【離れない・・・ずっと】







朝、目覚めてみると隣にいるはずのキラがいなくて。

トイレにでも行っているのだろうと思いまた寝る事にした。

それから数時間ぐらい経ったのだろうか?けれどまだキラはいなくて。



「キラ・・・?」



少し辺りを見回すとテーブルの上に1枚のメモが置いてあった。





"アスランへ
疲れてると思うから起こさないで行くけど心配しないでね。
ラクスとカガリとでお買い物に行ってきまぁす♪
ちゃんと夕方には帰るからね!
byキラ"





(なんだ。買い物か・・・。)





何年にも渡って戦い続けたけれど漸くそれも終わり今は平和な平凡な日々を送ってる。

俺とキラは戦争が終わってから一緒に住むようになった。

近くにはラクスやカガリも住んでいてちょくちょく遊びに来ている。

戦いによって引き離されたけど今はこうして幸せな日々を送れている。

アスランは着ていたパジャマを脱ぎ捨ててシャツにパンツというラフな恰好になり、
キッチンに行きブラックコーヒーを煎れる。

コーヒーにはちょっとこだわっていてちゃんと豆から引いている。

煎れたてのコーヒーを一口口に含むと濃厚な味と薫りが広がる。

・・・キラは苦いのは無理だからミルクと砂糖を大量に入れるが。

ちょっと一息つくとコーヒーを持って自分の部屋のパソコンに向かい仕事を始める。

アスランは戦争が終わり会社を起こし今ではやり手の実業家だ。

イザークやディアッカ、ニコル、ミゲル、ラスティなど昔からの仲間も一緒で働いている。

規則的に響いていたキーボードの叩く音が止んだ。

近くにある時計を見ると既に3時間も経っていた。



「もうこんな時間か…。そろそろ終わるか。」



パソコンの電源を切り、大きなソファに身体を沈めTVをつける。

するとニュースが流れていてその内容は今だに内戦が続いている国の事だった。

親が崩れた建物の下敷きになって血を流している。

その親の子供だろうか泣き崩れている。

こんなニュースを見ると胸が痛くなる。





"自分はこんな幸せでいいのだろうか?"




"俺は取り返しのつかないほど罪を重ねた。"





そのニュースをじっと見ていると玄関のドアが開く音がした。



「ただいまー!!ラクス、カガリ上がって。」


「お邪魔しますわ。」


「邪魔するぞ!」



元気な明るい声が聞こえアスランは玄関へ向かう。



「お帰り、キラ。ラクスもカガリもゆっくりしていけよ。」


「お邪魔しますわ。それよりもアスラン。少し元気が無いようですわね?外の空気でも吸ってきてはどうですか?」


「そうだぞアスラン!何なら私も一緒に行ってやろうか?」



カガリは面白そうにそう言うとアスランは苦笑するしかなかった。



「ははっ遠慮しておくよ。キラに怒られそうだしな。」



アスランは黒のジャケットを着て出掛ける準備をする。



「散歩でもしてくるよ。ラクスもカガリもゆっくりしていけよ。」


「いってらっしゃい、アスラン。6時頃には帰って来てね?」


「あぁ。行って来る。」



アスランはいつものようにキラの頬にちゅっとキスをして家を出た。

ちゃんと出て行った事を確認するとキラ、ラクス、カガリはそれぞれの行動に出た。

街をぶらぶらと散歩して辺りを見回すと恋人同士だらけで。





"土曜の休日だからそりゃ多いか・・・。"





季節が秋から冬になるこの時期。風が冷たくなり、身体の熱を奪うようだ。

ハロウィンが近付いてきているせいか街は何かとカボチャやオレンジの色が多いような気がする。





"あれ・・・?そういえば今日何かあったような・・・?"





少し頭を捻って考えてみてもわからない。

忘れているぐらいだからたいした事じゃないと思いそのままほっておくことにした。



「アスラン君。」


「え・・・?」



自分の事をこんな風に呼ぶのは1人しかいない。キラの母親のカリダ・ヤマトだ。



「小母さん?お久しぶりです!」


「久しぶりね〜。アスラン君はどうしてここに1人でいるの?」


「ちょっとした散歩です。小母さんはどうして?」


「私は買い物よ。でも今日はハルマが仕事で1人なのよ〜。だから重たくて重たくて・・・。」



ガリダの両手にはいっぱいに入った袋がいくつもぶら下がっていて確かに女性ではかなり重いだろう。



「俺が持ちますよ!家まででいいですか?」


「ありがとう、アスラン君!お願いするわ。」



アスランはカリダが持っていた荷物を受け取り歩き出す。



「アスラン君大きくなったわね〜。あんなに小さかったのに。」



ふふっと笑いながら昔の事を言うとアスランは少し照れたような顔になる。



「でもまだまだ子供ですよ。小母さんには敵わないですから。」


「アスラン君も言うようになったわね!でももう19歳ですものね。私も年をとるはずだわ。」


「えっ・・・?俺はまだ18歳ですよ?」



そんな事を言うとカリダは驚きの表情でアスランを見る。



「アスラン君・・・今日は何日・・・?」


「えっと10月29日で・・・・・・・あっ!!今日は俺の誕生日か・・・。」



すっかり忘れていたようでカリダは苦笑するしかなかった。



「アスラン君ったら〜。そういうところは昔と同じね。プレゼント渡すからうちに寄ってね?」


「えっ!?そんな悪いですよ!」


「いいの!いいの!気にしないで。」



そんな会話をしているとカリダの家が近付いて来た。

リビングまで案内されてそこで待っててと言われ椅子に座って待つ事にした。

ある程度時間が経ってキッチンから出てきたカリダはある物を持ってそれをアスランに渡す。



「これは・・・?」


「誕生日プレゼントになるかどうかはわからないけどアスラン君の好きな物ばかり作ったのよ。
いっぱい食べてね。」



カリダから手渡せられた物は自分が好きな料理ばかりで。

もちろんロールキャベツも入っていて。



「ありがとう・・・小母さん。小母さんの料理久しぶりだから凄く嬉しいです。」



アスランはほんとに嬉しそうでまるで子供のように微笑んだ。



「喜んでくれて私も嬉しいわ。キラ達と一緒に食べてね。というかキラに作ってって頼まれたんだけどね。」


「えっ・・・?キラがですか?」


「ええ。もうすぐアスラン君の誕生日だからアスラン君の好きな物を作って欲しいって。」


「キラがそんな事を・・・?」



アスランは驚きと嬉しさという感情が胸の中で連鎖をする。



「これをキラに渡しておいてくれる?」


「あっはい!小母さん、本当にありがとうございます!!」


「いいのよ。じゃあアスラン君、キラにもよろしく言っておいてね。レノアとパトリックさんもきっと喜んでるわ。」


「そうだと嬉しいです。じゃあそろそろ失礼します。」


「ええ。気をつけてね。」



そう言ってアスランは家を出て愛しい人が待つ場所へと向かった。