「・・・ここが、SEED学園・・・。 小母様のお話だと・・この学園に『彼』がいるんだね」
この3年間、一度も『彼』を忘れたことはなかった。
桜の散る頃、1人の生徒が大きな正門を潜り抜けた。美しい栗色の長い髪を優しく囁く風に身を任せ、肩にはメタルグリーンの鳥型ロボットを乗せていた。その少女の身にはこの学園でエリートのみが纏うことを許された紅のブレザーを纏っていた・・・・・。
Everlastingly
名門校がずらりと並ぶこの校区で特別とされ、尚且つ編入試験の総合得点も高いとされている名門中の名門校・SEED学園。エリート揃いの生徒達の中で、それ以上の能力を持つとされているクラスがあった。このクラスは、ずば抜けた能力を持っているために少人数によるクラス構成とされていた。ZAFTと呼ばれたそのクラスには現在、7人のメンバーが在籍していた。ZAFT・・・生徒たちの間では通称・Zクラスと呼ばれた生徒達には他の生徒達と異なる制服を身に纏っていた。普通のクラスの制服は灰色を中心とした色彩を取り入れていたが、Zクラスの制服は紅を中心とした色彩を取り入れてある。ソレによって、Zクラスのメンバーを“紅”たちと呼んでいた。彼らはカリスマ性も持ち合わせており、生徒会は彼らを中心とした構成となっていた。
「・・・なぁ、聞いたか? このクラスに転入生が来るらしいぜ?」
「そのような情報、どこから仕入れたんですか? 僕のPCには入ってきませんでしたが・・・」
「職員室に用があっていっていたら担任がそう言っていたのを聞いただけだ」
「まぁ、このクラスに転入生が? ・・・・よほど、頭のよろしい方ですのね。 私、女性の方がよろしいですわ」
「・・・・確かに、女性は貴女だけですからね・・・・」
「女の子だったら、可愛い子が良いな」
「だな! ・・・編入の点数、いくつだったんだろうな。 この学園に受かるのも凄いが、このクラスだからな・・・。 お前は興味ないのか?」
「・・・別に。 ただ、優秀みたいだな」
「・・・・・。 もう少し、興味を持ってもらっても」
若草色の髪をした少年は藍色の髪をした少年に声をかけたがそっけない答えが返ってきたため、苦笑いをしながら肩を落とした。 この学園はとにかく広い。本校舎は中央館を中心に東西南北と構成されており、その本校舎から少し離れた場所に彼ら専用の校舎が建設されていた。その近くには教会も設置されており、毎週月曜にはその教会での集会〔祈りの時間〕が行われていた。
彼らのクラスは特殊なクラスなために他の生徒達の出入りはなく、学園からの干渉も少なかった。 このクラスの担任も数年前のZクラス出身である。学園側が元生徒たちを講師として迎えるのはあまり珍しくはない。それもそのはずでこのクラスは特別なため、普通クラスの講師の授業では彼らのほうが優秀すぎて、数年前の担任をしていたものが2ヶ月で辞表まで出したという過去があった。そのため、極力このクラスの担任には元Zクラスの出身か精神的に強い者が求められた。
「無理を言うな、ニコル。 アスランがそんなことするわけないだろう? あまり、物事に対してもそっけないしさ」
オレンジ色の髪をした少年は若草色の少年・・・ニコル=アマルフィに苦笑いをした。
「そうだぜ? ・・・また、ソレを見ているのか?」
黄色の髪をした少年がオレンジ色の髪の少年・・・ラスティ=マッケージに同意しながら話の中心となっている藍色の少年・・・アスラン=ザラのPCを見つめた。
「・・・勝手に見るな、ミゲル。 ・・・これは、俺の大切なものだ」
アスランは黄色の髪をした少年・・・ミゲル=アイマンを睨みながらPCを隠した。アスランは普段からあまり表情の変化がない。そんな彼がめったに変えない表情を変える時が何かをPC上で見ているときであった。
なにやら、アルバムのようなものらしいが・・・・・。
「・・・まだ、そんなことを言っているのか・・・。 見せてくれてもいいじゃん?」
「・・・嫌だ。 お前たちに見せたりでもしたら、減る。 気分的に」
金色の髪をした少年はため息をつきながらアスランにし視線を送った。そんな金色の髪をした少年・・ディアッカ=エルスマンに対して、アスランはただ視線を受け止めていただけだった。
そんな光景は日常茶飯事のようで、彼らは慣れており今回も苦笑いを浮かべるだけに終わった。
「お前たち、席に着け」
暫く転入生について話していた頃、このクラスの担任をしている講師が姿を現した。彼の後ろにはこの学園の制服・・それもZクラス専用の制服を身に纏っている少女が一緒に教室へ入ってきた。
「・・・先生、その方が新しくこのクラスに入ってこられる方ですか?」
ニコルは少女に視線を送りながら担任に尋ねた。彼の質問にみなが頷き、講師は苦笑いを浮かべた。
「・・・なんだ、もう知っていたのか。 あぁ、ディアッカが職員室に来ていたな。 その時に見かけたのか?」
「あぁ。 ・・・それでセンセ、その子が?」
ディアッカは講師の言葉に頷き、先ほどの質問の答えを聞くために再度尋ねた。
「あぁ。 彼女がそうだ。 成績は優秀だぞ? 何せ、関門とも言われているこの学園の編入試験の過去最高得点を超えたからな。 このクラスに入る実力はあるだろ? ・・・さ、自己紹介をして?」
講師に前に出るように呼ばれた少女は恥ずかしそうに前に出た。その様子を一つの視線が彼女を見つめていたが、そのことには誰も気付かなかった。
「・・・キ・・ラ?」
「!! ・・・その声、アスラン!?」
アスランの小さな呟きは彼女に届き、彼女の意識を彼に集中させた。驚いた少女はアスランを見つめると驚きから喜びへと表情を変え、アスランも普段から変わらない表情から嬉しそうな顔へ変化させた。そのことに驚いたのは周りにいた者たちで、アスランと少女が知りあいだったことにも驚いたがもっと驚いたことはアスランの表情を変えたことであった。
「なぜ、君がここにいるんだ? それよりも、3年間どこに!?」
「・・・ごめんなさい。 ここにいるのはね、小母様が入れてくださったの。 『アスランがここにいるから一緒に通ってみる?』ってお尋ねになったから・・・」
「母上が? ・・・そっか。 ・・・小母上たちは?」
「・・・3年間、本当にいろいろあったんだ。 ・・けど、ここでは話せないから・・・」
キラはそう呟くと少しだけ悲しそうな表情を見せた。その表情を見たアスランは何も言わず、ただキラを抱きしめた。
「・・無理に話さなくてもいい。 キラがつらいって思ったときでもいいから・・・。 これからは、俺がいるし。 ・・な?」
「うんっ」
アスランに抱きしめられたキラは、始めのうちは驚いていたが、3年ぶりに感じるアスランのぬくもりに安心感を抱き、アスランの言葉に頷いた。
「・・・お前たち、知り合いなのは分かった。 ・・だが、2人世界を繰り広げるな? 君は自己紹介を」
講師は苦笑いを浮かべながらも目の前で繰り広げられているピンクのオーラが出ていそうなキラとアスランに話しかけた。その瞬間、アスランの瞳が一瞬だが怒りの色を出したが、すぐさまキラに振り返り、ニッコリと微笑んだ。
「・・・・・そうだね。 キラ、みんなに挨拶しておいで? 大丈夫。 キラの席はおれの隣だから。 ・・・ですよね?」
アスランは自分の席を見つめ、講師に振り返った。確かに、奇数のクラスであるこのクラスでの空白の机はアスランの隣だけである。ラスティ、ミゲル。イザーク、ラクス。ディアッカ、ニコル。こういったメンバーが隣の席となっている。
「あぁ。 アスランの隣しか開いていないだろう?」
講師は又も苦笑いを浮かべた。
「ね? ・・・さ、ここで待つから自己紹介をしておいで?」
「うん。 ・・・初めまして、キラ=Y=ザラと申します。 3年前までヤマトと姓を名乗っていましたが、パトリック小父様・・・義父様たちに引き取っていただきましたので、今はザラと名乗っています」
不安そうにアスランを見つめていたキラは、アスランの微笑みに安心を抱き、いまだに呆然と自分達を見つめている6人に向かってペコリと頭を下げた。
2006/02/05
漸く、リクの内容が見えてきたので・・・;
|