カレッジ内にある公園からキラたちが向かったのは、自動運転が搭載されているエレかステーションであった。
彼らの所属する研究室のある工区・モルゲンレーテ内にある。
そのため、カレッジから離れた場所にあるのだ。
「だから、そう何じゃないんだってば」
「え〜、うっそ〜」
「白状しちゃいなさいよ〜?」
「だから〜、うふふっ。 あれ? ミリアリア」
乗り場まで歩いていた彼らの目の前に、同じカレッジに通う3人の少女たちの姿を見つけた。
近づいてくる3人に、否定を口にしていた少女がミリアリアの姿を見つけ、彼女の名前を呼んだ。
ミリアリアの名前を呼んだ少女・・・深赤髪の少女の姿を見つめたキラは、
傍目からは分からないものの僅かに冷気を纏っていた。
(フレイ=アルスター。 大西洋連邦事務次官の娘。
確か、データでは父親であるジョージ=アルスターは、ブルーコスモスの一員だったよね?)
「はぁ〜い」
「ねぇ、ミリアリアなら知っているんじゃなぁい?」
「何を?」
名前を呼ばれたミリアリアは、片手を上げながら返事をした。
そんなミリアリアに、
深赤髪の少女・・・フレイ=アルスターをからかっていた2人の少女はミリアリアに標的を変え、尋ねた。
そんな2人に対し、ミリアリアは首を傾げながら先を促した。
「止めてよってば、もう!」
「この子ったら、サイ=アーガイルに手紙貰ったの! なのに、なんでもないって話してくれないのよ?」
「アンタたち、もういい加減に!」
一緒にいた2人に牽制しようとしたフレイだが、
フレイの静止を聞かずにミリアリアたちにとってよく知る人物の名前が飛び出した。
会話に浮上したサイとは、彼らと同じ研究室に所属する一つ上の人物の名前であった。
冷やかすような口調をする友人たちに、フレイは怒ったように拳を作り彼女たちに向かった。
「ん、んん。 乗らないのなら、先によろしい?」
「あ、すみません。 どうぞ」
(・・・あの身のこなし、民間人じゃない。 ・・・地球軍、か)
静かに観察していたキラは、背後から近づく気配に反応し、僅かに身を引いた。
キラが身を引いたと同時に、背後からサングラスに白い手袋をはめた女性から声をかけられた。
そんな女性の言葉に、トールは慌てて通路を塞いでいた場所から移動すると、
空いた通路を女性を含めて3人が前に停車していたエレカに乗り込んだ。
「・・・もう、知らないから! 行くわよッ!」
「あッ、待ってよ〜」
先に乗り込んだ女性たちを見送ったフレイは、
溜息を吐きながらもクルッと方向転換をして新たに停車したエレカに乗り込んだ。
そんなフレイに、2人の友人も慌てて乗り込み、発進して行った・・・・・・。
「手紙だって、サイが。 意外だなぁ。 フレイ=アルスターとは。 けど、コレは強敵だよ? キラ=ヤマト君〜」
「うふふっ」
「僕は、別に!(・・・むしろ、嫌いな分類だよ)」
静かに観察していたキラに対し、
何を勘違いしたのかトールはキラの見つめている先にフレイがいる事に、
ニタニタと笑いながら次に停車したエレカに乗り込んだ。
そんなトールの言葉に、微笑みながらミリアリアも続き、
言われた本人であるキラは内心で冷笑を浮かべながら表面上は焦った表情を作っていた。
カレッジの学生たちよりも先にエレカに乗り込んだ3人は、キラたちの向かう工区へ向けて運転中であった。
サングラスを掛けた男性が運転席に乗り、
助手席には20代半ばと思われる青年が座っており、後部席に女性が乗っていた。
「なんとも平和なことだ、まったく」
「は?」
静かに景色を見つめていた女性は、先ほど見た光景や目の前に広がる景色を見ながらポツリと呟いた。
そんな女性の言葉に、青年は反応して振り返った。
「あのぐらいの年で、もう既に前線に出ている者もいるというのに」
サングラスを外した女性は、眉を顰めながら彼女たちのいるコロニーでは無縁の世界・・・戦場を思い出していた。
だが、彼女の呟きはコロニー内にいる人間に聞こえることなく、
彼女たちを乗せたエレカは、目的地である場所へと走り去って行く・・・・・・。
3人の軍人たちが向かった場所と同じ所に、
エレカに乗り込んでいたキラたちも通過し、所属する研究室のあるブロックにむかった。
「いいじゃんか、別に〜。 お前が聞けないって言うんなら、俺が聞いてやるよッ」
「しつこいよ、トール」
キラはIDをスロットに差込み、セキュリティブロックを解除した。
そんな彼らのIDをモルゲンレーテの管制室で確認され、彼らの通行を確認した。
研究室に入ると、彼らのメンバー2人が既に来ており、作業を続けていた。
「うーす」
「お。 キラ、やっと来たか!」
作業していた物陰から顔を出した色眼鏡を掛けている少年・・・
先ほどエレカステーションで話題に上がった人物・サイ=アーガイルは、
キラの姿を確認するとホッとした表情を見せた。
そんなサイに対し、キラは彼らのよく知る少し控えめな苦笑いを浮かべていた。
「ちょっと前まで、教授にお客さんが来ていたよ。
でも、今は用事があっていないって伝えたら・・・後からまた来るって言ってどっかに行っちゃった」
作業過程を見ようと研究室備え付けのPCを覗き込んだトールに対し、
もう1人のメンバー・・・カズイ=バスカークは思い出したかのように呟いた。
「コレ、教授からの預かり物。 なんか、追加だってよ」
「えぇー」
サイは自分の作業していた机の上に置いてあったディスクを取ると、近づいてくるキラに渡す為に席を立った。
サイがキラに見せたディスクに、キラは嫌そうな表情を浮かべた。
「何なんだ? どうせ、モルゲンレーテの仕事の方だろうけど」
「さぁ。 ただ、フレーム設置モジュールの改良。 兎に角、プログラムの解析さ
(そう。 ただのプログラムの解析だよ。 ・・・本来、この場にあってはならないはずの・・・ね)」
ディスクを渡しながら内容を尋ねてきたサイに、キラは肩を竦ませながらただの解析だと伝えた。
その頃、漆黒に染まる虚空の世界・・・宇宙から【ヘリオポリス】内に侵入するザフト兵士たちは、
内部に繋がる唯一の出入り口である宇宙港のロックを開放し、
無数に広がっているセンサーシステムを即座に解除した。
解除したのを確認したザフト兵たちは、
真紅のパイロットスーツを身に纏っている5人を先頭に、次々に宇宙港の最深部へ向かって行った。
解除されたセンサーは、何の意味も持たず彼らが侵入してもプログラムは起動しない・・・・・・。
彼らは宇宙港の最深部に到達すると、先頭にいたエメラルドの瞳を持つ少年は、
目下に広がる戦艦を確認するとほかのメンバーにジェスチャーサインを出す。
そのサインに従い、十名ほどの赤・緑のパイロットスーツを身に纏うザフト兵たちは、
手に持つ爆破装置を、予め作戦で定められた場所に設置する為に散開した。
到る所に爆破装置をセットして行くザフト兵たちは、
上で作業を続けている地球軍に見つからないように注意しながら移動して行く。
爆破のカウントが、10秒を切った頃には全ての場所に設置し終わり、
彼らは爆破に巻き込まれないように予定されている脱出口へ向かう。
彼らが脱出を行っていた頃、
宇宙に止まったまま動くことなかったザフト艦2隻の旗艦である
ナスカ級ヴェサリウスの隊長席に座っていたクルーゼは、作戦時間を確認し、
表情は仮面で見えないが口元は僅かに綻んでいた。
「時間だな」
「了解。 ヴェサリウス、発進する!」
クルーゼの命令に、艦長席に座る男性・・・フレデリック=アデスは全艦命令を出し、
沈黙を守っていた2隻が動き始めた・・・・・・。
2008/09/01
漸く、半分まで着ました・・・・・・。
ブログの方で、すでにキラがザフトだとばらしているので・・・
やり直しをかけたこちらでは、初めから黒キラを前面に出しましたw
本来、最後まで隠しておくべきですが・・・こういうやり方もありかなとv
この話は本来ならば2話と打たなければなりませんが、本編ではまだ半分。
よって、【Iris】を含む本編沿い(捏造以外の忠実)に関してのみ、
本編と同じ話数で行きたいと思います!
副題に関しては、できるだけ違うようにやっていきますが・・・
途中で諦めたらそれまで野を含め、本編と同じ副題になるかと・・・思われますorz
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