレゼント。 これからの季節、とても寒くなるからね」



抱き締めた状態でキラの耳元にキラの名前だけを呟くように連呼していたアスランだったが、
抱き締めているキラの言葉に反応しないはずがなく、
キラの言葉に疑問を感じながらも抱き締めていた力を緩めて拘束を解いた。



アスランから離れると、一緒に持ってきていた小さな箱のようなものをアスランに手渡した。



「これは・・・・マフラー? あ、手袋もある」

「ふふっ。 時間、余っちゃったからもう一つ作ったの。 僕と、お揃いだよ?」



キラから手渡された箱の中には真っ白なマフラーと同じ色の手袋が入っており、
キラは優しく取り出すとアスランの手にその手袋をはめ、
ちょうどいいサイズなことに満足そうに微笑を浮かべた。



「キラとお揃い? ありがとう、キラ。 大切にするよ」

「喜んでもらえてよかったv」



キラにはめられた手袋に視線を落とし、キラに戻したアスランは今まで以上の微笑を浮かべていた。
そんなアスランの微笑みに、嬉しそうに・・・そして恥ずかしそうな表情でキラは頷いていた。



「とても嬉しいよ、キラ。 ・・・君に、渡したいものがあるんだ」

「? なぁに?」

「これ・・・受け取ってくれないかい?」



手袋を優しい仕草で外したアスランは、
ベッドの傍に在る机の引き出しに置かれていた小さな箱を取り出すと、
キラの両手を優しく掴むと、その上にその小さな箱を置いた。



「・・・これって・・・」

「俺の、キラへの気持ちだよ。 本当は、もっと早くに渡すつもりだったんだけどね・・・・。
遅くなって、ごめんね?」

「そんなことないっ! どうしよう・・・。 凄く、嬉しい・・・・。 嬉しいよ///」



小さな箱に入っていたのは、シンプルなデザインの2本の指輪。

少し大きめの物には中央に小さなアメジストが埋め込まれており、
小さめの物にはエメラルドが埋め込まれていた。


アスランはエメラルドが埋められている指輪を箱から取り出すと、
キラの右手をそっと引き寄せ、薬指に嵌めた。



「こっちの指は、本番で渡すね。 これは、エンゲージリングだから。 この指輪、俺に嵌めてくれる?」



アスランは左手を優しく自身に引き寄せると、薬指に触れるだけのキスを落とした。
そんなアスランの行動に初々しい様子を見せるキラは、赤面していたが嬉しそうに微笑を浮かべていた。



「うん・・・」



アスランに催促され、キラはドキドキした様子で自分に嵌めてもらった時のようにアスランの右手を取り、
薬指に自身の嵌める指輪と対の存在である物をアスランに嵌めた。


そんな様子を静かに見つめていたアスランだったが、自信に付けられた瞬間、キラを強く抱き締めた。
咄嗟のことに驚きを見せたキラだったが、
すぐさま嬉しそうに微笑むと自らアスランに甘えるように擦り寄っていった・・・・・。










世界が再び、混乱に飲み込まれようとしているこの時、
先の大戦で尤も傷つきながらも世界を平和へと導いた彼ら。

そんな彼らの《永遠に、共にいる》という約束をその胸に、
混乱に巻き込まれないように奮闘しようと、最愛の者を抱き締めながら、
彼の中で決めていたモノが、確定した瞬間でもあった・・・・・・。








2007/01/28







漸く、完結いたしましたv
・・・完結するのに、何ヶ月もかかってしまいましたが;
如何でしたか??
一応、本編にリンクするようにロンドさんやエリカさんを出してみましたv
某の本格的制裁は、本編ですが邪魔ばかりするので今回は、
少しお灸を据えるってことでv
これから数日後にアスランのプロポーズし、単身プラントへ向かいます。
時期的には、本編の一話前という感覚でした。
爆弾に関しては、エリカさんが製作してちょっと細工を組み込んでいますv
・・・一応、モルゲンレーテの方ですしね。
ここまで読んでくださり、ありがとうございましたv