『…ラン…アスラン!』



「っキラ!!」



 ジジッ、とノイズ交じりに返ってきた通信にアスランは思わず叫んだ。

 声音は明らかに歓喜のそれで、キラも彼と話せることに安堵を覚える。







Great haste 2







「キラ、大丈夫?怪我してない?今どこか分かる?」



『……』



「キラぁ!?」



 矢継ぎ早な質問に何の反応も返ってこないのを聞いて、アスランは(気を失ったのか?まさか……っ)と最悪の事態まで想定して悲痛な声を上げた。




『ごめん…一気に聞くから頭整理すんのに時間かかった』



「…良かった……」



 あっけらかんとしたキラの声にアスランはほっと息をつく。




『怪我は…かすり傷と打ち身程度かな?あんまりひどくない。場所は計器が壊れてて分かんないや。とりあえず海岸。…あ、エンジンは完全に停止させたから核爆発の心配はないよ』



「海の中じゃないんだな?探すから待ってろ」




『はーい』




 いつも通り過ぎるキラに、力の抜けたアスランはこれ以上の問答は体力の無駄と判断したのか通信を打ち切る。

 エンジンを切った状態で通信機が作動しているということは、予備バッテリーを使用しているということ。

 何があるか分からないので、エネルギーを温存するにこしたことはないと思ったのだ。



「…大丈夫。僕は生きてるよ、アスラン……」



 途切れた通信機に、聞こえないと分かっていてキラはそっと呟いた。

 あれから数分で難なくキラを発見したアスランは、キラをコックピットに入れて、一応フリーダムを抱えて飛び立った。



「死ねっ、アスラ――ン!!」



 横からキラがキーボードを引き出し、アークエンジェルへと通信を繋ぎ、自らの無事を伝えた。

 そして合流して、着艦するなり聞こえてきたのはカガリの怒声で、それと同時に鋭い蹴りが繰り出されたのだ。



「…っ……」


「あ、アスラン!大丈夫!?」



 避けられるはずのそれを彼はあえて食らった。

 おそらく今までの行動に対する罪悪感がそうさせたのだろう。



「キラ、そんな奴ほっとけ。自業自得だ。お前の方が重症だ」



 カガリもそれを察して面白くなさそうに鼻を鳴らし、キラの腕を引っ張って医務室へ向かおうとする。



「え、あ…ごめん、カガリ。…僕、アスランと一緒にいたいな?」


「は?」


「…キラ……っ!!」



  立ち止まったキラに振り返れば、ほんのり頬を染めてそう告げられる。

 その言葉を反射的に脳が拒絶したようだが、嬉しそうにキラに飛びつくアスランを見れば空耳ではなかったらしい。

 キラの帰艦を聞いて集まっていたマリューやミリアリア、マードックらも何だか遠くを見ている。





(そうだ…そうだった!)





 久しぶりに会えて箍が外れたのか、格納庫でラブシーンを始めた二人にカガリは頭を抱えた。



「このバカップルめ!勝手にしろっ!!」



 彼女が思い出したのは二年前のこと。

 死んだと思っていたキラが生きていて、地球で再会した二人は機体から降りるなり人前で抱きしめあった。

 しかもその後しばらく部屋に二人きりでこもっていたらしい。

 その間何をしていたかは推して知るべし。

 今回は殺しあったわけでもないのでわだかまりも少なく、既にもとの二人に戻っている。

 それなのにあれやこれやと言ったところで暖簾に腕押し、ぬかに釘である。

 バカップルの熱気に当てられて鬱になりたくなければ、何も言ってはいけない。

 そして人々は何ごともなかったかのように自分の持ち場に戻っていった。






2005/08/25










遠野真澄様のみお持ち帰り可。








バカカップルなアスキラが大好きですvv

20万hit記念企画が開催されておりましたので、応募してみましたvv
そうしたら見事に抽選に当たり、このような素敵な小説を頂いてしまいましたvv如月様、本当にありがとうございます!!

3は“裏”となっております。よって、【秘密の展示室】に保管されております。
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