夢見た星空はこんなにも汚いものではなくて。

もっと綺麗で、清らかなものであったのに。

何故だろう、君を見ていると、

この汚い星空まで綺麗に見えてしまうんだ。








star dream








「ねーえ??ホントだよ??綺麗なんだよ??」


「うん・・・」



不思議そうにこちらを覗きこんでくるアメジストには少し苛立ちの様子が含まれていた。

というのもこうしてキラが俺にこう問いかけてくるのはもう・・・・・数えるのも嫌になるくらいの回数で。

さっきからキラはこう言っているばかりで一向に話を進めようとしてこない。

こういうときには何かある、ということは長年のコイツとの付き合いから察することくらいは出来るのだが、何せ謎の多いキラのことだ、その理由がどこにあるのかまでは長い付き合いの俺にしてみてもわからない。

だからといって、正直にキラに聞いてみるのも、返って機嫌を損ねてしまうばかりだというのは俺もよく承知している。しかもそれでは・・・俺のプライドとかそんなものが丸つぶれだ。

そういうわけで今こうして生返事を続けているのだが、そろそろキラも飽きてきたようだ。



「って聞いてない!!僕、綺麗しか言ってないのに一体今の話で何がわかるって言うのさ!!」


「うっ・・・!」



自分の墓穴を掘る、というか、盲点を突く、というか、そんな不思議な行動に出てきた。



「ねぇ・・・聞いてよ?」



そのまま懇願の姿勢をとられてしまっては完全に俺の負けだ。なぁに?という視線を向けてあげれば、沈みそうなくらいに鬱だった表情が自然にふっと刹那笑みを覗かせた。



「何が綺麗なの?」



そこに望んだ言葉を与えてやれば、愛しいようにして、回される、キラの腕。そのままされるようにして抱きしめられていたら、元気よくキラが言った。



「ゆーき!!」



意外な回答に唖然とする。ここはプラント。気候はいつも調節だってされていて、雪なんてそんなものは簡単に見れるはずなのに・・・・。



「はぁ??毎日見てるだろ?今日だってもうすぐ雪の時間に・・・」



驚きのあまりキラを自分から離して言葉を投げつけてしまう。いつもだとここでぐすんと泣きそうな顔を見せて俺を困らせてしまうキラだったのだが、今日は珍しくしっかりした様子で、俺に上目遣いで言ってきた。



「そんな雪じゃなくて!」


「じゃあどんな?」


「もっとね!すごいの!!」


「わ・・・・わからない・・・」



いつもに増してわからないキラの行動にまた遭遇してしまった。

どうやって聞いてみても、何年この性格と付き合ってみても、これだけは克服できない謎。

一体お前は何を考えているのか。

摩訶不思議な言葉の数々に口をパクパクさせていると、助け舟なのか、それとも気分なのか、おそらく後者であろう、キラから会話を持ちかけてきた。



「しょうがないなぁ、じゃあこのキラ博士がアスラン君に綺麗な雪を見せてあげよーう!」



えへん、と髭を梳く真似をして、偉そうにキラは言う。

ぽかんとしながらも、俺はただそれに頷くしかなかった。







×××







呼ばれて待っているバス停前。そしてそこには・・・・やはり人影はない。

キラの遅刻なんてアイツが時間通りにくるよりもずっと回数が多い話だから別に気にはしないけど、どうしても気になるのは、先日アイツが偉そうに放った一言だった。





『じゃあこのキラ博士がアスラン君に綺麗な雪を見せてあげよーう!』





綺麗な雪って何だ?あれから自分も少しは考えてみた。

いつだって俺は何かするたびにキラより上で、キラよりも物知りで、いつも教えるのは自分なはずであるのに。

そのことにプライドを感じているわけではないが、どうしてもキラが知っていて、自分が知らないこと、というのが気になって仕方がなかった。

実はこっそり図書館の書物まで漁ってみたりもしたが、『雪』という単語にはただ、白く丸い氷の結晶が空から落ちてくる現象、とだけしか載っていなかった。

そうこうしているうちに約束の日はやってきてしまって。

いつも俺が見ている『雪』の降るバス停前で、待っているのではあるが・・・・。



「ごめんねー!!待った??」



まだかな、と思い始める頃になってキラはいつも現れる。まるでそのタイミングを逃さないようにしているかのように。

今回とて例外ではなかった。はあはあ息を切らしながらこちらに向かってくる。

俺はいつものように笑顔を浮かべて手を振った。

実はキラはまだかな、と待っているこの時間が嬉しかったりする。

寒い中でも、あの暖かい笑顔がそこにあるだけでぱっと明るくなることができる。

にっこりと手を振って、今回はどんなキラを見せてくれるのかな、と思える瞬間。それが待ち遠しくて堪らない。らしくもなく心躍ってしまう。



「大丈夫。」



俺がそう言ったのを合図にするかのようにバスがエンジン音を鳴らしてそこに停車した。



「さ、これに乗って見に行くんだよ。」


「これに?」


「そう!わくわくするよね!!」



少し赤くなってしまった手をぎゅっと握って、キラがバスに乗り込む。

何が始まるんだ?という気持ちを抑えきれず、俺も内心わくわくしながらバスに乗り込んだ。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「着いたよ・・・?起きてあすらーん・・・」



すっと吸い込まれるようにして遠のいていく意識に逆らうこともなくバスの中で眠りについていたら、遠くからキラのそんな声がして、意識が再びこちらに戻された。

目を覚ますと最初に映ったのは、心配そうにこちらを覗きこむ、キラの顔。



「ずっと寝てたよ?大丈夫??」



疲れてるのかな、とかそんなことを言いながらキラは降りる支度を始めてしまう。

一瞬見えたキラの顔にドキっとしてしまって、惚けてしまっていた俺だが、慌てて支度を始めた。

降り立って最初の印象は・・・・、ただ幻想的としか言い様がなかった。

一面に広がる白、どこまでも純粋で清らかな場所。

そこに広がっていたのは、ただ純粋な広い場所だけだった。



「ね!綺麗でしょ!!滅多にないんだよー、こんな場所!!」



後ろから抱きつきながらキラが嬉しそうに言う。



「ここね、僕の秘密の場所なんだ!」



寒さに息を白くしながらキラは続けた。



「何年経ってもね、一緒だよ?」



まるで神聖な言葉のように悲しそうに告げられた、言葉。

キラから回された腕がぎゅっと悲しそうに強められる。



「大丈夫だよ、ずっと一緒だよ」



誓いをたてるようにして、そっとキラに囁いてあげる。

そう、この先も、ずっとずっと先も、一緒。

変わらない誓いを、今君に・・・・・。








END







明けましておめでとうございます!
新年明けまして、あけおめとは関係なくなってしまいましたが小説を・・・(汗)
一応幼年で、冬らしい話、ということで・・・。
こんな私ですが、今年もよろしくお願いいたします。



2006.01.04 桜輝水







桜輝水様、−朱鷺色の夢路−





新年、明けましておめでとうございますv
ありがとうございます!
こんな素敵な小説まで頂いてしまって///
こちらこそ、今年もよろしくお願いいたしますv