大切なものが指をすり抜けていく。 本当にあなたはそれで幸せ?
------------------------------------------------------------ あなたが信じるものは何ですか ------------------------------------------------------------
「アス…ラ……」
クレタ島付近での戦闘のあと、再び海に潜ったアークエンジェル。 モビルスーツのパイロットであるキラは特にすることもなく、展望室で海を眺めていた。 そして道を違えた彼のことを想い小さく名を呼ぶ。 討つ、と言った。 彼に…… 彼の言うことをそのまま信じることはできないから、そしてオーブに戻ったところで何もできずに泣くことになるだろうから、戦場を駆けることを決めた。 そのために彼と戦うことになっても仕方がないと、覚悟はしていたけれどそれでもやはり、つらい。 仕方がないという言葉の裏に隠されているキラの悲しみに、アスランは気づかない。 守りたいものが違う。 それだけで相反する道を歩むことになり、アスランが切り捨てるのは親しい人。 そしてキラが切り捨てるのは自分の心。 彼はいつ気づくのだろうか。 いつもキラが心を犠牲にしていることに。 それでも戦っていることに。 彼の一言がさらにキラを追い詰めていることに――… 彼はまだ気づいていない。 しかし無意識に、少しだけキラの心を軽くしてくれる。 彼の言葉はキラを追い詰めることもあるけれど、彼を癒すのもまた、アスランだから。 だからキラも期待するのだ。 全てが終わったら、また笑い合える日が来るのではないかと。 その日キラの持ち込んだパソコンにメールが届いた。 “誕生日おめでとう、キラ” たったそれだけ。 送信者を見たときは戦闘中にコックピット以外をほとんど切り落としたことを責められるのかと思ったが、その一言に癒される。 きっと本当は他にも色々言いたいことがあるはずなのに、今日という日にそれを持ち込むのは真面目な彼にははばかられたのだろう。 それだけのことなのに彼の優しさが感じられて、キラは自然と微笑んだ。
「誕生日なんて…忘れてたな……」
その一言が何よりも痛かった。
2005/05/10
あと一週間ほどでキラ様の誕生日ですね。
如月様、−Mondenshein−
あとがき返し
この小説は、『Mondenshein』、如月様のサイト内にあるフリー小説(キラ誕生日バージョン)ですvvこのほかにも某姫があるのですが、私はこちらを頂いて参りましたvv
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