「僕の願いは・・・君と一緒に過ごすこと。 ただ、それだけ。
2年前のあの時、それが永遠に続くと思っていた。 けれど・・・運命は残酷だね。
また・・戦いが始まった・・・・。 けどね、僕はそれでも君と一緒にいたかったんだ。
君と・・・アスランと一緒に。 だから、許してね?
アスランの傍にいたい。 それが、戦場だとしてもただ守られる存在だけにはなりたくない。
すぐ傍で僕も君を守りたい。 ・・・・これはあの戦いで、僕が唯一願ったことだから・・・」



俺の大切な・・たった一人愛した人は少し前にそんなことを言っていた。
だが、俺も同じ気持ちだ。だってそれが、俺の欲した願いだから。

・・・・お前を、キラを守ることが俺の存在意義。

キラは俺にとって唯一守りたい存在。キラがいるから俺は生きられた。

・・・あの時、キラをあのまま失っていたら、俺は戦いを終わらせて自ら死を選んでいた。
そうならなかったのは・・・キラがいたから。

キラが戦場に出るというのなら、俺もともに出よう。
一度、戦士であることを否定したが、それでもお前を守る力があるというのなら。


・・・だからキラ、お前の隣にいるのも隣を守るのも俺でありたいんだ
・・・・・・・・・・・。








おねがい








ラクスから託された『ZGNF-X19A  INFINITE  JUSTICE』に搭乗し再び戦場へと舞い戻った・・・。


俺は、俺の最愛な者である彼女を守りたかった。
そのために、ザフトへ複隊したはずだった。
だが、現実にはザフトの特殊部隊が彼女たちのいる家を襲撃し、
もう剣を取らなくてもいい彼女に残酷にも剣をとらせてしまったのはほかでもない俺自身だ・・・。

そのことを後から聞いた俺は、ひどく後悔をした。
あの時、あのままあの地に残っていれば彼女に再び戦場へは
戻させることがなかったはずなのに・・・。



それからと言うものの、彼女たちを乗せた“アークエンジェル”・・・
AAはザフトに狙われる立場となった。


・・・必然的に、ザフトの軍人である俺も・・・
2年前のように最愛の者にその守るはずだった刃を向けることとなった・・・・・。




そのころ俺は、自分が何を望んだのかを見失っていた時期だった。
それ故に、傲慢な気持ちで彼女の言葉を聞かず、
自分の言うことを聞かない彼女を責めてしまった。


・・・あの時、いくら頭に血が上っていたとしても彼女の言葉を否定せずに
聞いていればあのような悪夢は回避できたのかもしれない。




俺は、何度同じ過ちを犯せばいいのだろう。
2年前のあの時、彼女のいない世界がどんなものかを思い知ったはずだったのに。
5年前、月で別れてしまって1人【プラント】へ引っ越してしまった時、世界は色をなくした。


・・・・2年前、自らの手で殺してしまったと思った時、
世界を崩壊させてしまうような虚無を感じた。


その時・・・俺は自覚したはずだった。
彼女がいないと、世界に色がない。
彼女という存在が消えてしまうと・・・俺の中にある世界は崩壊してしまうということを。


・・・今回、それを大いに自覚した。今度こそ、本当に彼女を永遠に失ったと思った。

・・・そう想ってようやく、俺が何を願って軍に戻ったかを思い知った。

・・・俺はただ、彼女を守りたい力が欲しかっただけだったということを。


・・・なぜ、あの時気づかなかったのだろう。


・・・彼女を守るということは、決して傍を離れないということを。



・・・あの時気づかなかったことを今頃気づくなんて。



「アスラン? どうしたの? ・・・・まだ、傷が痛む?」



自分の考えに没頭していたらしく、
一瞬だがここがどこだかを忘れてしまっていた俺を心配そうに見つめていた。



「・・キラ? ずっと一緒にいてくれたのか?」

「? うん。 ・・・マリューさんが休んでもいいからって言っていたから・・・。
迷惑だった?」



俺はびっくりして最愛の彼女・・・キラを見つめて問いかけたが、
俺の問い方が悪かったらしく、キラは不安そうな表情を見せた。



「いや? ・・・ただ、思考にはまっていたみたいだからな。
・・・退屈じゃなかったのか?」


「・・・でも、ここにいると安心するから。
・・・・アスランが目覚めるまでの間、本当に心配していたんだ。
あのまま、目が覚めないんじゃないのかって。
・・・たくさん、血を流していて・・本当に心配したんだから」



キラは俺に涙を見せないように下を向きながらそれでも、
震えを止められないのかシーツを掴む手に力を入れていた。



「・・・心配、かけたみたいだね。 ・・・でも、あの時はアレでいいと思った。
お前を・・守りたかったから」



俺は、キラの頬に優しく指を触れさせた。
それが切欠だったらしく、我慢の限界かキラの瞳からはポロポロと涙が溢れ出してきた。



「僕だって! ・・・僕だって、アスランを守りたい。
・・・守られるだけなんて嫌だ。 守られて君を失うくらいなら、一緒にいたい。
・・・傍に・・・いてもいい? ううん。 傍に、いさせて」



キラはそれでも涙を止めようと頑張っていたけど、俺がそれを止めた。
彼女の綺麗なアメジストの瞳に指を触れさせ、
涙を丁寧にふき取りながらもう片方の手で彼女がシーツを掴んでいる白い手に触れた。



「・・・俺のほうこそ、傍にいてもいいのか?
あの時、お前の言葉も聞かずにただ、傷つけることしかしなかった俺を、お前は許すのか?」


「・・・・あの時は、正しいって思った道を僕たちは進んでいたんだ。
・・・それに、アスランの言っていたことは本当のことだから・・・・」



俺はあの時、ザフトに複隊してキラと生身で再会した時のことを思い出した。
・・・自分から会いたいと思っていながら、キラを傷つけることしか言わなかった俺・・・。


そんな俺に、優しく微笑んでくれるキラ。
・・・俺は、自分のエゴで再びこの世で最も大切な人を失うところだった。


俺の世界ともいえるキラを。



「・・・でも、俺はまた同じ過ちを犯した。
俺が守りたかったのは【プラント】の同胞たちや【オーブ】の国民じゃない。
・・キラを守りたかった。 キラが戦わずにすむ世界を守りたかったんだ。
・・・・だけど、現実にはまた俺がお前を殺すかもしれないって不安に思った。
・・・『FREEDOM』が撃破されたあの時、俺は心底後悔した。
・・・あの時、あのままキラの傍にいれば、守れたのかもしれないって。
・・・でも、それは仮説にしか過ぎない。 ・・だが、あんな思いはもう嫌だ。
・・俺はもう、キラの傍を離れない」


「・・・・少しは、心配してくれたの?
・・・だったら、僕が感じた気持ちは分かるよね?
・・・自分の身体も大切にして? ・・・僕ももう、あの姿を見るのは・・・嫌だから」



キラは泣きながら俺に訴えかけてきた。
泣きながら微笑むキラの姿はどんな絵よりも綺麗に見えた。



・・・俺が危険なことをするからキラは心を痛める。

・・・キラを守るために、自分の身も守らなきゃな。



「今度こそ、約束するよ。 俺はもう、キラの傍を離れたりはしない。
あんな思いをするくらいなら、一緒にいるさ。 ・・・・キラを失う恐怖はあの時だけで十分だ」

「うん。 ・・・ずっと一緒にいようね? 約束・・だよ?」



この約束は、消して破らない。

・・俺が望むことだから。
・・・あの時から・・・・キラと初めてあの桜での出会いの時から、
それまで何も自分の望みが無かった俺の唯一、願ったこと。

・・あの時から愛おしいと思ったキラの傍にいること。
そして、俺の手で守ること。


・・・この先もずっと・・・。



「キラ? 俺の前では涙を我慢しなくてもいい。 俺には、弱みを見せていいんだ。
いや、見せてほしい。 ・・・キラの弱いところも俺は守りたいと思うから。
・・・それに、泣きたい時に泣いておかないといけないんだろう?
・・・昔、キラが教えてくれたことだからな」


「・・・泣きたくても泣けなかった。 ・・・AAを守らなきゃいけないから。
この戦火を・・・止めなきゃいけないから。
あの時の思いを、繰り返してはいけないかから・・・」



キラは必死にシーツを掴みながら涙をこらえようとした。
だけど、その姿がより一層俺には痛々しいとしか思えなかった。



・・・傷口が開いて痛みが未だにある腕を無理やり上げてキラを引き寄せた。
突然のことに驚いていたキラだけど・・頭を優しく寄せると俺の胸に顔を押し付けてきた。



「・・・俺の前では、その姿をするな。 ・・ずっと傍にいるから。
絶対にキラを守るから。 ・・だから、涙を我慢しなくてもいいんだ。
泣きたい時は俺がこうして胸を貸すから。
・・だから、我慢なんかしないで昔みたいに泣いて?
・・・そして、幸せそうな笑顔を俺に見せて? ・・俺はそれだけで幸せになれるから」


「・・・うん。 僕ね、アスランの傍じゃないともう、泣けないみたい。
・・・これからもずっと・・・」



顔を俺の胸に預けて・・・肩を僅かに震わせながら縋りついてきたキラを
優しく抱きしめながら俺は決意を新たにした。
何が何でも、キラを絶対に守ると。


この愛おしい存在を必ず、守り抜くと・・・・。




俺は、キラを失ったら呼吸をすることもできない。

・・・だから、キラが死ぬ時は共にいよう。

キラが生きるというのなら、俺も一緒に生きる。
二度と、側を離れない。
・・・先にも死なない。
・・キラが悲しむから、死ねないさ。
・・俺が死ぬのは・・・お前を見届けてからだ。
・・・すぐ、同じ場所に行くから。

キラが死んでしまったら、俺は生きている意味が無くなる。





・・・1人で生きるよりも、キラの傍がいいから・・・。











DESTINY本編【反撃の声】付近のアスキラin医務室です。
ラクスに“インフィニットジャスティス”を渡された時、一度は拒んだアスランでしたが・・・
キラの言葉を伝えると乗ることを決意して、一目散にキラのいる戦場へと向かったアスランに妄想が・・・^^
帰還後、あの大怪我状態のアスランにキラがずっと傍にいたという設定です。
素敵な企画、参加させていただきありがとうございました!!
・・・・さり気にキラは女性化していますね・・・^^;

2005/11/05
〔水晶〕 遠野 真澄