「再び、この地に還ってきた・・・・・・。 嘗て、この地を守るために集った《力》を持つ者たちの器のあった地。
姿かたちは変わったけれど・・・この地を纏う《氣》。 この《氣》は、あの頃と変わらない。
小父様の言われていた通り、また・・・・戦いが始まるのかしら・・・・・・」
愛おしい彼と離れ、小父様の予言したこの地を踏む。
ここは、嘗て私たちが暮らしていた場所。
あの頃の面影は、既に無いけれど・・・・この地の《氣》は相変わらず。
彼と離れるのは、私にとって辛い・・・・。
けれど、私はこの地を・・・彼のいるこの世界を守りたい・・・・・・。
桜の大木をバックに、校舎を見つめる少女。
少女の見つめる先には校舎は映っていない。
彼女が見つめる先・・・・それは、嘗て目の前に広がっていた光景。
彼女の記憶に強く焼きつく、《前世》の光景であった・・・・・・。
――――― 《前世》の記憶を保持する少女。
彼女の瞳に映るもの。
それは、一体何を意味するのだろうか・・・・・・。
第一章・転校生
― 時期外れの転校生 ―
4月・・・・それは、桜が満開に咲き乱れる季節。
そして、新たな出会いの季節でもある。
そのことは、東京・新宿区にある真神学園も例外ではなかった・・・・。
入学式・始業式が無事に終わり、残すは各クラスのHRだけとなった。そんな中、3年C組では春休み辺りからの噂で持ちきりとなっていた。
「ねぇねぇ、知ってる? 今日、うちのクラスに転校生が来るッてハナシ」
「聞いた聞いたッ。 職員室で、教頭がマリア先生と話してたんでしょ!? 女の子だってハナシじゃない」
クラスの視線の先には、空席となっている後ろの席である。
その席は、今クラスにいる全員が座っても一つ余る。この学園には、独自の情報網によって様々な情報を握っている1人の女子生徒がいる。
その生徒からの情報のため、クラスの者たちはその空席が転入生だと言うことを知っているのだ。
クラスの話題は必然的にその噂の人物となり、始業式が始まる前もこうして終わった後も騒がしかった。
そんな騒がしい声を止めたのは、担任の入ってきた音だった。
「Goodmooning Everyone.」
「Goodmooning Miss.Maria.」
クラス担任は英語の先生である。
日本人のように少々日本語のような訛りのあるものではなく、生粋の英語を話す。
彼女の出身地はイギリスなのは、全校生徒が知っていた。
「おはよう。 みんな、揃っているかしら。
もう知っているヒトもいるとおもうけど・・・・・・、HRに入る前に、今日からこの真神学園で、
一緒に勉強することになった転校生のコを紹介します。 入ってきて?」
「緋勇 龍姫です。 1年間という短い間ですが・・・よろしくお願いいたします」
担任であるマリア=アルカードが促した1人の生徒・・・噂の転入生を教室内に招き入れると
転入生は綺麗な文字を黒板に書くと一度だけクラスを見渡し、ニッコリと微笑んだ。
その微笑にクラスが静まり返ったが、いち早く我に返ったのは女子生徒である。
「前の学校では何て呼ばれていたの?」
「出身地は?」
「血液型と誕生日は?」
次々と質問される転入生に少々哀れみと同情を見せる男子生徒だが、自分たちも気になっているのか助けようとはしない。
それほどまでに、噂の転入生の微笑みにダメージを食らったのだ。
・・・実際、転入生が来ることは知っていてもその性別までは情報として流されてはおらず、
新しいクラスメートが女子生徒だったことに一部の男子は喜びをかみ締めていた。
「チョ・・チョット待って? いろいろと質問したいのは分かるけど・・・彼女のことも考えてあげて? 他の質問は、後からなさい。
緋勇サンは1ヶ月前にご家庭の事情でこちらに引っ越してきたばかりなの。
まだ、いろいろと分からない部分もあるようだから、彼女に教えてあげてね?」
いつまでも質問がやまないことに内心ため息をついていたマリアは、見るからに困惑している龍姫に助け舟を渡した。
『は〜い』
マリアの言葉に了承を込めて返事をした生徒に満足したのか、唯一空いている席に視線を走らせると隣にいる龍姫に微笑を見せた。
「アナタの席は・・・・あの席ね。 お隣は美里サンよ。 彼女は学級委員でもあるから・・・いろいろと教えてもらうといいわ。
美里サン、よろしくネ?」
「はい」
美里と呼ばれた長い黒髪の女子生徒は、龍姫と視線を合わせるとニッコリと微笑を見せた。
(・・・・藍ちゃん・・・・? ・・・彼女もまた・・・・巻き込んでしまうの?)
龍姫はジッと彼女を見つめると何かに耐えるような辛そうな表情を見せたが、一瞬にして元の表情に戻した。
「それじゃ、HRを始めましょう。 今日の議題は、旧校舎の改築に関して――――」
席に着くのを見届けたマリアは、そのままHRを始めた・・・・・。
一時限目終了後、隣の席に座る女子生徒から声をかけてきた。
「緋勇さん。 さっきは・・すぐにHRが始まったから挨拶もできなくて・・ごめんなさい。
私は、美里 葵。 美里は美しいにふるさとの里、葵草の葵。 これから、よろしくね」
「・・・うん。 こちらこそ、よろしくね?」
(・・・やっぱり、藍ちゃん・・・だね)
美里を見る龍姫の瞳の色は初対面に向けるものではなかったが、そのことに彼女は気付かないまま微笑んでいた。
「あ〜お〜いっ!!」
ほのぼのとした空気が流れていたが、それを見事に破った声が響いた。
「小蒔」
女子生徒・・・葵に小蒔と呼ばれた女子生徒が、二人の席に寄ってきた。
葵とは対照的に、茶色がかったショートカットの活発そうな女子生徒だ。
「葵もやるねっ! 早速、転校生をナンパするなんて!」
「小蒔? 彼女は私たちと同じよ? その言い方はないと思うわ」
「言葉のアヤじゃん! でも、私としては本当に心配しているんだよ?
そりゃ、クラス委員長の上に生徒会長もやっていれば男は無縁になるけどさ・・・・・。
初めまして。 ボク、桜井 小蒔。 花の桜に、井戸の井。 小さいに、種蒔きの蒔。 弓道部の主将をやっているんだ。
これから1年、よろしくネ!」
人懐っこい笑みを浮かべながらの自己紹介に龍姫は好感を覚えつつ、
先ほど葵に感じたものと同じ懐かしさを女子生徒・・・小蒔にも感じていた。
「こちらこそ。 よろしくね?」
(・・・・小鈴ちゃんも一緒。 藍ちゃんと一緒にいた、弓道の少女。 ・・・また、巻き込んじゃうのかな・・・)
「どうかしたの?」
「えっ? な、なんでもないよ?」
凝視していたのか、心配そうな顔をした小蒔は龍姫の表情を見たが、どこも変わりがなく見えた。
そのことに気付いた龍姫は、慌てていつもの表情に戻した。
「何話してんだ? 俺も混ぜろよ?」
長い棒を持った男子生徒が、小蒔の後ろから声を掛けてきた。
小蒔よりも多少赤毛の目立つ髪質を持つ男子生徒に対しても、龍姫はどこか懐かしさを見出していた。
「京一」
「よォ、転校生。 俺は蓬莱寺 京一。 コレでも一応剣道部の主将をやっているんだ。
まぁ、何かの縁で同じクラスになったんだ。 よろしくな!」
「うん。 よろしくね」
(・・・・・京悟くん?
・・・知っている“氣”がたくさんあるって思ったけど、・・・まさか同じクラスに宿星がこんなに揃っているなんて・・・・)
「緋勇? ・・・まぁ、俺から一つ忠告しておいてやるぜ。 あまり、目立ったマネをしないほうが身のためだぞ。
なにせ、このクラスには頭に血が上りやすい奴が結構いるからな」
京一は後ろに視線を向けながら、分からない程度に肩をすくめた。
京一の視線の先にはいかにも不良ですというような4人の男子生徒がおり、
龍姫に対して敵対心を露にしていたが本人はいたって気にした様子を見せなかった。
「・・・忠告、ありがとう。 気をつけるね」
龍姫は不良たちに対して不快感を露にしつつ、忠告をしてきた京一に好意的な笑みを見せた。
龍姫が礼をいうと同時に次の授業の開始の合図が鳴り、京一や小蒔たちは自分たちの席に戻った・・・・。
午前中の授業が全て終了し、昼食時間の昼休みとなった。
始業式の当日にも拘らず授業はしっかり5限まであるのだ。
そのため、龍姫は昼食を取るために持参したお弁当を開こうとした。
「緋勇さん、今日は・・・生徒会があるから無理だけど、明日は学校のこといろいろ教えるわ」
「ありがとう、美里さん。 実は、誰かに頼もうかと思ったんだけど・・・嬉しいな」
葵の言葉に、嬉しそうに微笑みながら答えた。
その答えに対して、葵は嬉しそうに微笑むと、昼休みも生徒会なのか、お弁当箱を片手に持つとそのまま教室を出て行った。
「緋勇、昼食べ終わったら俺が簡単に案内してやるよ。 まぁ、次も授業があるから多くは教えられないがな」
「ありがとう、蓬莱寺くん」
2人の会話を聞いていたらしい京一の言葉に、ニッコリと微笑むと、目の前にあるお弁当を食べ始めた。
彼女の持ってきたお弁当は、彼女と同居している人物が彼女の好みに合わせて作ったものであり、
彼女にとっては何よりのご馳走であった。
昼食を食べ終えた龍姫は、京一に連れられるまま1階から順に回ることとなった。
「知ってのとおり、1階は1年の教室、保健室と職員室がある。 俺たちの担任であるマリアセンセは、大抵職員室にいる。
マリアセンセは、前の英語の担任に変わって、3ヶ月前に、この学園に着たばっかりなんだけどな・・・。
ヨーロッパのナントカってトコから来たってハナシだぜ。 マリアセンセは男共に絶大な人気があるんだ。
そんなマリアセンセが担任になっただなんて・・・俺たちのクラスは幸せだな! そうだな・・・ちょっと、センセの顔を見てくるかっ!」
(・・・でも、あの人から普通とは違う“氣”感じた・・・)
「ほぅ・・・お前がここに来るとは、めずらしい」
「!! い、犬神センセ・・・・。 お、俺はただ転校生を案内しているだけで・・・・・」
「本当ですよ。 彼は私を案内してくれているだけです」
(犬神さん!? ・・・・彼が姿変わらず、ここにいるだなんて・・・・)
龍姫は内心驚きを見せながらも、表面では何とか普通どおりの表情を出していた。
「・・・・俺がどうかしたか?」
「・・・いえ、何でもありません (お久しぶりです、犬神さん)」
「(!! ・・・緋勇 龍希・・・・だな) そうか。 緋勇だったな。
あまり、蓬莱寺の影響を受けるんじゃないぞ。 こいつは先月の卒業式でも・・・・・」
「そ、それじゃ! 俺たちは急ぎますんでっ!!」
京一はそれだけ目の前にいる教師に伝えると、龍姫を引っ張るかのように急いでその場を後にした。
―――― よほど、彼はあの教師が苦手のようだ・・・・・。
2009/07/07

放置し続けて、気付けば3年・・・。
ゲームをプレイしながら書いておりますので、大体のセリフはゲーム通りかと;
しょっぱなから捏造満載ですが(ぇ)
できるだけ定期的に更新していきたいと思いますので・・・
プレイ経験者の方、ご感想お待ちしておりますv

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