ジャマったれ
※ キラとアスランは幼年学校の5年生9歳です。 ※ 二人とも親元を離れて、寄宿舎生活です。(同室)
一週間前父が倒れたというので行ったプラントから、さっき戻ってきた。
急なことだったので、キラには説明も出来なくて。
いつも僕の後を付いてくるキラにとっては、さぞかし心細い一週間だったろう。
いつもは厳格な父が、倒れたことにより弱気になり、ずっと付いていなければならなかったから、全く連絡を取れなかったんだ。
キラ、どうしているだろう。
夜なんかちゃんと寝られていたんだろうか。
いつもは寂しさに僕のベッドへ潜り込んで来ていたのに。
ギュってしてあげると、安心したように眠って・・・・・・。
朝は自分で起きられたんだろうか。
いつも起こすのに苦労したから心配で。
食事は?
偏食で、嫌いなものは絶対食べなくて。
おまけに小食。
誰かが面倒見てくれると助かるんだけど・・・・・・。
そう思いながら、漸く自分の部屋の前にたどり着く。
だけどそこには先客がいて。
ドアを叩いている。
「キラ、いい加減出て来いよ。お前昨日から何も食ってないだろう?」
クラスメイトのジョルディ。
僕とキラの数少ない共通の友達。
「ジョルディ!」
今言っていたことは、本当なの?
キラが昨日から何も食べていないなんて。
「アスラン!」
僕の顔を見てジョルディがホッとした表情になった。
「ジョルディ、今言ったこと本当?」
焦って聞く僕にジョルディは簡単に説明してくれた。
僕が急にいなくなってから、しばらくは一人で頑張っていたらしい。
遅刻もせず、食事も少ないながらもちゃんととっていて。
だけど、急に昨日から部屋に閉じこもってしまっていて。
ジョルディや他のクラスメイトたちがどんなに呼びかけても答えないのだという。
「キラ!、アスランが帰ってきた、開けて!」
再度ドアを叩く。
カチャ
キーが外される音。
僕は慌ててドアを開けると、そこには真っ赤な目をしたキラが立っていた。
「キラ・・・・・・」
涙で顔はぐちゃぐちゃで、恐らく昨日の朝から着替えていないパジャマはよれよれで。
ああ、本当に・・・・・・。
「アスラーン・・・・・」
そのままで飛びついてくる君は可愛くて・・・・・・。
「えーん・・・・・」
大声で泣き出したキラを、僕は抱きしめることしか出来なくて・・・・・・。
「ごめんね、キラ」
「アスラン、もう何処にも行かないで」
「うん、大丈夫、キラの隣にいるから・・・・・・」
そう言って、いつものように慰めのキスをキラの額に、頬にしていたら。
「・・・・・・あのさ・・・・・・感動の再会も良いんだけど・・・・・・」
その感動の再会を、ジョルディにジャマされて。
「これ、キラの食事。机の上においておくから、アスラン、後で食べさせてやって」
全く、付き合ってられないよ、とジョルディは去ってゆく。
ふと回りを見渡すと、並んでいるほかの部屋の扉が一斉に閉められて・・・・・・。
僕たちは見世物になっていたらしい。
翌日からは大変だった。
キラはずっと僕にくっついている。
同室なのだから離れても良いのじゃないかと思うけど。
ずっと僕にくっついていて。
食堂に行くのも、学校へ行くにも(幸い同級生、机も隣)トイレに行くにも(ちょっと待て・・・・)お風呂も一緒。
ベッドも一緒で・・・・・・。
ある日、ジョルディが面白いことを言った。
「アスラン・・・・・・キラ、『ジャマったれ』じゃないか?」
「『ジャマったれ』?」
聞きなれない言葉に、頭を捻っていると。
「『ジャマ』『我侭』『甘ったれ』・・・・・・で『ジャマったれ』」
なーるほど。
「確かに・・・・・・」
うんうんと頷く僕に、キラが不満そうにしている。
「酷い!」
プッと膨れる頬がまた可愛くて。
「大丈夫。僕は『ジャマったれ』なキラが大好きだから」
そう言ったら、膨らました頬が、赤くなって・・・・・・。
「バカ」
小さな声で、僕の胸にしがみついた。
ジョルディはまた、付き合ってらんない、と笑ってどこかへ行ってしまった。
それからも、学校内で、寄宿舎内で、キラの『ジャマったれ』何度も目撃されていて。
その隣でアスランはいつも楽しそうに微笑んでいたとさ。
あとがき
「ジャマったれ」はあるマンガの一言から取ったものです。 ウサギさんの漫画です。(あまり若い子は読まないかもしれない) 真澄様、遅くなりましたが、お受け取りください。
−楽園の片隅−、一姫様
あとがき返し
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